ROUTE1999 - EPILOGUE
「ROUTE 1999」の後日談 (fanfic)(円満期・貘ハル貘)
「プレゼントが欲しいんだけど」
貘と創一は聖なる夜にふさわしくないゲーム(賭郎勝負)に興じていた。立会人に引きづられて行く犠牲者の叫びをBGMに帰ろうとした時に、勝負を終えた貘が突然ガラにもないことを口にしたので、創一は思わず出口に向かう足を止めて振り返った。
勝負を終えたギャンブラーは椅子に座ったまま、頰を少し紅潮させ(先ほどの勝負で顔色ひとつ変えなかったにもかかわらず)、なぜか少し不機嫌な様子であらぬ方向に視線を泳がせていた。創一は、音も立てずに近づいた夜行妃古壱が持ってきたコートを羽織りながら、ひどく神妙な顔で貘に言った。 「貘さん、よく聞いて。オトナにはサンタクロースは来ないんだよ」 「サンタに言ってる訳じゃない」 貘がますますふくれて「もういい」と言って立ち上がると、再び夜行がコートを手に近づいてきたが、それを創一が制した。 「何が欲しいの」 「別に」 「……」 「……」 うつむいたままごにょごにょと何か呟いた貘の顎を創一は右手で掴んで強引に上を向けさせ、その勢いが貘の顎を砕く勢いだったので一瞬黒服たちに緊張が走ったが、妃古壱が片手でそれを制した。 「何が欲しいの」 顎を押さえたまま創一が尋ねた。 「ふぁるんちひきたひ(ハルん家行きたい)」 「……」 沈黙。貘は緊張した面持ちで創一の返事を待つ。創一はしばらく考えて口を開いた。 「来たことなかった?」 「ないよ!」 二人は迎えの車に乗り込んで切間宅に向かった。
* * *
「勝手に家探ししないでね」 「はいはい」 顔を洗いに出て行った主人を見送って、ベッドに座っていた貘は改めて創一の部屋を見渡した。ひとりで住むには広すぎる邸宅のわりに、意外と小さな部屋。おそらく子どもの時から使ってるんだろう。 「……ハハ、『するな』ってのは『しろ』ってことだよね」 そう言いながら立ち上がって、とりあえず近くの机の引き出しを開けて中を覗き込んだ。 「日記とかあんのかな?」 右手を引き出しの中に伸ばした瞬間、後ろから羽交い締めにされた。 「やっぱり!」 「おしっこ早いね」 「おしっこじゃない! 何で勝手に開けてるの!」 「俺の性格知ってるでしょ。痛い痛い、ハル、腕がもげる!」 「貘さんが悪い」 机から引きずり出された貘の手には、『LOVE&PEACE』と派手な色で書かれた小さな正方形のビニールのパッケージがつままれていた。 「あ!」 「ハルさん、これってさあ……」 創一は貘から包みを取り上げると、すぐに離れて背中を向けた。 「捨てたと思ってた」 「……捨てたよ」 「じゃあ何それ。もっかい見せて。あっ! 今グシャってした!」 「してない」 「したじゃん! よこせよ!」 「やだ!」 「いーじゃん、だって一度俺にくれるって言ったでしょ!」 お互いに包みを掴んでもみ合っていた創一の動きが止まって、貘は創一の顔を見つめた。 「俺にくれるって言ったから、捨てられなかったんでしょ?」 「……ちがうよ」 今度は貘が空いてる手でうつむいた創一の顔を上げた。 「嘘つき」 「……捨てたけど、誰かに見つかったら面倒臭いからもういっかい拾って、捨て方考えててそのままになってた」 「へーそーなんだー。じゃあなんで隠そうとしたの? そう言えばいーじゃない」 「だって貘さんにからかわれると思って……『俺との思い出を大事に取っておいたの』とか」 「ははっ」 「何がおかしいの」 「ハルはバカだな〜と思って」 黙って襲って来る創一の両手を掴みながら貘は続けた。 「だってさあ、それって本当のことだから隠したかったんじゃないの?」 「……」 「アハッ。ハルはさあ、もう俺に嘘つかなくていいんだよ」 今度は貘が創一の両手を掴んで自分のそばに引き寄せた。 「だって俺たち、友達だろ?」 強く体を捉えられたまま、創一はおとなしく貘の肩に頭をあずけた。 「そうだね」 珍しく素直な創一の態度に気を良くした貘が、自分の腕が痺れるまでこのまま動きたくないなあと考え始めた時に創一が口を開いた。 「僕もプレゼントがほしい」 「え、何? オトナにはサンタはこないんでしょ?」 「今夜は帰らないで」 「……んもーーーっ ハルのバカ! どこでそんな台詞覚えてくんの!」
* * *
「『愛と平和』ねえ。まさに前世紀の遺物だね」
貘は小さなパッケージをしげしげと眺めた。 「これ、使えると思う?」 「さあ、試してみる?」 世紀末を越えたふたりは悪戯を思いついたこどものように、顔を見合わせて笑った。
[END]



















