made in westの販売会を開催して今年で5回目.このmade in westとは「関西の企業とクリエイターがいっしょになって取り組む、あたらしモノづくりのカタチ」がコンセプトのブランド.
関東で暮らしているとなかなか知らないけれど、関西はモノづくりが盛んで、地域ごとにいろんな産業があります.それぞれの産業に、デザインの力で、お客さんがより手に取りやすい魅力を加えた商品を展開するプロジェクトなのです.
取り扱う商品はリュック、タオル、靴下、バッジ、ポシェットなど、日常で使う物がほとんど.これを書いているぼく自身も、毎日使っているファンです.
ひとつめは、大阪南部の泉州地方のタオル産業.
いま全国的にタオルといえば愛媛・今治です.実は泉州と今治はタオルの二大産地ですが、タオルの性質が異なります.今治タオルは、言うなればホテルのタオル.張りとふんわりしたボリュームがあり、そして多彩な模様が織られていることも多いです.
一方で泉州タオルは、浴用タオル.ふんわりとやさしい肌ざわりで、速乾性が高いもの.装飾はあまりなく、黄色や青やピンクや染まっているものも多いです.業務用としても広く普及しています.
それぞれ特徴も違うので、使われる場面も異なります.
ちなみに、日本のタオル発祥は1887年の泉州地域とのこと.和泉木綿の産地であり、手ぬぐいを生産していましたが、輸入タオルを目にした地元の者が取り組んだのが始まりだそうです.
JR日根野駅を出て少し行くと大小多くのタオル業者が集まる地域がありますが、その中にある「神藤(しんとう)タオル株式会社」がmade in westに参加しています.代表の神藤貴志さんからお話をうかがいました.
もともと3軒が一緒になって明治40年に会社にしたのが始まり.当時は物資の少なかった時代で、作れば作るだけ売れていった時期だったそうです.それに目をつけた地主が出資してタオル製造をはじめたところも多かったとのこと.また、戦前には問屋さんが仕入れに工場に並んで、製造側が商品を割り振っていたほどの盛況ぶりだったと、先代からよく聞いていたそうです.
貴志さんは4代目.就職活動を始めようかという大学3年生のときに、先代である祖父から話をもらって今から10年弱前に継ぐことになりました.とはいえ、関東で長く暮らして、経営のことはおろかタオルの知識もほとんどなかったとのこと.さらに、当時は安価な中国製品の勢いが強く、社内の業務も少なくて業績としては厳しい頃でした.周辺のタオル業者も会社をたたむところが多くありました.
そんな中で、ある問屋さんがタオルのストールをつくる企画を持ってきて、それを受けたところが起点になりました.生産体制としては難しかったものの、無理をしてなんとか生産し、それが売れたことで「タオルではなく、変形したものでも売れる」ということが分かったのです.それが、made in westに参加できた背景でした.先代が「ちょっと損をしてでも新しいことをしろ」と言っていたこと、それが社風としても残っています.貴志さんも新しいことを試行錯誤する過程を楽しめる性格なのかもしれない、と自身のことを話してくれました.
made in westのフェアで販売する商品は3種類あります.「2.5重ガーゼタオル」「インナーパイルタオル」「ユキネ」
人気の高いインナーパイルタオルは、非常に柔らかい触感の商品です.着想は段ボールの断面で、こういう構造にすれば従来にないものが作れるのではという想いから生まれました.シャトルと呼ばれる杼(ひ)が機械で動いて横糸を打つ、古いシャトル織機で製造していますが、インナーパイル用に改造されています.驚いたのは、織るための設計図は「目板」と呼ばれる鎖でつながった木の棒なのです.糸くずが綿になって、まるで雪でも積もった様に織機の上に溜まっていて、「1・2・3」のリズムでパイル(輪)を作りながら織っていくのが見えます.超低速機なので生産量が多くはなく、また現場の職人さん曰く調子がよかったり機嫌が悪かったりと、まるで生きている様に感じるそうです.
made in westの初期からの商品2.5重ガーゼタオルは、インナーパイルに替わるボリュームのあるガーゼを作りたい、というのが発端です.本来は構造としてできないけれど、パイルの織機でガーゼを製造できないか試行錯誤し、織った後の乾燥方法をいくつも調整し、やっていく中で「他所にはない面白いものができたんじゃないか」と徐々に手応えがでました.ですが、どう商品化したら良いかも分からず、ひとまず展示会に出してみたところ、偶然このmade in westの企画の始まりで目に止まったことが商品化につながりました.この時も先代の言葉を大切にして前に進めたと貴志さんは仰います.
2.5重とは、実は3層になっていて、真ん中の層が少し粗め(0.5)で、その違いが柔らかな触感にもなり、また空気の通りが良いので乾きが早いです.吸水性と乾きの良さが、泉州タオルらしい特徴を持った商品です.
ユキネの名前の由来は、新雪を踏みしめたときのようなキュッとなる触感を持ったタオルということ.織られた後に晒して糊や天然の油を洗い落とし、柔軟加工をしないことで、吸水性を妨げるものが一切付着しておらず、綿そのものの質感が生かされています.これは貴志さんのお気に入り商品だそうで、実はぼくも気に入って自宅で使っています.
貴志さんが積極的に外の展示会やイベントに出店をし、神藤タオルの知名度が上がって生産も非常に忙しい日々ですが、まだまだ展開が広がるのではと一ファンとして楽しみにしています.
もうひとつ訪れたのは、奈良県の広陵町.ここは靴下の町で、国内製造の4割を占めています.
