あるいは否定の集積
とりとめのないこと、プレイしていないゲームのこと、読みきらなかった本のこと、などなど
目次
本
映画
ゲーム
美術館・展示等
Kentucky Route Zero
Three Goblin Art

祝日 / Permanent Vacation
PUT YOUR BEARD IN MY MOUTH
Not today Justin
will byers stan first human second

ellievsbear
YOU ARE THE REASON

JVL
tumblr dot com
Sweet Seals For You, Always

⁂
"I'm Dorothy Gale from Kansas"
let's talk about Bridgerton tea, my ask is open
hello vonnie
2025 on Tumblr: Trends That Defined the Year

izzy's playlists!
taylor price

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@ashi-yuri
あるいは否定の集積
とりとめのないこと、プレイしていないゲームのこと、読みきらなかった本のこと、などなど
目次
本
映画
ゲーム
美術館・展示等
Kentucky Route Zero
ウラジーミル・ソローキン「愛」
ロシアの前衛作家ソローキンの初期短編集。新装版が出て買って積んでいたのを、だいぶ久しぶりに再読。
冒涜的で下ネタ・グロ多めであまり得意な作風でないのだけれど、短編としての「愛」がやっぱり非常にいいのと、何より語りが非常に上手い!
基本的には、「伝統的で良識的で肉厚なロシアの風景・人物描写→不条理→終わり」の繰り返しなんだけど、語りの間合い、ペース、進め方、濃淡、細かい前後の脈絡の付け方が絶妙で、どんなに内容がめちゃくちゃで最悪なことになっても、一抹の納得感とテキストの楽しさをもって受け入れさせてしまうパワーがある。「信頼できない語り手」なんて当たり前すぎるテーマはさっさと置いて、やっぱりおもしろい語りのテキストを読むべきなんだよな。
本作はいちおうどれも衝撃の展開を迎えるけれど、起きた出来事より語り方のほうが楽しい。わりとエンタメなどで重視される、衝撃の展開(ネタバレ厳禁)とか伏線で巧妙などんでん返しなどのギミックについて自分はあまり興味がないのだけれど、よく考えるとソローキンの影響もあったのかもしれない。
唐突で不条理な殺人・露出・糞尿諸々・やばな性行為などなど、あざといまでの冒涜的な要素は再読するとげんなりするのかも、と思っていたけれど、なんか前より逆に好きな感じだったかも。伝統との切断、いわゆる正統派な(ロシア)小説を好む読者へおどろかしや嫌悪をあえて催させる要素では当然ありつつも、語りの異様さ・暴力性・グロテスクさって正統派でも前衛でもずっと変わらずに様々な小説のなかにあるものと思っていて、それをソローキンの語りがある一面からわかりやすく露出させている、語りにより切断すると同時に連続性をあらわにしているという見方をしていたので。古典的名作、結構ひどいこと平気で語るし起きるし。最後、神聖視していた・冒涜していた意味がテキストに溶けてわにゃわにゃになるのもいい。
1980-90年代のロシアで描かれた本作では、オブジェクトとしての女、オブジェクトとして切断され破壊される女(ほんとに寝てる間に勝手に腕が斬り落とされる!)、性的規範への挑戦・冒涜としてのホモセクシュアルなど、現代の自分の価値観とは相容れない表現が多々ありつつ、グロテスクなまでに熱を込めて、不条理かつ無機的に、巧妙に語る意味って、おそらくまだぜんぜん劣化してないんだろうなと思うなどした。
ソローキンは「愛」の手法をさらに徹底させた「ロマン」がかなりすきで、重厚長大なその後の作品は読めていないけれど、「青い脂」や「親衛隊士の日」では、この語りの力をロシア社会や歴史そのものに向けるようになるんだろうか。
以下、印象に残った短編の雑駁な感想
「愛」
『愛』という言葉の強度について。
さりげない伏線、猛スピードで切り替わる文体、鮮やかな終わり、とんでもメカ、示唆される聖と性、荒れ狂う暴力、語ることの暴力、語ることの非対称性、語ることの欺瞞。
若干5ページのこの文章に、いわゆる『愛情』についての描写は全くないけれど、この作品に表題を付けるとしたら、やっぱり「愛」しかないのだと思う。
「セルゲイ・アンドレーエヴィチ」
先生と生徒たちの牧歌的で美しい友愛について。
上に書いたことは最後まで嘘じゃないので、ある意味、一番本作らしいかもしれない。最後まで描写がみずみずしく美しい風味なのがわらえる。
「可能性」
可能性は無限だけれど、あまりにくだらなくてすき。意外とテキスト読む快楽はある気がしている。コートは脱げ!!
人はなにができるだろうか?(中略)ガスを点火し、ポットをかけて温めること?(中略)コートをぬがずに、ズボンをぬぐこと? 沸騰するポットを冷蔵庫に入れること? ぬいだズボンを灼熱したガスレンジにかけること?その上に冷凍肉を載せること?コートを着けたままで、パンツをぬぐこと?
「弔辞」
弔辞という思い出話のある種のきもちわるさを煮詰めたような。いい話として語られたけれど、それってほんとに......?というあの気持ちになれる。
「出来事」
いろいろな出来事、あるいは解題。
収録短編のなかでは「愛」の次によかった。伝統的だったり、スパイ小説みたいだったり、幼少時の回想だったり、その解説だったり、出来事がどんどん入れ替わり、それぞれのなかに肉厚で骨太の描写と不条理で無意味な描写が奇妙なモザイク状に寄せ集まって、得体のしれない記念碑みたいなテキストの構築物ができあがっていて、読んでいて楽しい。
それにしても翻訳するのは頭の調子が大変になりそう。翻訳はロシア文学大御所の亀山郁夫先生だから無用の心配だけれど。
愛 【国書刊行会 創業50周年記念復刊】 〈ちがうね、諸君、もう一度言うが、それはちがう。君たちは若いし、頬っぺたにも熟れた林檎みたいな赤みがさしている。ジーンズだって擦りきれ、声も明るく甲高い。
国立新美術館「テート美術館 - YBA&BEYOND」
摩擦する若き英国の情熱たち
1980年代後半から2000年代初頭にかけて制作された英国美術そして「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」と呼ばれた作家たちに焦点を当てる企画。約60名の作家と100点の作品を通じて、90年代の英国美術の革新的な創作の軌跡を検証します。
話題になってたので行ってきた。エネルギッシュでスタイリッシュで即物的な作品が多かった印象。
展示解説が、短いながら作品意図や製作経緯が非常に的確にまとまっていて、敷居高く見られがちな現代美術展ながら間口が広くてよかった。インパクト強い作品も多いので、人の入りもよく盛況でした。
センセーショナルでインパクトある作品を用いて、当時の英国社会の鬱屈や社会への反抗を表すような、即時性や同時代性が強い作品が多く、若者がアートを通じて社会へ力いっぱい意見表明・異議申し立てする熱が作品群の魅力のひとつとしてある。一方で、これは自分自身の問題だけれど、サッチャー政権後の様子や大映英国の没落感や当時のジェンダー・多人種の緊張など、当時の英国社会がどういう感じだったのかそこまで詳しく分かっていないので、あんまり作品が表していることを理解しきれていないかも。英国の近現代美術を集めたテート美術館が企画してる展示だから、鑑賞者はそれくらいわかっていて当然でしょう、という前提なのかもしれないけれど。
にしても、国立近代美術館のからっぽの白い箱感は毎回すこし苦手なんだけれど、今回の企画展にはそのそっけない感じが合っててよかったなと思った。
以下、気になった作品のぽつぽつとした感想
ジュリアン・オビー「都市の風景?」
おしゃれで理想のようでからっぽでなんにもない都市の風景をスタイリッシュに描いた作品たちがよかったです。
ジリアン・ウェリング「ダンシング・イン・ペッカム」
Gillian Wearing’s powerful and provocative film, video and photographic works question the nature and construction of personal identity. I’m
ビデオ作品(作品は撮影禁止)なのでリンクのみで。
ジェンダー論、身体論、公共・私的境界論などいろんな問題提起を含む作品ではあるけれど、どんなにまわりが無視していても、楽しく自己表現して踊っている身体性にポジティブな印象を受け、ビデオという動きのある表現によく合ってるなと思った。
30年経ったいま、もう一度ダンシング・イン・ペッカムしたら、よくも悪くも周囲の反応含めていろいろ変わっていそう。
トレイシー・エミン「なぜ私はダンサーにならなかったのか」
Using her private life as the source and subject matter of her art, Emin narrates this short film about her teenage years in the sea-side to
ダンスとアートによる地元の男たちのクソみたいな行いへのささやかな復讐。
こちらもダンスするビデオ作品。身体性を巡る思春期のいさかい(男女間の勾配あり)の告白によるジェンダー論の表現という枠組みではあるんだけど、そういった問題提起以上に、一編の短編小説のような青春の生々しい叙情性に満ちていてよかったな。
しょうもない中傷でダンサーとしての道を断たれたのち、その経験を描いた短編作品(名指し有)がこうやってビデオアートとして美術館に立派に展示されて、海外の知らない人まで真面目に見るようになるって、表現による復讐として美しいと思った。後半がきらきらしている。
アニッシュ・カプーア「傷と不在のオブジェクト」
自分の血を抜いて凍らせて彫像にするなど、全体的にセンセーショナルな具象・即物系の展示が多かったので、内省的な抽象絵画は新鮮だった。色も意味深でいい感じ。これも「現代医学」ゾーンの展示で、精神というより肉体をテーマとする表現だけれど。
デレク・ジャーマン「運動失調―エイズは楽しい」
写真だとわかりにくいけれど、実物の色遣いと筆致がとても多義的で印象的だった。ポジティブな強さがある。
マイノリティで、病で、偏見で、たくさんの危機と視線に晒される身体を、英国的ユーモアと諧謔(タイトルあんまりすぎない??)を用いながら、色と線と文字という二次元視覚表現で生々しく表現し、当事者としてセンセーショナルに社会に提示して、社会に生きる人々の意識と表現を撹拌していくのは、YBAという運動のひとつの達成なのかもなあ、とか思うなどした。
自分用のメモ(展示紹介・解説)
「YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展が東京・京都で開催されるのに合わせ、YBA時代の美術をフェミニズムやクィアの視点から再検討する。
ねこのうた・ラストソング
Mewgenics楽曲 "Dig Your Own Grave" と主人公のはなし
※おそろしくネタバレ、クリア後推奨
力強く荘厳なゴスペルと軽快なジャズで、三形態あるラスボス戦の進行と合わせ、Phase1からPhase3に向けてどんどん楽器とコーラスが増え、ヒートアップしていって、これまでの苦労(核サブクエ、お前のことだよ!!)すべてを賭けて立ち向かうにふさわしい、壮大で物々しい音楽に仕上がっていくのが最高に格好いいですよね?
フル尺だと20分近くあるぞ!
(参考資料)
歌詞付き公式動画(Phase3)
Phase1-3フルで聞けるver.動画
歌詞和訳 (Phase1-3)
【以下、Mewgenicsのオタクの妄想であり、キャラクターや物語の真偽についてはなにも保証しない】
色々調べたうえで自分はこう考えました、というだけの読み物なので、話半分で読んでいただければ。あと、当然ですが"The Binding of Issac"のネタバレを含みます。
(ワンクッション)無限を進むねこ
この曲こそが、主人公マギーの曲なのかなとぼんやり思っている。
彼女が見ていたもの、彼女が対峙していたものについて。
【The Binding of Issac のぜんぶネタバレ補足】
"The Binding of Issac"はMewgenicsの開発者Edmund Mcmillenの過去作であり、ローグライト・アクションの名作
(あらすじ)悔い改めよ、そして生まれ変わるのだ。小さな丘の上の小さな家に住む少年「アイザック」と「ママ」。ある日ママが天のお告げを受け、「生贄」としてアイザックをささげようと襲い掛かってきます。アイザックはママから逃げる為、部屋で見つけた地下への扉を開き、地下ダンジョンへと逃げ込んだのでした。
「マギー」は主人公の母親マグダレンの愛称。ママ。由来はマグダラのマリアから。オープニングで主人公アイザックに包丁を持って襲い掛かる。
(追記予定)
最初は、まっとうに「反抗すると神の怒りがくだるぞ!」「自分の罪に目を向けろ」という歌なのかな、と思っていたんだけれど、歌詞をよく聞くと胡散臭いところが目立ち始める。
Part1からPart3にかけて、ナレーターの口調が告諭・説教調からだんだんと激昂しはじめて、最後には口角泡飛ばして聴衆を脅すような口調になっていくこと。(Phase1とPhase3はぜんぜんナレーターの様子が違ってておもしろい)
ナレーターの口調が、知り合い(元カノのグロリア?)に恨みがましく呼び掛けているような、個人的な恨み節にすぎないような部分があること。
Phase2
終末はいまだ訪れず! 人々は人々に反乱を起こし 王国は王国に反乱を起こし 至る所で 飢饉や地震が起こるでしょう 聞いてるか、グロリア?! これらすべてが お前のこの星で残された日々における 大いなる苦痛の始まりにすぎないのだ!
