家屋とその周りの圃場は樹脂製の防獣ネットでぐるりと囲った。高さも長さも必要だから購入費用もそれなりに掛かった。平坦な場所ばかりではないから設置も苦労し時間も掛かった。にもかかわらず、その防御力はあまりに脆弱だったと言わざろう得ない。鹿はそれを押し下げて侵入、猪は下方を切り裂いて侵入した。
では代わりに金属製のワイヤーメッシュや電気柵にしていたらどうだったか。費用は何倍も掛かるがそのぶん防御力も高かっただろう。でもそれで害獣に侵入されなかったとは決して思わない。集落を巡ればそれらを破壊したりすり抜けたりして内部を荒らした跡があちらこちらで見られるからだ。その気になったらどんなセキュリティもディフェンスも突破して侵入してくる。その点では害獣と泥棒はよく似ている。
そんな脅威の中でしばらく生活し、少しわかってきたことがある。決して褒めているわけではないのだが、奴らはリスクマネジメントに相当長けていると言うことだ。具体的に言えば、成果がリスクを上回るであろうと判断した場合に侵入を試みるのだ。それは一方で我々が対策を図る上での要点でもある。
例えば「モチベーションを与えない」こと。敵は発達した視覚や嗅覚を使い内部の情報を詮索してくるので、それを遮蔽して興味関心を持たれないようにする。あるいはそれを逆手にとって不快感や恐怖心を抱かせるようなものをあえて設置する。
例えば「難易度を上げる」こと。侵入しようとするバイタリティは困難さが高いとその熱量を失う。なので物理的強度や複雑さにより攻略までの所用時間が多く掛かるようにして諦めさせる(あるいは回避させる)。こちらとしても時間が掛かったり音などが発生すれば侵入を感知しやすくなる。
これらを踏まえれば、写真のような廃材の薄鉄板であっても猪の侵入をある程度低減させる効果はあるだろう。。。そう考えはや2年、普段の忙しさから先送りになってきたが、廃材をいつまでも積んで置いても意味ないし(スペースを占領して邪魔だしね)、さっさとやらなきゃ意味ないし、ということで冬の農閑期を利用しようやく設置することにした。この時季は強風の日も多くて作業がやりづらいが致し方ない。
防獣ネット外側は枯れ枝や落ち葉が積もっているので、一旦それをレーキで手前に掻き出したあと、唐鍬で少し溝を掘る。鉄板下部を手前に大きく折り曲げ土中に轢くようにしていけば防御効果が高いが、再利用する廃材は高さもあまりないし、既に防獣ネット下方を手前に埋め込んである関係から、鉄板の埋設部分は最低限にする。
鉄板は平面のままだと強度的に弱いので、内側を手で押さえつけながら緩やかな曲面にし、さらに上端を折り曲げる。獣は手前に掛かってくるような構造を嫌がるらしいので、僅かではあるが忌避効果の向上にもなっている。
左右の鉄板の高さが同じになるよう仮固定し、反りを合わせながら重ねた部分に数カ所ビス打ちして横に繋いでいく。作業効率を考えこれ用に手配したドリルビスを使っていたが、普通のタッピングビスを使った方が締まりがよかった。いずれにしてもちょっとコツがいる作業。
鉄板が倒れないよう既存のネット支柱や樹木など利用出来るところは全て利用して固定していく。支持が足りないところはパイプ(廃材利用)を新たに立ててそれに縛り付ける。強風で飛ばされると大変なことになるからね。
鉄板の設置が終わったら適当な間隔で塗料スプレーを吹いて目玉模様を描いてみる。効果の程はわからないが、何も描かないよりは警戒されるかと(気休め)。このような的状のものを見るとそこに何かを当てることに夢中になる珍妙な動物もいるけどね(笑)。
仕上げに枯れ枝や落ち葉を戻し手前を少し盛っておく。猪は気にも留めないかも知れないが、鹿は枝を踏むのを嫌がるらしいので近接されるのを多少防げるかも知れない(これも気休めだけどね)。数日掛けて4m×20枚=80mの鉄板を設置したが、北側から初めて東側の半分ぐらいで廃材が尽きた。足りない部分はまた何か別の(極力金のかからない)方法で強化を図っていこうと頭をひねっている。