興味深かったのは、奈良県は靴下産地の中では後発だったことです.明治4年にまず東京で生産がはじまり(といっても小規模)、翌年には大阪でも始まり、徐々にいろんな地域に増えていった中で、遅れること約40年して奈良県で始まりました.そこからトップシェアになれた理由は、大阪という大消費地が近かったことで、材料や機械の仕入れがしやすかったことと、販売する問屋や商社とも流通しやすかったことです.そして40年の間に導入しやすい体制がいくらか進んでいました.とはいえ、当時は軍需品または洋服を着用していた極一部の人向けの高級品でした.産業に携わった多くが農家で、閑散期の副業として始めました.広陵町周辺は大和木綿の産地でしたが、織機が広まったことでメリヤスが盛んなり、和綿よりもインド綿が好まれてどんどんと和綿産業が衰退していた厳しい時代でした.そこで靴下製造は副業から本業へと変わっていきました.庶民が靴下を履く習慣が広く定着するのは戦後で、高度経済成長期に奈良県の生産量が全国一になりました.
見学させてもらった、「ヤマヤ株式会社」は明治43年に創業した広陵町の老舗です.広陵町で靴下製造を始めた吉井泰次郎のご子息が継いで現在に至ります.
生産現場には、人の背丈ほどの大きな機械があり、カタカタと針が回ったり、プシューっと気圧が抜ける音がしたり、腕か触覚のようにたくさんの棒が伸びていてハウルの動く城のようでした.靴下自体は小さいけれど、それを作る機械は意外にも大きなもので、そしてものすごく複雑そうな機械です.明治の頃は手回しの機械でしたが、基本的な動きはその頃と同じで、筒状に糸を編んでいきます.針の数、太さ、糸の数、太さ、種類によっていろんな表情が生まれます.タオル織機のように、ここでも機械は生き物のように調子が変わると言います.
ヤマヤの特筆すべきは、オーガニックコットンソックスの生産です.導入したのは平成6年.まだ衣料品にオーガニックコットンを用いることは非常に稀な頃で、会長の野村さんもそれまでは知らなかったそうです.きっかけは、輸入靴下の増加による危機感でした.県内の繊維製品を製造する企業の有志で協同組合エヌエスをつくり、何か特色としてオーガニックコットンを導入してはどうかと始まりました.ちなみに、エヌエスは「Nara Senni(奈良繊維)」と「Natural Style」の意味です.
オーガニックコットンとは、環境に配慮して生産された綿ですが、製品化すると見た目には大きな差はなく、一方で価格は上がります.そこが百貨店などでの販売で苦戦しました.また、従来の製品を扱っていた取引先からは「これまでの商品が環境汚染品であるかのようにケチをつけるのか」と非難を受けたため、「エコ」という表現を差し控えたほどでした.
そんな中で、食品のオーガニックが先に認知度が出始めていたことから、下着などにもそういったものを求める一部の人たちが通販で買い求めるようになったことで、売れていくようになりました.また、使用した人たちの反響の声があり、それが困難の中でも続ける理由になったそうです.そして、食品への農薬混入などの事件で世の中が「安心・安全」を求めるようになった事で、オーガニックソックスの認知度も大きく変わってきました.
この裏には、大阪・阪南市にある大正紡績株式会社の力があります.オーガニックコットンという商材をヤマヤに紹介して商品にしてみないか、と持ちかけたのです.大正7年創業のこの紡績会社は、綿糸だけでなく、自然由来の糸から化学繊維まで幅広く製造しています.この大正紡績の持つ商品の幅と品質が、今日でもヤマヤの靴下作りを支えている柱のひとつです.ヤマヤの野村会長は「大正紡績の糸の品質がよいから、いい商品が作れる」と話し、一方で大正紡績の担当の方は「ヤマヤは糸の性質を生かした商品を作ってくれる」と、お互いに信頼と敬う気持ちがうかがえました.
made in westの靴下はここ最近新作が増えていて、今シーズンは新色が出ています.コンスタントにラインナップが広がっているので、販売会ごとに楽しんでもらえるのが靴下シリーズです.エヌエスとして「オーガニックガーデン」というブランドでも一部商品を展開していたり、いろいろなところで手に取ることができます.
神藤タオル、ヤマヤ、大正紡績、その他にも関西の技術と想いのある企業がオール関西となって様々な商品を展開するmade in west.見学したどの工場でも、おっちゃんおばちゃん、おにいさんおねえさんが元気に挨拶をしてくれて、担当の方が丁寧に説明をしながらも笑いながら朗らかな雰囲気だったのが印象的でした.そんな工場からやってきた商品とタナビケでお待ちしています.
◉ made in west & yes fair
4.6(土) - 21(日)
12:00-18:00 / (土)12:00-21:00
企画・会場:タナビケ
http://tanabike.com/post/183492800101/1904060421
◉ made in west
関西は日本を代表するモノづくりの発信地.他にマネのできない、独創的で高い技術を使って、画期的な製品を数多く生み出してきました.大量生産ではなけ れど、元気で丁寧でこだわりのある製品づくり.そんな関西の企業と、クリエイターが一緒になってブランドをスタートさせました.両者が同じ立場で、それぞ れの強みを活かし、いろいろなジャンルのオリジナルプロダクツを開発していきます.「ひらめいたらやってみる」という、関西独特の方法とクリエイターの感 性を繋ぎ合わせるデザイン.
made in westは、企業ブランディングやコラボレーションといった枠組を超えて、モノづくりのプロセスを変えるあたらしい試みです.
HP:made-in-west.jp
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