そして何より、旧約・新約聖書の終末的な描写をつまみ食いして、都合のいい文章をつぎはぎしたようなテキストは、正統的な説教とは乖離した、聴衆の不安と罪悪感と恐怖を煽り立てる扇情的な内容になっていること(お前の罪の一兆倍の罰を!とか、かなり拡大して無茶苦茶言ってる)。
Redditのオタクなどいろんな人が指摘している通り、"Dig Your Own Grave"はマギーが見ていたあやしげテレビ・ラジオ伝道師の煽り型説教をモチーフにした歌なのかなと思ってる。マギーが見ていたテレビ伝道の歪んだ教義を体現したIssacのボス「ドグマ」に近いものとして表されていると思っている。
なお、"Dig Your Own Grave"の説教パートは、コンポーザーRidiculonのボーカルであるMathias Bossiが担当しており、アイザックのドグマ戦BGM"Living in the Light"で、テレビのノイズの奥から聞こえる説教の声も同じく彼の声である。また、作中ラジオWMEW 99.9のパーソナリティの声も、Bossiが担当している。
女声パートは、だれがだれに向けている歌詞なのかは明確ではないけれど(混然とした象徴性も大事だし)、Phase2の歌詞は、箱の中で窒息死したと思われる「アイザック」のことを指しているんだろう。もちろん元ネタの旧約聖書「イサクの試練」のことも。
Sacrifice your only son, his breath is mine to take (ひとり息子を捧げよ その息吹は我が物)
太く力強い女性の声と繰り返すサビから、なんとなくマギーの自分自身に対する怒りや罪の意識、彼女の内心の声が重なっているようなイメージでいる。
Phase2
(己が魂を覗きなさい 己が魂を覗きなさい) お前の命に生きる価値なし お前の心は虚無の穴
Phase3
(弱き者よ なんと弱き者よ) 地を治める者が 柔和な者の皮を生きながら剥ぐだろう (これが運命 これがお前の運命) 生き死には剣によって 呑み込まれるのは憎しみによって (血の河が 天から降り注ぐ) 水は底より湧き上がり お前の愛で溺れる (墓を掘れ 汝自らの墓を掘れ) 蛆がお前を貪り尽くしても お前の魂に安息は訪れない
神様が、世界全体が、自分自身が、神の言葉を装いずっとマギーを激しく責め立てる。
これがずっと、おそらく「The Binding of Issac」が始まる前から、アイザックを喪った後まで、壊れていく家族と孤独のなかで彼女が見ていたものであり、流れてくるテレビ伝道師の言葉から感じていたものなんじゃないかな。
[Phase 1: The Creator(創造主)]、[Phase 2: The Destroyer(破壊者)]、[Phase 3: The Child(ザ・チャイルド)]の三段階それぞれが、彼女が恐れ、対峙しなければならなかったものの形を映しているように見える。
小さな丘の上の小さな家のはなし。
家族を作り、息子を産み育て、子育てがうまくいかず、夫との行き違いや素行不良により家族が軋んでいくこと。
夫が出ていき、子供とふたり残された家で、テレビから聞こえる伝道師の声に縋り、愛する息子を神に捧げ(虐げ)、家族が壊れていくこと。
愛する子供を失い、自分自身が徹底的に壊した家にひとり取り残され、自分の犯した罪の重さに怯えること。
そして、あなたを救わなかった、あなたの罪を責め立てる説教と荘厳なゴスペル"Dig Your Own Grave"が響くなか、あなたはすべてを爆破する核のスイッチを起動する・起動させられるだろう。
そんな歌詞からは、過激な宗教団体の手法としてありがちな、どうしても上手くいかずにいろんな悲しみや不幸に沈む人々へ近寄り、神の名を用いた苛烈な罪と罰の説教により、迷える人々に不幸の理由と罪悪感と恐怖感を大量に与え、わかりやすい救済の道を示して、生活・金銭的な犠牲を強いることで、さらに孤立を深めて、自ら壊してしまい、そしてめちゃめちゃになっていく家族の姿を、自分はなんとなくイメージしている。
Phase1
あなたは町で呪われるでしょう あなたは野で呪われるでしょう あなたの胎の子は呪われるでしょう あなたの土地の実りも あなたの家畜の仔牛も あなたの群れの仔羊も あなたは迎え入れられるとき 呪われ そして、出て行くときにも 呪われるのです! あなたにこの警告を告げます 聞き入れなければ 従わなければ 神の御名に栄光を帰さなければ 神はあなたを呪い あなたのすべての祝福を 呪うでしょう 真実、神はあなたとあなたの子孫すべてを すでに呪いました そして、あなたの顔を犠牲の子羊の糞で 塗りたくるでしょう
ただ、歌詞に出てくる罪や罰がぜんぶがいい加減なでっちあげというわけでもなくて、歌詞の結構な部分が実際の新約・旧約聖書から引用されている。旧約は特に、「イサクの試練」(アイザックの元ネタでもある)や「黄金の牛」などのエピソードをはじめ、原典自身が相当に苛烈な試練や罰を含んでいるから、苛烈な厳格さも信仰の一側面ではあるけれど。
(旧約の苛烈さも過酷な環境下で信仰共同体を維持するための規律としての合理性が、とか、アメリカにおけるテレビ伝道師の影響と功罪、とか考え始めるとキリがないのでこの辺りで)
本作はキリスト教に関連する要素を多く含んでいるけれど、一方で、新約における隣人愛や赦しなどの要素は薄めな印象があるかも。一口にキリスト教といっても、歴史が長い分だけいろいろな要素があるから、門外漢にはむずかしいね。
閑話休題
『破壊者』としての神が、アイザックのともだちであり、支えであり、喪った存在としての『ガッピー』の姿を映していることも、マギーの罪の意識から来ているのかな。だから、出てくるものぜんぶ「ねこ」だったんだろうか。
結局、神と自分しか責任をかぶせる人がいなくて、過度に自責の念が強くて自罰的なところは、少しだけアイザックと似ているのかも。かなしい。
(ガッピー:アイザックの飼い猫、ゲーム時点では死亡していることが示唆される)
キリスト教を信仰しているわけじゃない、日本の一般市民の視点からすれば、ひとりで追い詰められすぎているから、もっと早く家のことを相談できる、助けてあげられる福祉があって、マギーには落ち着いた場所、おだやかに寄り添って話を聞いてくれる人がいて、自分自身のこと、アイザックにしてしまったことにちゃんと向き合える場所、これからのことを考えられる場所が、少しでもあればよかったのにと思ってしまう。
もちろんそんな場所はブーン郡にはないが。
マギーは自らが犯した大きな罪を贖えないまま、赦されないまま、死んで(おそらく自殺)しまったので、キリスト教的な解釈で行けばたぶん地獄行きなわけだけれど。
コアを見れば、悪魔は愉快なやつで、地獄も楽しそうだしそれもいいのかもね?それでいいのか??
ゲーム内では、マギーが直接意思表示をすることはないから、彼女がなにを思いなにを為そうとしていたのかは、プレイヤーにはわからない。この冒険が彼女にとって、ただの洗脳となりゆきの結果なのか、贖罪の旅路なのか、博士みたいに死に物狂いでアイザックの魂を求めているのかもわからない。
無理やり生き返らされて、たくさんのねこを生み出して、捨てて、活躍させて、死んで、生き返らせて、また死んで、いろんな不条理(突然の血の狂乱やアーサーとか!)に出会って、なんとかなったりだめだったりしながら、月や地獄にも行って、カオスを抜けて、過去も未来もめぐって、多頭崩壊猫屋敷でたくさんの非道と無法と奇跡を生み出して、ねこと一緒に過ごしたその日々は、大きな罪を背負った、アイザックを喪ったマギーに取ってどういう意味を持つんだろう。
恐れるべき、従うべきだった存在の「神?」と戦って、博士が「神?」に爆弾を撃ち込んで、200時間近くかけたねことの大冒険の結末で、マギー=プレイヤーはなにか得られたんだろうか。
当然赦されない彼女に、少しでも答えや救いはあるんだろうか。
ゲームなんだから、おれ=ママだったんだから、ゲームプレイを通じて自分が感じたこと、考えたことが答えなのかもしれないけれど。
無限を進み、神に対峙するところまで来ているなら、プレイヤー自身もマギーと同じように壊れためちゃくちゃな家を作ってきただろうから。
(ほとんどのプレイヤーが)博士という狂人の言うがままに、常人には意味不明な目的のために邁進し、意味不明な品物を家に山ほど溜め込んで、育てきれないほどのねこを大量に生み出して、ステータスのよくないねこ、障害のあるねこ、病気のあるねこ、年を取ったねこ、怪我を負ったねこ、目的にそわないねこを、罪なき無垢な存在を山ほど土管に捨てて、優秀なステータスと特性と変異を追っていくという差別と優生思想がまかり通る、あらゆる意味で終わっている多頭崩壊ねこ屋敷を作ることで。
"Dig Your Own Grave"を聞くとき、プレイヤーである私たち自身もまた、マギーとおなじ罪に向き合うべき罪人となっている。神を前にしてどうすべきなのか、核を撃ち込む以外の答えを、私たちはまだ知らない。
答えはないけれど、創造と破滅の限りを尽くすゲームはここにある。子供の落書きのようにかわいらしくて、子供の語るお話のように荒唐無稽で、豊かで楽しいそれは恵みだ。
父: 本当にこの物語の終わり方でいいのかい、アイザック?きみが書いているんだ。こんな終わりじゃなくてもいいんだ。ほら、違った風に語ってみるのはどうだい?ハッピーエンドになるかもしれないぞ。
子: わかったよ、パパ。
父: それじゃあ、アイザックと両親は小さな丘の上に住んでいました......
(The Binding of Issac エンディングシーンより)
この残酷で理不尽で戦略的でめちゃくちゃな遊びが、あなたにとって楽しい時間でありますように。
Thank you for Playing!
終わりに
まだまだねこで遊んでたい!DLCに期待!!
ねこの時間だ!!
