含みのある笑みに、どうしてもグラスを持てない。 「そんなに気になるなら、グラス交換しますか?」 宇佐美が門倉のグラスへと手を伸ばした時にこのあいだのことを思い出した。宇佐美が提案して、交換した時のことを。 「いや、そっちがハズレって可能性もある」 「ハズレって、アタリの間違いでしょ」
門倉は、目の前でまっすぐ泡を立てるグラスをじっと見つめていた。普通の色、普通の匂い。しかし気は抜けない。なぜならば、このグラスは俺がトイレに立ってる間に出てきたものだからだ。 「どうしたんですか」 「俺のグラスになんか混ぜた?」 宇佐美はにっこりと笑う。 「さあ、どうでしょう」
「じゃあ、どうするんですか?」 「……こっちでいい」 最初から目の前にあったグラスを手にとって、宇佐美のそれと合わせる。カチン、泡が弾けた。口をつければ、辛さの後に爽やかで芳醇な匂いが広がる。宇佐美とこうやって食事をするようになってから、こういう洋酒の良し悪しが分かり始めてきた。
変な苦味も、甘みも無い。空になれば、すぐにボトルから新しい黄金が注がれる。二杯、三杯と飲んでも体はしびれないし、熱くならないし、変な気持ちにもならない。心地よい酔いだけが門倉の体を包んだ。宇佐美から誘われた飲みはいつも下心があると思っていたが、見直さなければならいかもしれない。










