ヴェイパーウェイヴ・ナウ(2)~チキチキ! ヴェイパートラップ・ナウ編
2011~2012年の登場から、年々、リリースの増え続ける音楽ジャンルヴェイパーウェイヴ(Vaporwave)しかし増えれば増えるほど玉石石石石石石石石石混交……の最中、思わぬところで見つけたor解釈によっては「玉」なヴェイパーウェイヴを探すシリーズ。第1回はこちら。
音楽、トラックとしてのヴェイパーウェイヴの基本的なスタイルは、BPM90~110くらいのブラコン、R&B、スムースジャズ、BPM120くらいのディスコなんかをスクリュー(ピッチを極端に落とす)する……というのが大きな特徴(というかそれしかない)ですけど、そういう意味でもフューチャー・ファンク(Future Funk)と呼ばれる、ヴェイパーウェイヴをフレンチ・ディスコ化したような派生ジャンルは、ピッチ上がってんじゃん!高音キンキンだし……と、嫌いではなくともあまり熱中することができなかった。SOLITAIRや個々のアーティストで好きな人はいるけど、ヴェイパーウェイヴとは関係なく聴いてる。
そんな中「このスタイル、いいよなあ」と思っているのが、トラックメイカーNxxxxxSの新譜。
この人は2013年ごろから活動しているフランスはパリ在住の人物で、ストレートなヴェイパー・スタイルの、ブラコン/R&Bのスクリュー(ピッチダウン)なんですけど、原曲からおそらく30%近くピッチを落としていて、そこにトラップのビートとベースを足す、というスタイル。
ヴェイパーウェイヴでトラップ、というアイディアは、Vaporwave初期でもBlank Banshee、それ以降だとVaperrorなどもこのスタイルで素晴らしい作品を作っているし、それこそVaportrapを標榜するDJ MIXなんかもあるにはあるんですけど、ニューエイジ~アンビエント風の浮遊感あるシンセをメインに据えているものが多くて(僕の見てる範囲でですが)、NxxxxxSはもっと俗っぽい歌モノやスムース・ジャズをサンプルしていて、その差が個人的には面白いな、という。
BPM90~120の、2拍4拍にスネア/クラップが来るトラックを、BPM65~67.5くらいまでピッチダウンし、そこに、その倍に当たる、BPM130~135のハイハット、スネア、サブベースを足す、もともと2拍4拍のスネアは3拍に当たる作りになる……というところがツボ。
70-80年代活躍したIngram(The Ingram Kingdom)という米ディスコバンドの"DJ's Delight"というファンキーなシンセベースがカッコいいダンス・チューンで、BPM110くらいのこの曲を75くらいまで落として、そこにチキチキ……という細かいハイハットを入れてるのが、Mighty Barron 3なる謎のアーティストのその名も"Screwe'd"というトラック、こちら。
レーベルの公式チャンネルにアップされている、この黒人の子どもが車中で暴れてるだけの映像もかなり謎なんですけど、この「ディスコをスクリューして無理やりハーフテンポのトラップにする」というトラックに僕が最初にハマったキッカケです。
もともとはアメリカ南部ヒューストンにて、DJ Screwによってスタイルを確立した(チョップ&)スクリューが、ラフなストリートとは無縁のインターネット空間で、ヴェイパーウェイヴにその手法のみを転用され、それが同じく南部発のヒップホップであるトラップとまた合流する……という流れもなかなか考えると楽しくならないですか?僕は楽しいんですけど。
で、冒頭でフューチャー・ファンクはちょっと……と記したものの、ピッチダウンしたサンプルを、再びまたBPM120以上の4つ打ちに戻す、というトラックは、これはこれでいいんですよね。Ross From Friendsという、ロンドン南部からベッドルーム手作り感満載のハウスを作っているアーティスト。ドロッと溶けたヴォーカル、ブレイクでスクリューされたサンプルがそのまま出てくるパートが気持ち良すぎる。
ヴェイパー・ゲットー・レイヴとでも評すべきユニークなサウンドが、Luis CLのIt's Getting Betterというトラック。メルボルンの、毎回露悪的なほどキッチュなジャケットがユニークなこちらも手作り感満載のハウスを作っているユニットZanzibar Chanelのメンバーによるソロで、ヴェイパー臭たっぷりのイントロから、チキチキ……とゲットーハウス調の速いキック、鍵盤ゲンコツ系ピアノにブレイクビーツが入ってくる、とにかくせわしない展開が痛快。