戦いに負けたねこ、大活躍したねこ、活躍しなかったねこ、ほどほどのねこ、家に入れなかったねこ、消えたねこ、まだ見ぬねこ、土管に捨てたたくさんのねこ、どのねこもいろどりと同じく、驚くほど多様な要素と大いなる偶然とひとさじの戦略が作り上げる、ひとの意図を越えたひとつの可能性。 すべての可能性は起こりうるものとして起こり、だれもが等しく一匹のねことして生まれ落ち、だれもが等しく一匹のねことしてゴミ箱へと行き着く。 科学のねこ、それはきたなくてきまぐれで無窮の可能性を秘めた肉の営み。 Mewgenicsでたくさんのへんてこなニャーを、豊かにめちゃくちゃにかがやく生命の唸りを聞け。わたしたちはどこまでも連なり続ける、悲惨で愉快な肉のなかに生きているのだから。
Mewgenicsといろどりの記録、あるいは21トリソミーのねことの冒険 - 情緒的な感想文
おまけ
ねこのことを考えすぎている。
カートゥーン調なおもしろゲームなんだけど、歌や余白から提示される情報の手触りと繋がりがリアルで切実で肉々しいから、気になっちゃうんだよな。
最初、Mewgenicsと過去作との繋がりが思ったより深く、エドマンド・バースを形成していると知ったときは、正直ちょっと引いたところがあって、作品単独で完結しないし、ハードル高いし、アイザック知らない勢は置いてけぼりだし。でも、ゲームプレイの形でしか描けない、過去との繋がりを持ってしか説得力を持たせられない、100時間以上かけるに値する、テーマの深掘りや複雑さや納得感ある体験があったと自分は思っている。
ねこは、過去作知らないまま遊んだって、全然かまわずに最後まで楽しく遊べるように配慮されてるし、アイザックのストアページに書いてある程度の簡単なあらすじ知っているだけでも味わい深いし、ストーリーの読み取りはプレイヤーごとのお好みでいいんだと思う。
多くのすぐれた物語がそうであるように、Mewgenicsの物語はゲームのキャラクターの中だけで完結するのではなくて、誰かがどこかで共鳴できる普遍性があるから。
考察ガチ勢はさらにラジオ楽曲とラジオ音声の解読まで進んでいるが、英語よわよわ民の自分はここまで。だれかラジオまとめをYoutubeにあげてくれ……
Mewgenicsとねこたちの思い出
長官さんとおれと仲間たちの170時間に捧げる。
ゲーミングIQ高高アザラシことワモンアザラシ長官さんのMewgenics配信で、たくさんのへんてこなねこたちの冒険を見届けた記念に、彼らの冒険の軌跡を記す。
大活躍したねこ、可能性だけ見せてすっと消えたねこ、けなげで愛すべきねこ、紆余曲折を経て成熟したねこ、おかしなまま走り抜けたねこ、よくわからなかったねこ。いろんなねこたちの思い出に。
(有益情報)
ふつうにつよいねこクラスはファイター、ハンター、サイキックです。(開発者のエドマンド氏より)
※なお、エドマンド氏は速攻重視のプレイスタイルで回復は考慮しないとのこと。あと、自分で開発しているのでMewgenicsが上手すぎる。
(有益情報おわり)
※最終ステージ、ラストボスまでネタバレのため注意
※長官さんの配信動画素材、ツイート画像を使用しております(掲載許可ありがとうございます!)
うすあげ(野良)
Act.1 洞窟
記憶にのこるねこ・ベストワン
ただたのしく思索とギャンブルするだけのねこ
メイジがサメに丸呑みされたため、道中で拾った野良ねこ。
思索(知恵+1)を溜めたのち、ギャンブル(クリティカル率10%上昇バフ、クリティカル攻撃成功で金が出る)を繰り返す。
いくらギャンブルでクリティカル率を上げても、射程が狭いため、いつも攻撃がもう一歩届かないのが愛嬌。ギャンブルで金をまき散らすことで、金銭面でチームに貢献するというまさかの活躍。
思索して、スロットまわし続けて、金ばらまいて、スッと消えていったうすあげ。なまえも味がある。いっぱいコイン投げられてよかったね。
この子を見て、自分もMewgenics買いました。
おにゆず(ティンカラー)
Act.2 砂漠・ギロチナ戦
大きなめがねの初ティンカラー!
期待のティンカラー(エンジニア)だが、いきなり味方攻撃や予測不能ノックバックなよわよわパンチングマシーンや制御できない猫ボットなど、いまいち使えないへんてこ発明ばかりして、おらが町の困った変人発明家と思われていた。
が、ポンコツ扱いだった量産型パンチボットがギロチナ戦(うじ大量発生ver.)でうじ虫かく乱ロボとしてまさかの大活躍。前回全滅と手こずっていた最終形態ギロチナ撃破へとつながり、大発明家と呼ばれるように。
次回以降のティンカラー職への期待を大きく膨らませてくれました。
しんげつ(サイキック)
Act.1 洞窟(核ナイフクエスト)
序盤サイキック!
通常攻撃もスキルもよわよわなサイキック。
まだ育成・活用方針が定まらず、可能性だけのねこ。草生やしてピンを連打して、ちくちくするだけ。
やたらご機嫌で、今後に向けてやる気は十分!チームは全滅しました。
名前をわすれたねこ(野良)
Act.2 月(一回目)
付いて来ちゃったねこ
一匹ロストにより月ステージ終盤で拾った、へんてこな野良ねこ。
ほかの古参有力ねこのレベルアップの機会を奪い、戦闘中に使えないスキルばかり覚える。月のボス戦の後半では、もうスキルが使えずうろうろするだけ。そのうち勝手にロシアンルーレットして死んでしまう。でもアクセサリーで生き返って、いっしょに無事に家に帰りました。
なんだったの、きみ?
勝手に付いてきて、勝手にロシアンルーレットして、勝手に死んで、勝手に生き返って、勝手にいっしょに帰るねこ
トリオ(ハンター)
Act.1 肉の脈動(ギロチナの頭皮クエスト)
蟲愛され系ハンター
生まれながらに鈍足で行動範囲が狭いねこだが、愛されパッシブを持つ。
虫召喚スキル+召喚強化バフ・アクセサリー、さらに味方クレリックが何か拾うごとに全ユニットにガード+1付与。
鉄壁砲塔のむしたちに囲まれて、しあわせに暮らしました。
とらのすけ(メイジ)
Act.1 肉の脈動(ギロチナの頭皮クエスト)
「血の狂乱」、深い業を背負ったメイジ
前述の『トリオ』と同じチームのねこ。
魔法を連射、敵を倒すとマナを稼ぐスキルでコンボを繋ぎ、さらに魔法を連射する無限循環ビルドで大活躍の相が見えてきたころ、イベントによりデバフステータス「血の狂乱」(敵を倒すと狂気+1、敵味方構わず攻撃して制御不能に)を取得。不殺のねことなることを余儀なくされる。
その後、味方にマナを分け与えるスキルを獲得し、自身の呪文は封印して、貯めたマナをひたすらハンターの『トリオ』やクレリックに渡し、チームへ尽くすこととなりました。
ありがとうね。
きみの受難をずっとあわれに思ってるよ......
アヴェリー(ティンカラー)
Act.2 次元の裂け目
記憶に残るねこ・ベスト2。知恵と狂気の大先生。
ティンカラーとして有用な「思索」(知恵+1)を持つが有用なアクティブスキルがなく、ずっと賢さをもてあましていたねこ。
レアスキル「エウレカ」を習得(テック3を獲得し高機能武器を生成するが、発明時に狂気+1)するも、高度な発明の副作用による狂気で、仲間に武器を乱射する手に負えないねこになってしまう。
その後もスキルに恵まれず、なぜかのらねこスキル「蒸気ローラー」を習得することに。かしこい発明家なのに「工作も発明もせずローラーに乗って転がるだけ」という常人には理解しがたい悟りを見出す(かしこさの石(ノーマルスキルマナコスト-2)を持っていたから)。
そんな月のラン終盤、癖のつよいチームを終始サポートしてきたファイターが、いきなりとちくるって強デバフ「血の狂乱」を獲得。ダメージソースだったファイターが敵を倒せなくなり、チームが崩壊状態となったそのとき、先生が覚醒。
思索で増えた知恵を駆使して、低コストな移動+攻撃スキル「ローラー」を乗り回すことで敵・爆弾を確実に処理、ピンチを乗り切る。
先生の悟りが正しかったことが証明され、最後は最終ボス戦時に覚醒したファイターの「血の狂乱」により遺体も残さず爆ぜ、その数奇な猫生を終えました。
彼女の活躍?もあり、初見ではむずかしい第四ステージでも無事ボスを撃破し、他のねこはぶじ家に帰れました。
知恵と狂気にまみれたかの猫の魂が安らかであらんことを。
【先生の活躍をノーカットでお楽しみいただけるアーカイブ】
すずり(メイジ)
Act.2 未来にて
攻撃スキルをほとんど持たないいぶし銀メイジ
帽子も渋くて格好いい!
未来なので、メイジお得意の遠距離スペルと電撃スキルは封印。ほか有用なアクティブスキルもなし。
殲滅力の高いファイターとアーマー無視のクリティカル・連続攻撃持ちハンターの後ろで、ひたすら厄介な敵を凍らせ、豊富な知恵で得たマナをエースの二匹に分け与え続けるマナタンクとなり、渋く勝利に貢献しました。
とらのすけもそうだったけれど、渋いメイジがすきかもしれない。
やっかいな敵は凍らせて、味方が活躍できるように準備!すずりは顔がかわいいね。
かしこいねこなので、イベントも無事突破。
イリオモテヤマネコ(ティンカラー)
Act.2 コア
ねこなのか?
少なくともイリオモテヤマネコではない。
ミューテーションが進んだ家系の繁殖でうまれた、頭3つに分かれ系ねこ。高い知性を活かし、メックを乗り回すパワー系ティンカーとして大暴れ。
ねこ?もメックに乗って大暴れ!
なお、安定しないチームをずっとパワーと機動力で地道に支えていたファイターさんは、コアのボスの悪魔にのまれてひとり死にました。(他3匹は無事に家へ途中帰還)
コカコーにゃ(ハンター)
Act.3 ジュラ紀
強くてかっこいいねこ
おせわにゃん(ファイター)
Act.2 裂け目
棒!破壊!!
知性の高い高学歴ファイター。ファイターらしくバランスよく活躍。
アクションスキル「棒!+」(グレードの高い棒の武器を召喚)とパッシブスキル「破壊!」(武器が3倍ダメージ、壊れやすくなる)を駆使し、マナコスト3でダメージ30の丸太を何度も召喚しながら、棒武者として活躍する。
デジャブに巻き込まれても持ち前の勤勉さで発生を抑えるなど、最後まで手堅く活躍。なのに、最後カオスに巻き込まれてしんじゃった。こき使われて、死んじゃって、ファイターっていつもそう......
おせわにゃん、棒とともに眠る(丸太で活躍する姿)
にゃんヘルメット(サイキック)
Act.2 裂け目
「パペット」で敵も味方も操り人形に!
わずかマナコスト3のスキル「パペット+」で、味方のファイターにずっと敵を殴らせる恐怖のサイキック。
序盤のよわよわぶりが信じられないくらい、サイキックは「成る」と、サイコキネシスで敵をずっとピンボールさせたり、エントロピー増大させて消したり、魅了や混乱付与による精神破壊をおこなったり無法がすぎる。
遠隔でファイター(上記の「おせわにゃん」)にワンターンで5回以上殴らせているねこ
デスにゃん(ドルイド)
Act.2 コア(核クエスト)
毎日がライブ!デスメタルを歌い続ける歌姫(オス)
歌のマナ消費半減パッシブ「マエストロ」を持つ家系に生まれたドルイド。クエストアイテムにより筋力と移動がいちじるしく低く、使い魔も弱いが、歌うことですべてをカバー。
雑魚敵をランダムで爆殺する「デスメタル」(マナコスト13)を取得後、ファン2匹(サイキックとメイジのコンビ)にマナコスト減少とボーナスターン付与を貢がせることで、デスメタル(マナコスト1)を熱唱し続け、1ターンのうちに敵をすべて爆殺する悪魔の歌手となる。
「デスにゃん」の名前に恥じぬ活躍を見せました。
ミスにゃイゴン(ティンカラー)
Act.3 無限(ラスボス戦)
最後のティンカラー
目がたくさんあってかしこい。ラストバトルに向けておしゃれリボン(効果なし)を付けて気合は十分。
最後はやっぱり、発明家先生に締めてもらわないと!
ということで神に核を発射(デジャブで一敗)
終わりに
ねこたちの記録を書いていると、記録に残してはいないけれど、へんてこな猫たちをずっとサポートし、堅実にチームに貢献し、先へと進ませてくれた、たくさんのチームメイトねこたちのありがたさが身に染みてきますね。
いつでも安定してつよいファイターやハンターやメイジ、回復役のクレリックなどのねこたちも。思い出に残ることだけが、大事なことではないのかもしれません。
(おまけ)ナーフ前のアーサーの思い出
開幕直後の悲劇
「原子分裂して突然の死」
最高にミュージェニクス!
