滋養強壮の定番
『キュア/禁断の隔離病棟』 A Cure for Wellness/2017年/アメリカ・ドイツ/ヴィスタ/147分 @配信
連日の殺人的暑さに体力を奪われている人も多いんじゃないでしょうか。本日は土用の丑の日なので、ウナギでも食べて体力をつけたいところですけど、ネット界隈では「土用の丑」にウナギを食べることには何の根拠もないというのが通説になっています。別にウナギの旬でもないし、江戸時代のマーケティングの名残でしかない、というわけです。しかし「ウナギなんか食べなくても良い」と言う前に普通の人にとっては、既に食べたくても食べられないものになっています。特に今年の稚魚は、とんでもないほどの不漁だとか。そこで今回は、ウナギを存分に楽しめる映画で土用の丑の日を満喫したいと思います。一応ホラーなので、少しは涼しさも感じられることでしょう。
ロックハートは社命でスイス・アルプスにある、とある療養所に向かっていた。会社のCEOペンブロークは、2週間で休暇から帰るはずだったが、その療養所から二度と戻らないという手紙を会社の役員たち宛てに送ってきたのだ。常軌を逸した手紙の内容から、CEOは明らかに精神的におかしくなっていると思われる。大型合併の控える会社では、早急に異常を喫したCEOを解任しなければならない。ペンブロークを連れ戻す命を受けたのがロックハートだった。不正取引の証拠を握られた彼に断ることはできなかった。もし失敗すれば証券取引委員会に告発されてしまう。おかしくなった老人をアメリカまで連れ帰るだけの仕事だ。彼は簡単に済むと思っていたのだが…。
映画は、生気のない無機的なオフィスから始まります。登場する役員たちにも、主人公を演じるデイン・デハーンにも全く生気が感じられません。一転、雄大なアルプスに囲まれた療養所に到着しても、その町、城のような療養所、滞在している裕福な老人たち、そして看護士などの職員たちから生気を感じることはできません。ミア・ゴス演じるヒロイン、ハンナも上のポスターの通り。世界一不健康な街からやって来た、見るからに不健康そうなロックハートも、大自然の中で暮らす人々と全く変わらないわけです。そして療養所は当然いわくつき。200年近く前、城の主だった男爵は自らの血筋の純度を高めるため、実の妹と結婚しようとしたところ、村人たちに火を放たれます。妹は男爵の目の前で焼け死に、男爵の行方は誰も知らないというのです。
ポスターにもある通り、劇中では所々で大量の「ウナギ」が登場します。たぶん欧米人にとってウナギは、不気味なものの象徴として映るのでしょう。しかし我々日本人には、どうしても「美味しそう」にしか見えないので、監督のゴア・ヴァービンスキーが意図したようには恐怖が伝わってこないかもしれません。施設で行われている「治療」とは何なのか? 男爵の行っていた「実験」とは何だったのか? ハンナは何者なのか? 院長の「目的」は何なのか? そしてロックハートは無事に療養所を脱出できるのか? ヴァービンスキーも結構、好きに作ったらしく、この手の映画にしては、かなり長めの上映時間になっていますけど、ゴシック・ホラーの雰囲気の中、これらのミステリーが巧みに配してあるので、最後まで退屈することはないと思います。
厳しい金融業界で働き詰め。おまけに不正取引までしているロックハートもまた、「健全」であるわけがありません。しかし、仕事や通勤でストレスに晒され、24時間をスマホに縛られ、コンビニで食事を済ませ、効きもしないサプリを摂り、睡眠不足の毎日を繰り返す、そんな我々も、とても健全とは言えません。現在の不漁では本作のように、療養所で贅沢に「ウナギ療法」を受けるどころか、切れ端を食べることさえ、ままならないのが現実。やはり最善の「ウェルネス」への道は、映画のラストのように「解放」にあるのでしょう。束の間であっても、何もかもから解放されて休息を取るのが一番。折角の休みを酷暑の中、人込みで過ごすのはやめて、この映画でも観ながら、まったりするのが良いでしょう。但し、くれぐれも冷房と水分補給は忘れないように。
普通の人へのオススメ度 ★★★★★★☆☆☆☆