ねこのうた・裏話
Mewgenicsの劇中歌約30曲の歌詞を私家翻訳したので、翻訳しながら考えたことの自分用の備忘録・メモ
+エンディング後の感想
はじめに タクティクス×ローグライト×リソースマネジメント×きまぐれねこを掛け合わせた、予測不能で法外に愉快なゲーム「Mewgenics」。Ridiculonにより奏でられるMewgenicsの楽曲は、奇妙な世界や登場人物たちを語り、歌い上げます。 直接にはほとんど語られない"M
1曲あたり翻訳に3時間近くかかってて、けっこう大仕事になってしまったので。
歌詞の翻訳は独特の癖や仕上げの差があって難しい。直訳・意味だけ大事な訳にすると音楽としての遊び心や楽しさやリズム感が消えてしまうところも多く、意味は変えないようにしながら、ところどころ調整を入れているので好みは分かれそう。今回は、音楽聞きながら、いっしょに翻訳字幕見て楽しめるようにするのを目標に作った。
下訳は機械翻訳にやらせてるけど、音韻の調整とかこまごまやってるから仕上がりはほぼ別物で、素人がいろいろ確認・調整してると時間が溶ける。けど、音楽も歌詞もいいから翻訳作業楽しかったのでよし!
機械翻訳でそのまま読むよりは作品内容を反映したいいものになったんじゃないかな、と自画自賛しとく。
Mewgenicsを楽しんだ人にとって、作品理解や考察に役立っているといいですね。(とりあえず数人は参考にしてくれてるようで満足)
以下、ネタバレあり注意
(ワンクッションのかわいいステイシーと博士)
Act.1
全体
路地裏やゴミ捨て場など、はぐれ者たちのきたなくてずるくて強くてどこか艶っぽいところが伝わるように!
Eatin’ Rats (in 路地裏)
音がたのしい!
路地裏のわるくて強がりねこの愛嬌あるイメージを大事に。「自分が目当てじゃない」と拗ねるし、おれにフリカッセも作ってくれる。最後の段落だけちょっとセクシーで意味深。
音韻に困ったら擬態語にたよりがち。HIPHOP聞いたら、もうすこしリズム感いい日本語が養えるのかしら。
Flush (in 下水道)
労働はクソ、という労働の歌。べたつくような感じで歌いあげたい。
訳詞にするとどうしても伝わらないところがあるので、最初の段落などは下水道感を言葉で少し補ってます。飛躍した意訳はなるべく用いない方針だけれど、訳詞は音楽のリズムや歌手の声と乖離するため、原語よりパワー・伝達力がどうしても一段劣るので、日本語の読み物としてちょっと強いトーンの言葉を使うことで曲調を伝えられるように調整してみたつもり。ここら辺うまいバランスを探っていきたいところ。
ぐちゃぐちゃ言いつつ、とりあえず意味と合わせて歌の楽しい感じや遊び心が伝わればいいかーというところなのかなあ。
Crystalline Dreams (in 洞窟)
強くて高貴な蜘蛛感が出たので満足
Chumbucket Kitty (in 廃棄場)
調子のいい言葉を連ねていくのが大変でした。サビ部分がいいね。
Them Kitty Bones (in 骨の墓場)
ほ・ね、ほ・ね♪
なでなで、ぬめぬめ!
コーラス部分がリズム感よく楽しくてお気に入り。
Throbbing King (in 脈動の領域)
「むかしむかしのお話」調で整えることにしたら、わりとすらすらいけた。
脚韻に困ると、とりあえず語尾を「さ」にすることを覚える。昔のポップソングが「するのさ」とかちょっと気取った感じになりがちなの、こういう理由もあるのかもな。
Guillotina(ギロチナ戦)
むずかしい!!全楽曲の翻訳作業のなかでいちばん苦戦した。
むずかしいテキストというより自分との相性の問題だけれど、ギロチナの強くて欲深くて傲慢で艶っぽい感じが全然出ない!自分のなかにそういうイメージと語彙がない!
すぐ言葉の線が細いへなへなチナになるので、乱暴な言葉遣いを織り混ぜて強さを出したけれど、文体が取っ散らかっているみたいに見えなくもない。自分なりのベストは尽くしたけど、もっと上手く訳せる人がいると思う。ごめんね……
Act.2
全体
月でも地獄でもどこでも行ける!なんでもできる!という世界観と可能性の広がりをたいせつに。そしてカオスへ。
Lonesome Road (in 砂漠)
西部劇すきなのですらすらできた。1時間かかってないはず。いい雰囲気にできたと思う。
Alone In The Dark (in バンカー)
わりとすなおな感じで特筆事項なし。
Down With The Devil (in コア)
溶岩エネマというのを「溶岩が尻を舐めた」と訳したけど、なにが正解なのかはわからない。
歌ってるねこが実は近親と致していて地獄行き、ってめちゃくちゃな最後がすき。ゲーム内では日常茶飯事な出来事なのに。地獄はみんなイカれてて楽しそうなのがいいね。
Feline Invader (in クレーター)
文字少なくてシンプルでかんたん。歌は壮大で格好良いのに、歌詞だけ読むとばかばかしくて最高ですね。
「催眠状態 地球を侵略だ ゾンビねこがよみがえる!」て。
So High (in 月)
厭世的で優雅でたのしくてすきなやつ。すらすら。こういうのでいいんだ。
Chaos (in 裂け目 その1)
ストーリー的にけっこう重要な歌なので気を使った。お芝居、ミュージカルぽいイメージで。ステイシー…...
Crazy Days (in 裂け目 その2)
歌の楽しくてむちゃくちゃな勢いをころさないように。
アライグマに乗って 月まで直通 5、4、3、2、1 (ファイブ フォー スリー ツー ワン!)
ここすき。
Bolt of Lightning (in 裂け目 その3)
非常に難産!なぜ意味深で象徴的な単語を四字熟語で表現しようと思ったのか……
結果、意外としっくり来たから気に入ってはいるけれど。いい感じの四字熟語探しはAIアシスタントにお世話になりました。アレンジが必要になるから結果はそのまま使えないことが多いけれど、ブレストにはだいぶ有用だったな。
裂け目の三曲はChaos→Crazy Days→Bolt of Lightningの三段階で狂気と精神崩壊が深まるので、それが伝わる文になってるといいですね。
Brush Your Teeth (ピロフィナ・ザラタナ戦)
日本語歌詞たすかるー
Act.3
全体
「破壊と創造」「生と死」「信仰のあり方」など作品にとって重要なテーマを表す歌が増えてくるので、翻訳前に事前調査と準備をしっかり!
Endless Misery (in 研究所)
パン、パパン、パパパパパン♪ ミ~ザ~リ~
ステージがつらすぎてプレイヤーのトラウマ曲。ファンタジックで楽しそうな曲調に反して歌詞がひどすぎ。博士の研究所で何が行われていて、どうなってしまったのか、がわかる楽曲なので大事な曲でもある。最後のみんな滅びます段落がお気に入り。
もっと軽快なアニメミュージカルみたいな文体なのかな、と思いつつ、声のイメージと最後の段落に引っ張られてこんな感じで。
ほかの人の訳も見てみたい歌。
Mom I Really Hate You (in 氷河期)
意味深な曲
母親パートも子供パートも修復不可能な感じで、二声の訳し分けはわりとうまくできたんじゃないかな。
Tuff (in ジュラ紀)
ながい!最後のパート、TruthとToothが掛けてあるんだと、これ書きながら気付いたのでちょっと修正した。
女声パートの煽り歌詞がお気に入り。
HUMANICIDE (in 未来)
うわさの総統。
どんどんロボット成分が増えて、文章にドイツ語部分が増えていくことが、違和感として伝わっていればいいですね。ドイツ語だから檄文調に、ていうのちょっと偏見ぽいか?と思いつつ、今回はボステーマに合わせて。
We're dead (in 最果て)
厭世的で優雅でたのしくてすきなやつ、その2。けっこう遊んでて、すきな言葉をいい感じに並べてこう。
『死んじゃった』原文は「we're dead」、訳語はリズム感と合わせてけっこう迷ったけど、気楽で楽しげだし「ねこふんじゃった」も意識して。
『ぜんぶさよなら』原文は「we're finally dead」、「さよなら」って日本語では非常にリズムがよくて、最後に使うと締まるし、一時期多くのJポップで「バイバイ」「さよなら」で終わる歌が多かったイメージ。ちょっと投げやりなところもよい。「ついに死んじゃった」じゃサビもいまいち締まらないし、音と当てたらいい感じで、詰まるところは同じ意味なので採用。
『彼岸花は揺れ』直訳だと「デイジーを押し上げて」、死体が土を押し上げるイメージの言葉。土葬や蘇りがキーワードの曲ならこれはNGだけど、今回は死とお花を結びつけて不穏で優雅な情景を出したかったので、日本でも直観的に理解しやすい彼岸花に置き換えてみました。
Taser Paws (C-800、C-1000戦)
Taser Paws=電撃ねこパンチ!
The Crack of Doom (ヒトラーⅢ世戦)
虚無主義のうた。抽象的で文意が取りにくく苦労したけど、いい感じにまとまったのでお気に入り。
歌詞見ていると、このボスも単なるおふざけじゃなくて、殲滅・断絶・非出生主義の象徴として出てきたのかなと思ってる。アイザックなど過去作のエンディングも踏まえて、虚無・終末にたいして否定的なだけじゃなく誘惑的にしたいという意図もあり、ちょっと甘い文体になっている。
一か所だけ、SFをもじった遊びを入れてみた。この曲に限らず、訳しきれない遊びを足したり引いたりして、総体としてのテキストの強度を高めることで原詞に近づけたいけど塩梅が難しい。下手打つと台無しだし、かなりセンスがいるなと思う。正解はないわけだけれど。
ほかの人の訳も見てみたい歌。
Angel Wings (in 無限)
厭世的で優雅ですきなやつ、その3。さくさく。
Dig Your Own Grave (in 無限・最終ボス)
たーいーへーんー
3パートもあり長いし、聖書ベースだし、ストーリー上の解釈もむずかしいの三重苦。
歌詞の解釈や視点を固めるのに非常に苦労して、完成させるまでWikiやYoutubeのサントラ動画に付いてるコアファンのコメントとかredditのロアのネタバレスレとか英語圏での捉え方をいろいろ見た。Phase1からPhase3にかけて口調が説得・告諭から怒り・脅迫へとヒートアップしていくとか、実はあやしげなテレビ伝道師のように聖書の終末論を適当に引用してつまみ食いしたような歌詞になってるとか、唐突な「グロリア」がなんなのかとか、自分では気づけなかった視点が色々あったので助かった。あと、アイザックやエンドイズニ関連の考察とかもいろいろ見ておく。調べるついでに、関連作品含めたバックストーリーの理解がだいぶ深まったので結果オーライ。
キリスト教系の終末論的カルトの話がいろいろでてくるため、宗教モチーフも厳粛に。聖書の引用部分は、日本聖書協会から引用したものをアレンジしたのでそれらしくなってるはず。
これらの成果を翻訳のクオリティにきちんと反映できているかは祈るだけなんだけど、とりあえずベストは尽くしました。一ファンとして、ラスボスの格好いい曲なんだから半端はしたくないよな。
エンドクレジット
Future Meets the Past
日本で例えるなら、エンディングでいきなり「帰って来たヨッパライ」オマージュソングが流れてきた、みたいなこと??
歌詞翻訳以上に、エンディングがよくわからなかった人のヒントになるように解説をがんばった。
自分はねこからの新規勢でアイザックイ未プレイ(プレイ動画は見てる)だけれど、過去作ファンの方々から見ても不足や矛盾がないように。そのうち考察勢が出てきてくれるはずなので、記事に書く内容は誘導しすぎないようなるべく簡潔に。
おまけ
Mewgenicsのうた(テーマ曲)
今日も元気に科学のねこ!
みんなで歌おう、ミュ~ジェニクス!!
その他
権利関係とかいろいろ
歌詞の公式翻訳出る予定あるなら競合するので私家翻訳やったらいかんなと思ってたけど、今のところ多言語対応している言語でも訳詞出てないので、今後も公式で訳詞出ることなさそうという見込みで作業してました。そのほか、スペイン語非公式翻訳楽曲動画出てるけど、削除申請はされてないので勝手翻訳自体はお目こぼしかなとか(楽曲と一緒に上げるのは自分としてはアウトラインなのでしないが)。
二次創作同様のグレーゾーン活動なのでいろいろ注意書きつけて、面倒起こしたり迷惑かけないようにしたいところ。
雑感
そもそも英語そんなに得意じゃないから(英文読解や文法は人並みにやって、可能な限り正確を期しているけど)、趣味として翻訳やっててたのしいのかな、と思う時がある。英語得意ならネイティブのように読んで終わりでいいわけで。
テキスト精読+日本語生成パズルゲームとして楽しんでる節がある。
ねこのうた・終わり、あるいはエンディング後の感想
※The Binding of Isaac ネタバレあり
おまえがママになるんだよ!!
プレイヤーに、ゲームシステムの命ずるまま、多頭崩壊ねこ屋敷を作らせて、めちゃくちゃな家で優生主義で差別的で行政に通報されかねない、怪物のような「ママ」になる体験をしてみてほしかった、ってことなの???
意味不明な品物を家に山ほど溜め込んで、生育環境は劣悪で、避妊もしないまま大量に生み出したステータスのよくないねこ、障害のあるねこ、病気のあるねこ、年を取ったねこ、怪我を負ったねこ、目的にそわないねこを山ほど土管に捨てて、優秀なステータスと特性と変異を追って、狂人の言うがままに常人には意味不明な目的のために邁進する、ハタから見たら完全にイカれてる狂信的なママになる体験を。
アイザック未プレイのフレンドが、ねこをプレイしながら「主人公に必要なのはねこじゃなくて、行政の介入と福祉じゃないか?」って言っていたけど、ほんとうにそうだよ。ストーリーや台詞じゃなくて、楽しいゲームプレイだけでそれをわからせるのゲーム作りが上手すぎてこわい。
アイザックで提示されるテーマをさらに遡れば、「ママがどうすればよかったのか」「ママが何をしようとしていたのか」に行き着くのもわかるけど、そんなことプレイヤーにさせるって……
ママとプレイヤーたちがねこを選別して成し遂げてきた思想と行為そのものがEugenics(優生学)だから、Eugenicsを掲げた総統がボスにいるのもギャグだけど、ギャグだけじゃないんだよな……
でも、どんなにステータスがよくても上手くいかないこともあって、同時にどの特性も個性であり環境や使い方によっては上手くいくこともあって(上手くいかないこともある)、神様じゃないプレイヤーはすべてを予測することはできず、ランダム性の強いリソースマネジメントとストラテジーが都合のよい選別だけでは捉えられないあらゆる可能性を見せてくれるわけで。
だからうちの重度障害持ちのいろどりも、生きて冒険して帰ってきたわけだし。
発達特性のある娘さんのエピソードや冒険に出てぼろぼろで戻って来た猫のエピソード等が味わい深い開発者インタビュー
いろどりの冒険
タクティクス×リソース管理×ローグライクゲーム”Mewgenics”で科学のねこ「いろどり」が戦った記録を残しておく。 はじめに Mewgenicsといろどりの冒険 感想とまとめ はじめに どうかしてるオープニングから引用。科学のねこの可能性は無限大。 しかも私、トーマス・A・ビ
アイザックからの物語を踏まえると、ママひとりが強さも弱さも罪も愛も背負いすぎていて、見ていてつらいのもあるし……許されないことをしてしまった人だけれど。
(優しく想像力豊かだがアルコール依存症で金遣いの荒い夫が家から出て行き、周囲から孤立した家で、(エドマンド氏自身を反映するなら、おそらく強い発達特性を持った)息子の子育てにひとりでは行き詰ってしまって、外部との数少ない接点であるテレビから流れる口の上手いテレビ伝道師の説教に救いを求めて縋ってしまった、という流れはどこでもありうる話なので)
だから最後に博士だけが、ママのしてきたことを、仲間として認めてくれることも非常に複雑な気持ち(最初に洗脳用説得装置を使ってるわけだが……)
しかも、ママの狂信的に見えるくるった行いを全否定しているわけでもなくて、ママにもママを唆すくるってる指示者(今回はビーニーズ博士)にも常軌を逸した目的があって、それを成し遂げようとしていた、というものすごいバランスの語りもこわい。それで神?も倒したし。
アイザックで描かれた恐ろしくて哀れなママが、こんなことになるなんて。
おかしくなったママと博士がいなければこのゲームもなくて、ねこたちもいなくて、100時間以上楽しくゲームを遊んできたプレイヤーなら、どうしてもその目的を否定できない。
Mewgenicsのこと、The Binding of Issacでアクションローグライトというジャンルを切り開いた開発者がもう一度、ローグライト×タクティクス×繁殖マネジメントというシステムを巧みに組み合わせて、ローグライトの魅力をさらに一段進化させた傑作だと思っているけれど、こんな楽しいねこのゲームをつかって、そんなだれも望んでない「息子を虐待するような環境を作ってしまった狂信的なママになる」という壮絶な出来事を、ゲームとして体験させている?? なんか、すごいけど、あまりに実験的すぎる??
ふつうにゲームとして自然でたのしすぎるから、こんなこと気にする人もいないかもしれないけれど。法外におもしろいゲームにしかゆるされない法外な体験なのでは……
とりあえず、ねこもアイザックのように、これから何年もかけてDLC出してストーリーも拡充していくだろうから、これからの展開が楽しみですね。売上よくてよかったよ……
ストーリー中やEndless Miseryのさいあく実験を考えると博士は永劫罰されるべきだけれど、それと同時に、博士とステイシーのめちゃくちゃなハッピーエンドをずっと待ってる。
私がビーバーになる時
2026年の動物×環境ウルトラエンターテイメント!
(ざっくりあらすじ)
大学生のメイベルは、家の裏にある自然豊かな池が道路建設により爆破されそうなのを身を張った過激な手法で阻止しようとするが失敗。いろいろあって、池を守るためにビーバーとコミュケーションを取るため、ビーバーのロボに意識をインジェクションして森の動物コミュニティに入り込み、そこで「自然の掟」や様々な動物に出会う。道路建設計画をなんとか阻止しようとするメイベルの過激な行動で、人間も動物もてんやわんやに!!
とにかく楽しい映画でした。
現代の環境・問題意識を反映しながら、豊かなアニメーションがスピーディーかつパワフルに展開しずっと楽しい。サメとか鳥とかビーバーとかロボとか楽しいものが盛りだくさん。
主人公の幼少メイベルが開始一秒で共感をすっとばす過激派アクティビストなの、すごく笑いました。それでいいんだ。
ピクサーだから当たり前によくできてる作品だけど、ストーリーも各種描写も破綻を恐れない、前向きでエネルギッシュなところがよかったな。
ジョーズや鳥やライオンキングをはじめ、いろんな動物系ホラーやサスペンスやアニメなど既存映画でのおもしろ表現を、モダンな感覚でテンポよくオマージュしつつ、食物連鎖・捕食関係や人間との緊張感ある関係性など動物描写は、従来のピクサー・ディズニーにはあまり見られない表現になっていて、日本人としてはこちらのほうがしっくり来たかも。
ちょうど所用により環境規制関係の本を読んでいたので、問題意識もタイムリーに見られてよかった。「平成狸合戦ぽんぽこ」をオマージュ元としているということで、市民運動もの(市民じゃなく動物だけど)としての側面も見れたのが興味深かったな。ゴミ戦争とか公害問題とか、内外問わず実例も実績もたくさんあるし、このくらい過激なこといくらでもやってきたことでもあるから。
キャラクターも、映像にも、物語・テーマ的にも結構むちゃをするんだけれど、とにかくテンポがよく情報の出し方がうまいので、なんかこれでいいのかもな、という感情の落としどころに仕向けてくれたと思う。全体のバランスのよさが大事なテーマなので、子供向け映画として、前向き感とほどよい納得感が心地よかった。
以下、雑然としたネタバレ
(ワンクッション)
ローフ、いつかエレンに食われて友情を完結させてほしい。
主人公への共感ベースの物語じゃないのが、自分には納得感があってよかったな。最後まで特に成長もしないし。ほとんどメイベルに感情移入するすきがなくて、「アクティビスト」だからまず行動ありきで、とにかく話の展開がはやい!
メイベルは激しやすく後先考えないで行動に移すたちだから、親とも折り合いが悪くて、大学にも友達いなさそうなところがリアルでいい。共同体の和を乱し、全体効率を下げ、視野狭窄で、容易には共感しがたい、それでも不公正に憤る彼女の強い意志と行動もまた、あの街にとって必要なものだと思うから。
勉強して、筋は通ってるがめちゃめんどくさくて強硬な学識経験者になるとか、思想が近しい仲間を集めてプロ市民運動家になるとか、いっそ政治家になるとか、まあメイベルなりの人生があるでしょう。
博士やジョージや市長などえらい人みんな、なぜかメイベルを受け入れ好意的だから物語が成り立ってる面はあり、それは子ども向きアニメの都合のよい嘘でありつつ、独善的なまでに自分の考えを躊躇なく口にし行動に移していくタフなメイベルのことを、えらい人が気に入りがちなのはなんとなくわかるところもあるな、と思うバランスだったかな。出てくるえらい人、みんな絶妙にやばいところがあるしな。博士とか博士とか博士とか。
世界や自然やコミュニティなど身近な他者に対する連帯感の喪失、グローバルな流れに対する社会改善の不能感、社会への働きかけの不可能さによる自己不全感は現代に共通する気分として多くの映画に流れていて、その気分を反映して陰謀論を敷衍したり、無力感や不安をスリリングに見せていく作品が増えてるような気がしてるけど、こういう具体的な行動と実践により前向きに描こうとする映画が見れたのは新鮮で、印象よかった。同じ哺乳類というだけで、人間のけつもちさせられるキング・ジョージの包容力にだいぶ頼りすぎな作劇だけれど・・
ジョージ、いいビーバーすぎるよ。だからこそ、ジョージの治めるコミュニティがあのまま膨張してバランスを保てず瓦解しそうな危うさもあり、メイベルを入れたのかもなとちょっと思う。
アニメーションとしてはずっと楽しくて、サメも鳥も爬虫類も両生類もロボットもこわくてよかった!
強いて言えば、話の展開上、虫たちが相対的に不遇だったので、数と機能で圧倒する虫描写がもっと見たかったな。市長が母親を大事にして介護してたり市民ひとりひとりの名前を憶えていたり、どの王も怖いところと愛嬌があったりと、なるべくわかりやすい善玉と悪役を作らない作劇だけれど、芋虫のタイタスくんだけはプロットの犠牲者感が強かったし。
短くまとまって見やすいのはこの作品の美点だけれど、10分くらいの番外編とかあっても楽しそう。家の下にアリがコロニー築いて侵入してきたら、ホラー映画よりこわくてほんとうにやだな。
こちらのポッドキャストをネタバレまで聞いて、思ったよりへんてこそうな映画だな?と思って見に行きました。感謝!
ちなみにこれ聞くと、おばあちゃんとのエピソードは最初なくて、上から言われて後から付け足したらしい??家族との個人的な感傷じゃなくて、ガチの環境意識だけであそこまで行動してるほうが、観客の共感は得られないだろうけど、活動家としては一貫しててすごいね。
『私がビーバーになる時』は、ディズニー&ピクサーの最新作となる長編アニメ映画。日系アメリカ人の大学生メイベルを主人公に、市の道路建設計画が進むなか、思い出の地の自然を守ろうとする彼女の物語を描く。かわいい見た目でありつつかなり社会派の本作について、怒れる主人公の造形、『平成狸合戦
(おまけ)
開始前にトイ・ストーリー5の予告編が流れてきて、音楽と合わせて感傷的な気分になるわけだけれど、みんなが子供向けタブレット一枚にあたふたしているのは見ていてつらく、一方ビーバーの最後のエンドクレジットでは、人間も動物もみんな当たり前にスマホたぷたぷしてるのを見て、まあそうなるよねと思いました。
emoji。🦫🪵🦫🪵
Mewgenicsのうた
社会のはずれで庇護と管理と愛情からはずれた小さき者としてのねこ、あるいは、かわいくおそろしく気まぐれで愉快な複雑系としてのねこ、についてのメモ。
いきものを飼ったことがなく、猫のこともあまりよくわからなかったけれど、Mewgenicsをプレイしてはじめて猫って楽しい生き物かもしれないと思った。
Mewgenicsのへんてこであまりかわいくないねこたちを見ていると、むかし見かけた通りすがりの猫たちを思い出す。
空地にすみつき、きまぐれに通行人からえさを与えられて、その後どこかに連れていかれた猫の家族。首がなく、道路の血だまりに横たわっていた猫。ロードキルの猫。ペットショップでたまたま目が合った、売れ残りのまま大きくなりかけていたぶすくれた猫。道端で捕まえた鳥を惨殺していた猫。増える猫。
(なんかめんどくさいことになるねこ)
このゲームに出てくるねこの生育環境・繁殖環境はすこぶるわるく、しかもそれはプレイヤー自身が意図して生み出すように設計されている。
世界は強く残酷で、それに負けないためのねこを作る、優生主義的選別と差別と気まぐれがまかり通る地獄のような家を、私たちは作る(もちろんそうしないこともできる)。ねこの見た目と特性がどんどん異常になっていくことは、プレイヤーが盲目的に信じて実践する思想の異常さと重なる。それゆえに、強くてたのしいねこたちが生まれるのもまた事実だけれど。
正解のない短いラン、どんなに排除しようとしても生まれてくる特性や障害や負のミューテーション、方針の固定をゆるさないランダム性の強さ、途方もなく繰り出される要素の豊かさとその組み合わせの意外性。あふれるカオスとランダムネスに対処と方向性を与える経験と戦略性。確かな手触りを持つ音と動き。
最悪の家から送り出され、ランダムで豊かで楽しいランを繰り返し、きまぐれに力いっぱいに過ごして、家に帰ったりしんだりするねこたち、彼らの可能性と失敗を見ていると、通り過ぎて行ったあの猫たちの強さが少しだけでもわかればいいのにと思う。
ねこがつよくてたのしい!(まれによくしぬ)
なんでプレイヤーがそんな地獄みたいな家を作る羽目になる体験をさせられるのか、というのはエンディングやネタバレ見たうえで自分は納得したけれど、自分が(それが、ゲームの意図通りであったとしても)ちいさき者を痛めつける劣悪な地獄を作る側になるというのは、非常に人を選ぶ体験なのはそう。
テーマと描きたいことが強くあるからこそ設計されている体験だと思うけど、法外におもしろいゲームでなければゆるされない、納得させられない体験なんじゃないかと思う。だからこんなにおもしろいゲームになっているのかもしれないけれど。
ついでに音楽がめたくそ良かったので、楽曲紹介と歌詞翻訳した(いつものグレーゾーン活動)
Act.1は町の片隅で薄汚くて生命力強そうでどこか艶っぽく、Act.2は宇宙や地獄などいろんな世界観の広がり、Act.3は生死や強さなど抽象的な作品テーマを含みとする壮大さがあり、訳しててたのしかったのでよかった。
Chaosなどはストーリーの背景も示唆するので、公式他言語対応時にサントラも訳されるといいと思うけどどうなるんだろうね。
はじめに タクティクス×ローグライト×リソースマネジメント×きまぐれねこを掛け合わせた、予測不能で法外に愉快なゲーム「Mewgenics」。Ridiculonにより奏でられるMewgenicsの楽曲は、奇妙な世界観や登場人物たちを語り、歌い上げます。 直接にはほとんど語られない"
(めずらしく平和な一日)
Kevin (1997-2077)
自分とあなたのための言語
一風変わった言語解読・テキスト読解ゲームについて。
とりあえずクレジット見て、Earth-Back sideをある程度読んで満足したのでひと区切り。10時間程度。
難解・難易度高いと言われがちだけれど、相性しだいな印象。入門的言語解読ゲーム「トル―ビズの秘薬師」も完全クリアできない自分でも楽しく遊べたので。
概要・紹介
Steamレビューでわりと真面目に書いた。
他者を理解しようとするときに生じる余白やずれ、決して埋まることのない隙間を埋めようとする試みから生まれる普遍的なコミュニケーションの感覚を、独自言語を用いてゲームとして新鮮に再現しようとする、ふしぎで実験的な作品について。
とりあえずクレジット見て、Earth-Back sideをある程度読んで満足したのでひと区切り。10時間程度。 (概要) 主人公Kevinの人生を通じての友人との思い出、出会いや別れやそれらを通じて考えた愛や時間や人生についてのテキストをずっと読むだけのゲーム。 遊び方は、ひろい
感想
たのしかった!
オリジナルな象形文字を推測しながら読んでいくのが充実感があってよかったし、メモ書きしながらのろのろと読み解いていくスローなテンポも落ち着くし、勝手に読んで、採点を気にしたりしないのもよかった。適度に反復する、リズム感のいいテキストも好み。
ずっと探りながら読んでいく感じも、正解がないことも、自分の「テキストを読む」ことへの考えに近くて、体験として楽しめた。完全な理解も正解もいらないし、つまらないし、だから書いて、だから読みたい。
※編集して気づいたけど、これdarlingじゃなくてfriendsかもしれない。
このゲームから見えるKevin氏のやりたいことはものすごくわかりにくいけれど、なんだかばか真面目で真摯で、自分の考える愛とか時間とかの概念を国境や時間を越えてそのまま一生懸命つたえたいことはわかるので、あんまり無碍にしたくないような気にさせられる。
Kevin氏の人生や愛や時間や世界や友情に関するもろもろの思考ぜんぶは読みきれていないし、地球のどこかに住んでる一青年の思想をどこまで真面目に受け取るべきなのか、自分にはわかりかねるけれど、こういう考えをゲームという形で表現する人がいること、それを自分が遊べた体験はとても良かったと思える。
ぼそぼそした数字カウントアップBGMもなんか河原温ぽくてよかった。
29200までカウントしていく数字は、88年×365日でKevin氏の人生の日数をカウントしてるとのこと。いかにもKevin氏という感じ。
Kevinの生きた日数を、数字という普遍的(とされている)記号を用いて表しつつ、音声にすることでほどよい個人の温度が挿入される感じは悪くないと思う。たまにどもったり、歌ったり、飽きたり、ぼそぼそしていて、聞きやすくなくてぶっきらぼうだけど、それが人間としてのあたたかみ?ってやつという感じがしないでもない。
いわゆる近代芸術らしい、感性を置き去りにした、理念先行でちょっと陰気で頭でっかちなところが気に入ってるだけかもしれない。抽象的で概念的で要外部知識のわかりにくい現代美術風おあそびじゃないかと言われたらそれまでなんだけど、まあそういうことをぐだぐだ考えたりするのが好きなので、こういう仕掛けを見るとうれしいですよね。うれしくないですか?
かなり好意的な視点でレビューは書いていて、実験作としてけっこうほめたけれど、なぞの文字いっぱいの画面(赤字など色付き文字は自分のメモ書き)を冷静に見返すと、やっぱり怪文書を読んでいるだけなのかもしれない。
以下、ネタバレ?あり
ワンクッション
Kevinの独自言語の文法法則は英語ベースで、オリジナルの象形文字は漢字を思わせる。
英語ベースの言語解読ゲームって、結局英語の暗号パズルしてるだけかーと思うこともあるのだけれど、本作については、Kevin氏が中国を文化的バックボーンとしつつ今は英語圏で生活している、というKevin自身の人生を反映してるから、そういう言語を作ったことに納得感があった。
あと、Kevinで使われてる手書き文字と比較して、漢字って象形文字として圧倒的に洗練されているなと思いました。この感想は東アジアプレイヤーの特権ですね。
ところでエンディングってどうやって見るんだろう?やっぱり友達全員に会うのか?
ちなみに、今Kevin氏はベルリンに住んでいて、今日(2026/3/3)ベルリン版Kevinが出たらしい。PVと説明見た限りでは、肉体言語か数式かドイツ語ベースかわからないけど、かなり難しそう。気が向いたら。
Release the author, who is nothing but the player. Release the player, and restore the freedom once taken away. A three-game experiment in w
Kevin (1997-2077)はゲームに必要とよく言われる課題・報酬はほぼなく、全然わかりやすくないので、興味のない人には特におすすめはしない。正解もクリアも判然としない読むだけの代物で、ゲームである意味あるのか?と言われそうな作品でもあるけど、バグはないし、アンカーやペンや記録など便利機能を備えているし、追跡・調査・探索を行えるインタラクティブなデジタルプログラム作品として、Steamやitchというデジタルゲームプラットフォームで出して、そこでいろんな評価を受けていればそれでいいような気がする。自分は楽しかったわけだし。
作りたいゲームを作ったらいいし、遊びたいゲームを遊んだらいいし、送りたいゲームを投げたらいいと思う。それが遊びなんだから。
最後に、こちらのゲームはいのりさんからギフトでいただきました。本作をプレイする貴重な機会をくれてありがとうございます。
Kevin wants to show what his life would be and why.他用没人懂的语言写了一本书。 A language-deciphering game.
(参考資料)
IGFによる開発者Kevin Du氏へのインタビュー
Developer Kevin Du talks about exploring human connection and understanding through weaving a language and tasking players with figuring out
Mewgenicsといろどりの記録
Mewgenicsで科学のねこ「いろどり」が戦った記録を残しておく。
どうかしてるオープニングから。科学のねこの可能性は無限大。
※注意事項
以下、ねこの生命・繁殖管理+ねこが戦うタクティクスゲームという内容上、カートゥーン調にデフォルメされていますが、ねこの生死に関わる記述や、実在の先天性障害に関する記述があるのでご注意を。
2026年2月現在、日本語未対応作品ですが、非公式日本語MODを導入して遊んでいます。
ワンクッション・冒険に出かける
Mewgenicsは我が家で繁殖したいろんなねこが、冒険に出かけてターンベースタクティクスで戦い、お金と戦利品を持ち帰るゲーム。家に帰ったら、さらにアイテムや家の拡張やリソース選定をして、ねこの繁殖環境を作ることでねこが増えたり減ったりしていく。まだ序盤だけれど、タクティクスとしてもリソースマネジメントとしても、豊富な要素によるランダム性と戦略性が合わさって、予想できないいろんなトラブルや発見があって面白い。予想どおりいかなくて失敗しても、ねこだから仕方ないし。どんなことでも起こりうる倫理観のたがの外れっぷりはひとを選ぶけれど、非常に愉快なゲームです。
生まれるねこには、親の個体値のステータスや特性が引き継がれるとともに、バフやデバフ、ミューテーションや先天性の特技や障害がランダムで色々付くことがあるのだけれど、とあるランの合間に、ダウン症候群の個体が生まれました。
びっくりだけれど、統合失調症や強迫神経症など実在の症状もこれまでいろいろ出てきていたので、まあこのゲームならありうるか。
【子ネコのいろどりがうまれた!】
ダウン症は、染色体の減数分裂の際に異常が起こることで、染色体数が通常とは異なる数(人間なら23対46本。通常21番目の染色体が1本多くて3本あるため「21トリソミー」とも呼ばれる)となる、実在する先天性の障害です。症状は軽度から重度まで人によって異なりますが、認知機能(知能)などの発達に遅れが出ることが多く、特徴的な容貌を有し、性格はおだやかな人が多いと言われ、全体的にいろいろゆっくりです。
500人から1000人にひとり程度の確率で産まれると言われており、そこそこ人数はいて自分の身内にもいるのですが、フィクション作品での取り扱いは少なく、ゲームのなかでちゃんと文字として見たのは、自分はMewgenicsがはじめて。
肝心の本スキルによるステータスへの影響は「知力-8、魅力+7、体力+3」
スキル使用に消費するマナ回復量に影響を与える重要ステータス「知力」が大幅に低いのは痛いですが、「魅力」により初期マナ量はかなり多く、「体力」も高く、ステータス総合ではプラスでの調整。戦い方を工夫すればなんとかなるでしょう。
ということで冒険スタート!
とりあえず初期装備とステータス画面
説明画像にしっかり染色体と21トリソミーへの言及があって信頼できますね。素早さ高めなのを活かしてシーフ職にしたので、回避を上げるスカーフを巻きつつ、リボン(効果なし)と合わせておしゃれにしました。
運よくコインを取ると再行動できるパッシブスキル持ちだったので、遠距離攻撃と広い移動範囲を組み合わせ、敵と距離を置いて戦えるようにし、被弾は少なくするように調整。よくも悪くもたいした攻撃スキルは持っていないため、序盤でスキルを撃ち尽くしたら、シーフとしてお金集めにいそしみ、盤面をうろうろしましょう。
【お金を拾って、もういっかい移動しようとするいろどり】
知力が-1なので、道中のイベントで何がおこってるかはよくわからないけれど、魅力など他ステータスが高いのでとりあえず判定は成功!
よかったね。
【不審な食べ物を見つけたが、スキル判定に成功し、なにかよかったことが起こるいろどり】
一方、同じパーティーの回復担当クレリック(聖職者)のフェルメールは、非常におぞましいことになっている。
冒険(ラン)終盤のステータスと装備画面
強いアクティブスキルには恵まれませんでしたが、途中で追加されたパッシブの「ステージに残ったお金ぜんぶとる」が強く、シーフとして財政面でチームに大きく貢献してくれました。仲間に移動力を底上げするスキル持ちがいて、戦闘で有利な位置取りができたことも大きいです。仲間との相性にもめぐまれましたね。
【バックパックを背負ってリボンでお洒落してごきげんないろどり】
いっぽう、フェルメールは呪いにより額に赤い逆さ十字が刻まれ、邪悪な聖職者になりました。なんで......
【装備は聖書と翼とピースなネックレスと人の目玉】
最終ボスは洞窟の大蜘蛛
はじめて戦う相手で大変苦戦しました。子蜘蛛を量産して蜘蛛の巣でこちらの機動力を下げつつ、さらに小さい寄生蜘蛛をまき散らして手数を取らせる、大変いやらしい敵です。途中、大ダメージ要員のメイジと回復担当のクレリックの二匹がダウンさせられたうえ、寄生蜘蛛のせいで復活できないままはじけ飛んだときはもう終わりだと思いましたが、アイテムをがんがん積んでなんとかもちこたえ、最後にファイターのダブルパンチ(クリティカル)が正面から決まり大蜘蛛が爆散。
からくも初見で突破できました。
【このあと、白いねこ(クレリック)と紫のねこ(メイジ)がいなくなってしまう......】
ぼろぼろで帰ってくる2匹
2匹のねこを失うという大きな痛手はありましたが、初見ステージを突破し、たくさんの食料とアイテム、非常に多額の資金(120ゴールドほど)とともに帰ってきてくれたので、遠征隊としてはまずまずの結果でしょう。稼いだ金でさっそく食料箱を拡張しました。
リタイアねことしてお家でゆっくりお眠り。
(全体の感想)
特徴的なステータスからふだんとは異なるプレイングと戦略を求められましたが、あたらしいスキルの発見や立ち回りを学ぶ機会になって楽しかった。お金がいっぱい稼げたのもうれしい。
なにより、いろどりと一緒にふつうに冒険に行けたこと、そして家に帰ることができてよかった。そういうゲームがありうるのだと知れてよかった。
戦いに負けたねこ、大活躍したねこ、活躍しなかったねこ、ほどほどのねこ、家に入れなかったねこ、消えたねこ、まだ見ぬねこ、土管に捨てたたくさんのねこ、どのねこもいろどりと同じく、驚くほど多様な要素と大いなる偶然とひとさじの戦略が作り上げる、ひとの意図を越えたひとつの可能性。すべての可能性は起こりうるものとして起こり、だれもが等しく一匹のねことして生まれ落ち、だれもが等しく一匹のねことしてゴミ箱へと行き着く。
科学のネコ、それはきたなくてきまぐれで無窮の可能性を秘めた肉の営み。Mewgenicsでたくさんのへんてこなニャー、豊かにめちゃくちゃにかがやく生命の唸りを聞け。
わたしたちはどこまでも連なり続ける、悲惨で愉快な肉のなかに生きているのだから。
つまり、Mewgenicsは最高に楽しいってことです。
戦略的に繁殖して作り上げた究極の猫軍団を、ディープでチャレンジングなターン制アドベンチャーへと送り込め。『The Binding of Isaac』と『The End is Nigh』のクリエイターが送るこのローグライク戦術ゲームで、能力を選び抜き、アイテムを集め、世代を超えた遺
INDIKA
INDIKAについて説明するためのメッセージを書いたけれど、機を逸して送らないまま、下書きの底に沈んでいたのを見つけたので、供養しておく。
『インディカ』は、19世紀末の、宗教的ビジョンと厳しい現実が衝突する異次元空間のロシアを舞台にした、ストーリー重視の三人称視点ゲームである。ゲームでは、若き修道女が悪魔サタンという一風変わった仲間とともに自分探しの旅に出る物語を語っている。
本作はロシア・ウクライナ戦争を機にモスクワからカザフスタンに拠点を移したチーム、強大な体制に強く疑問を持ち行動に移した人々が開発した作品となります。
ロシア正教会という国家との結びつきも強い大きな力と規範を持つ体制下で神への信仰ポイントを貯めよう!というゲーム的な目的がありましたが、インディカは最初から教会が教条的に押し付ける神も教えも信じてなかったし、神器振りクリッカーで終わるシーンが示す通り、彼女にとってポイントは無意味で、ゲーム中での出会いと冒険を通してその無意味さに気付くための旅だったのかと考えています。
だから最後にインディカは悪魔(=信仰を捨てた者)として、自分の本性に向き合い自由になったのかなあと思います。それは、作った人たちの思いも重ね合わさっているのかもしれません。ラストのインディカはぼろぼろですが、傷ついてもしぶとく強かそうな人なので、きっと大丈夫でしょう!
ミルコとかイリヤとか、ちょっと危なく犯罪者っぽい男にふわふわと恋しがちなインディカの未来やいかに。
教会の説く信仰について無意味と説く一方で、INDIKAという世界において、神様はいるかもしれないしいないかもしれないと自分も思います。
マタイによる福音書 26:75 ペトロは「鶏が鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。
インディカは逢い引きしていたミルコのことを父親に問われたときに、三度「知らない」と言うことで、ミルコは殺されてしまうわけですが、これはイエスの弟子のなかでも弱く平凡な人間であり、イエスのことを三度否認したペトロ(のちにスーパーえらい聖人になります)に重ねられているエピソードとなります。
おまけのキリスト教豆知識でした。
「知らない!」って言ったばっかりに...
奇妙なゲームでしたが、超現実的な冷たい景色がきれいなのと、最後のスーパー徳ポイントタイムとマルクスは祈ってもポイントゼロなところがお気に入りです。
お気に入りスクショタイム
よく見ると増えていく、なんかこわい家族写真
祈ってもポイントくれないマルクス。宗教は阿片なんだって。
さむい!
年始のべびすて好きな配信の話
Baby Steps、いわゆる苦行ゲーにおいて配信文化は切っても切り離せないものなので、感想会のネタ帳も兼ねて思ったことをメモ代わりに残しておく。
苦しみを人に見せること、他人事だから笑えること、嘲笑と煽りと意地の緊張関係、トキシックで親密な内輪ノリ、誰かが見てくれているからできること。
自分もそうだけど、実プレイと配信を見ることに結構差分があり、その差も面白いので配信見てからプレイしても全然いいと思う。
LayerQ氏
男砕き:登頂
ついにこの世界へと足を一歩前に出すときが来た!Steamhttps://store.steampowered.com/app/1281040/Baby_Steps/X→ https://x.com/Layer_Q#インディーゲーム #アクションゲーム #心むしり
こちらの配信でクリアまで見て、エンディング???になって自分で購入したので、大恩ある配信。インディーゲーム紹介で有名なストリーマーさんなので、ゲームが上手い!
感想は素直で、アクションゲームへの理解が深く、ゲーマー向き。言葉選びに配慮があり、見やすいのもうれしい。
男砕きをえんえんと登り続けるうちに自己反省の弁が始まるの、『男砕き』配信を見る醍醐味だなと思う。中年男性と親和性が高いゲームでもあるし。
すもも氏
男砕き:階段→登頂成功
雪山踏破、2時間クリア達成
プロ配信者界隈でもそこそこプレイされてる作品だけど、雪山登った後もさらにプレイしていて、界隈ではたぶん一番やり込んでいる方。
Apexなど3Dアクションで世界ランクイン実績ありで、音ゲーで上位ランクを持っているなど、ゲームが非常に上手い。3Dアクションゲームとしての作り込みの評価コメントが参考になる。
視聴者と合わせて「階段使うのはメス」「オスなら男砕きを登らないと」などいかにもなコメントが頻出するのだけれど、内輪ノリとしては楽しそうで憎めない。なにより階段を登ること、落ちること、失敗すること含めてベビステをめいいっぱい楽しんでプレイしているのが見ててたのしい。あと、配信内で自分の万歩計ツイート見てくれたので贔屓目あるかも。
後半になるほどネイトのことすごくほめてくれるようになるの、味わい深さがある。
ベビステは流行りの「弱者男性」や「インセル」テーマものでもあって、このテーマだと映画やドキュメンタリーの界隈では破滅やかなりきつい自己反省・糾弾的な終わり方(最近だと「ジョーカー」や「ボディビルダー」など)、よくてノスタルジーとか過去の乗り越えで描かれがちなんだけど、ベビステはそういう袋小路をひとつ越えた可能性を見せてくれたのがよかったなと思ってる。
古くさい「男らしさ」を抱えたままのコミュ障でひきこもりでニート、という現代社会ではもっとも嘲笑の対象となるべきネイトのことが、ゲームプレイを通じて他人事から当事者となっていき、やがて彼を操作することがプレイヤーにとっても失敗の受容と安心と自己肯定に繋がる。べつにエンディングを迎えても、二度寝するぐうたらのままでなにも変わってもいないし、成長もろくにしてないけれど(自分はBaby Stepsを成長物語として語るのはなんかちがう派)、その驚くほど小さな変化がいちばん難しいし、そこから始まるはずだから。
ベビステは女性が象徴としてしか出てこなくて、インセルものに付き物な加害表現がないから(そこはすごくフィクションだなと思う)、嫌悪感なく、性別限らず見やすくなってるのかなと思う。「男らしさの挫折」がテーマと言うけれど、男性性やマチズモって男性だけが持ってるものでもないし。
年始に山頂登って初日の出を見るすももさんのこの動画に、Baby Stepsのいいところがすごく詰まってる。まじでBaby Stepsがすきなんだな……
どんつきさん
男砕き:階段
サムネイルがおしゃれ!
優しく、穏やかで、無理しないところがいい。やっぱり階段でいいんだよな。
ちゃるたぬさん
男砕き:登頂、雪山踏破、2時間・一万歩以内クリア達成
全実績達成、全フルーツ取得済み、各アイテム収集、各隠しダンジョン踏破、ラピュタ登頂(ストリーマーではおそらく世界初)
男砕きを2回目で登頂成功し、初回6時間でクリアしているベビステプロ
寄り道ややりこみ要素含めてベビステ遊びつくしてくれている。日本のストリーマーでは一番ベビステやり込んでる方だと思う(RTA界隈は除く)。最難関「見えない逆さまの塔」ことラピュタも20時間近くかけて登頂済み。偉大。
こちらの配信は、小さなコミュニティということもあり、コメントする常連さん含めて配信の雰囲気がとてもあたたかくて心地よい。配信見るだけ勢が多い他の配信と比べて、同じくBaby Steps遊びこんでいる人が結構いるのも貴重。
「ラピュタ」は男砕きの100倍は難しい本作最難関アトラクション。男砕きと雪山登っただけでBaby Steps踏破しつくした気になるのは100年早いという気にさせるやばダンジョン(自分は実物見てすらもいないけど)
ダンジョン見つけるにも、レアアイテムのサングラスを持ってワールド内探索を進めなければならず、さらにそこそこ難しい何もない塔を登頂してからがスタート地点。スタート地点から、つま先がひっかかるだけの逆さまになった塔を20分近く様々な超高度テクニックを駆使して登り続ける。一歩でもミスして落ちるたびに、何もない塔から登り直しで、サングラスも吹っ飛ぶので捜索しなければならず、紛失した場合はデータリセットも必要。雪山や男砕きはわりと足場が広かったり、巻き戻しポイントがあったりと温情があるけれど、このダンジョンに温情は一切ない。
男砕き、雪山、缶蹴りやフルーツ探索、その他さまざまなアスレチックを経て得たテクニックをさらに磨き上げないと、入口を越えることさえ難しい。さらに、ゲーム内探索、姿勢制御や足さばきなど各種物理演算の理解、操作精度、並外れた忍耐、失敗からの学習の積み重ね、Baby Stepsという作品を心底理解して実践しないと登頂は不可能。
最後の一歩(まさかの、かかと!)まで学び続けることが必要で、無茶なことこの上ない。なお、ネタバレだけれど、登頂しても報酬はなにもない。本作はフルーツや缶蹴りや雪山ジムなど、高難度チャレンジになればなるほど報酬がなにもなくなるけど、本当に何もない。登りたいから登るだけ。
クリアテイク前から配信をリアルタイムで見ていて思ったけど、ラピュタの頂上は「男砕き」や「雪山」とも違って、見栄や負けず嫌いや勢いや人気や他人の視線、いわゆる「配信ノリ」だけでは絶対に続かないし、たどりつけない場所になっている。
配信者さんが上手いことはもちろんだけれど、失敗を受け入れながら絶えず学び続けること、諦めないこと、好奇心を持ち続けること、穏やかに他者を受け容れること、男女限らずコミュニティのみんなが安心して競い楽しめる環境があること、そして何より配信者自身がBaby Stepsというゲームを心から好きで楽しんでいること。
Baby Stepsというゲームがなにを理想としているのか、その理想を体現している方だから、ラピュタに登れたのだと思う。
自分では決して見ることのできなかった景色を見せてくれて、本当にありがとう。
あまり追えてないけど、女性陣とか海外勢の配信も気になってはいる。
カットシーンで描かれる物語も当然素晴らしいのだけれど、それ以上に男砕きでの選択やクリア後の雪山登頂や寄り道要素の有無によってプレイヤーごとに受け取る体験・物語が全く違って、それでいいところがすきなので、いろんな配信見るのがたのしいね。
おすすめ配信があったら、お気軽にコメントください。
(おまけ)
一度も転ばないで男砕き・雪山登頂する海外動画。正気か?
A GHOST STORY
生者のための場所で見る夢
配信で見た。A24配給、92分。幽霊が静かな景色でずっとぼんやり立ってる画面がシュールでよい。台詞が少なく、象徴的で静かな長回しが多いのも自分には見やすかった。シンプルですこし恨みがましそうな幽霊の表情?もいい。
シーツ被った幽霊が所在なさげにうろうろしているだけで画面がずっとたのしい。満足。
(以下、ネタバレ)
見た目が好みだし、幽霊の話は結構すきなのでずっとちゃんと見ようと思っていたのだけれど、いざ見て見ると、持ってる死生観が違うからか、自分にはあまりはまらなかった。
最初のシーンの引っ越しする家にメモを残していくというくだりで、奥さんが過去とおわかれする方法を心得てる人だってわかるから、そりゃそうなるだろうね、という。ピアノをひとりで動かしてるのも、葬式帰りに不動産屋からのパイを無理やりにでも食べて吐いてるのも、つらくてもしっかり自分の人生を生きるために行動できる人だってことを念押しのように伝えてくれる。逆に夫のほうは、あんまりにも不慮のことで幽霊になった(仕方ない)し、当然いろんな思いや未練があるのだけれど、経験積んだから2ループ目でおわかれできてよかったね。遅延した未練とおわかれの話。予後が悪いケースだと、悪霊になったり10ループくらいは必要そう。
終盤で、開拓時代にいきなりワープして「家」と「芸術」のDIY精神のはじまりを目撃するところとか、文芸アメリカ映画っぽいなと思った。非言語的だけれど、画面や構成による伏線はかなりしっかり張っていて(自分で先延ばしにしたから、音楽という芸術も子供という子孫も『遺せなかったこと』が未練のひとつになってるとか)、文芸映画としてよくできているからこそ、自分にとって驚きがなかったのかな。ずっと、そういう考えならそりゃそうなるだろ、と思って見てた気がする。よくない。
どっちも抽象的で静かなA24映画だけれど、ファーストカウがはまってこちらがあんまりだったのはなんでだろう。こちらの方がより個人の想いに寄り添った話だとは思う。完成度はどちらも高く、どっちがいいとか悪いとかじゃなくて、好みの話でしかないけど。
結局、「たとえ無駄であったとしても、自分の遺したものを誰かに覚えておいてほしい。残り続けてほしい。」というメッセージにピンときてないだけかも。クリエイターの方ならそういう考え持つ人が多いのは当然だろうけれども。
病院のシーンでしずかにむくっと幽霊になるシーンすごくよかった!しずかな画面と音はずっとよかった。
勝手を言うなら、高層ビルのシーンでたくさんのシーツ幽霊が大量にうようよ出てくるのがみたかったな。町にはもっとたくさんの幽霊がいるだろうし、消される思いは一人だけのものじゃないはずだから。映画としてのピントがぶれるからそうしないのはわかるけど。自分が抽象的で普遍的な幽霊を見たいだけ。
Kentucky Route Zeroの幽霊たちが自分の思い描く理想の幽霊だったせいか、幽霊への理想が凝り固まって、幽霊ものへの評価が偏狭になりすぎている。でも、死者と生者の交点を表現するフィクションとして、射程の広さも奥深さもこれ以上のものはまだ見たことがない。
よくない!いろいろな幽霊を見ていきたい。
正月から反省を促される映画だった。
ストリンドベリ「幽霊曲」・イプセン「幽霊」「人形の家」
podcast「翻訳文学試食会」聞いてて、『整理されていないゴミ屋敷のような作品だ』とかなり厳しい評価だけど怪作と紹介されてて、ストリンドベリ気になるなと思ったので。
読んだあともういちど聞くと、話されているこの混乱がよくわかる。
学研版世界文学全集32「イプセン・ストリンドベリ」より(学習研究社、1979年)
ストリンドベリ「幽霊曲」 山室静訳
罪の清算?
よくわからない
後述のイプセンと比較しても非常にカオスで、物語の筋がしっちゃかめっちゃか混乱してつかみにくく、設定は突飛で、象徴性も時代を経てしまったor共感するのが難しくなったためか、描写がやたら濃いこともあって、今の自分には非常に読みづらかった。演劇に疎いこともあるかもしれない。演劇の形で役者が肉付けしてくれるともう少しなにかわかるのだろうか?表現主義だから舞台芸術と合わせて見ないと意味がないのかも?
とにかく家が終わってることだけは分かった。イプセンの作品もそうだけど、家が終わりすぎてて無理!となる。男女・親子関係は無茶苦茶でたてまえと欲望だけが支配してる、みたいな??
なぜかみんなが集まって、罪があったりなかったりすると死ぬ。
家庭に押し込められた奥さんがひからびてミイラになってるのは、象徴としては分かるけど、役名まで「ミイラ」にすることある??
ミイラ:(鸚鵡のように)かわいい鸚鵡ちゃん!おお、ヤコブがそこにいるの?クルルルル! ミイラ、口笛をふく。 ヨハンソン:おれもずいぶんいろんなものを見たが、こんなのはまだ見たことがないな! ベングトソン:まあね、家が古くなると黴が生えるし、人間が永く顔をつきあわせていてお互いに苦しめあうと、気ちがいじみてくるのさ。
登場人物たちや台詞に妙な迫力はすごくあって、時代を超えてもその迫力だけは受け取れた気がした。ここにある偏執的で錯綜した文章に、伝統的演劇との違いにかつての作家や演劇人たちは表現の可能性を見たのだろうか?今の自分にはもうわからないけれど。
Podcast内で「演劇のための演劇」「文学のための文学」としてストリンドベリの作品と同様に作品単体ではおもしろくない・意味がないと言われてるヌーヴォーロマンは、すべて明晰かつ意図的で本作のように混乱しているわけではないので、だいぶ違うと思いました!(ロブ=グリエ信者なので、作品もおもしろいと思ってるし)
同じくストリンドベリ「令嬢ジュリー」も同様に、最後に主人公の男(罪深いか誘惑されてる)がテーマらしいことを大仰に叫んで、女がなにかわめいて死ぬor自殺して幕、というのは昔らしい悲劇だなと思った。
イプセン「人形の家」山室静訳、「幽霊」毛利三禰訳
うまい!すっきり!読みやすい!
夫婦・恋人・親子というミクロな社会の中に生じる権力勾配、個人と社会の軋みという現代にも通じる筋書き、社会性も含みながら仰々しくなくエモーショナルな問題提起、描写は具体的で登場人物たちも共感しやすく、適度な象徴性により現代でも古びない。
ストリンドベリ同様に、「家」がもうだめ!ということを描いているとは思うんだけど、読み心地が全然違う。
テーマを鮮明に映し出す台詞回しも印象的で、読んでいて楽しい。
ノラ:お断りします。他人からはなにもいただくわけにはいきません。 ヘルマア:ノラ――おれはもうおまえにとって、赤の他人以上にはなれないのか? ノラ:(旅行鞄をとりあげる)おお、トルワル、それには奇跡中の奇跡が起こらなくては―― ヘルマア:その奇跡中の奇跡というのはなんだえ? ノラ:それはあなたもわたしもすっかり生まれ変わって、それこそ――いいえ、トルワル、わたしもう奇跡なんか信じませんわ。 ヘルマア:でもおれはそれを信じよう。どうか言っておくれ!ぼくらが生まれ変わって、それから――? ノラ:わたしたちの共同生活が、ほんとうの結婚になれたらですわ。さようなら。 玄関をぬけて出ていく。 ヘルマア:ノラ、ノラ!いない。行ってしまった。(一縷の希望がわきあがってくる)そうだ、奇跡中の奇跡が――?! 下から門の扉がしまって、錠のおりる音が聞こえてくる。 ――幕――
現代でも「人形の家」と似たようなテーマ・あらすじの物語は映画でも漫画でもたくさん見かけるけれど、束縛を自覚し振り切り、自らのために生きることを目指す人間としてのノラの魅力は、なお輝いて感じられるなと思う。ふつうに名作でした。
ストリンドベリとイプセンのどちらがよい・わるい、という単純な話ではないけれど、現代にも読まれ上演されるのはイプセンになるのは分かる。
世界文学全集収録ということで、解説や伝記が充実していてよかったです。
よくわからない、ぜんぜん嚙み砕けない翻訳文学を読んだという満足感はある。苦くて硬くてまずくてつかえて吞みこめないのが現実なので。
円城塔「コード・ブッダ 機械仏教史縁起」
仏教こそ壮大なSF
「知性あるものみなブッダへの悟りの道が開かれている、ならばAIはどうだろうか?」というSF思考実験
「悟りを得る」という仮説に基づく体系と思想の発展が仏教であるなら、教えを広める主体がAIであるか人間であるかという設定は些末な違いで、仏教の広がりと社会への影響そのものこそがSF的でおもしろい!
AI・機械が知性をもって存在する未来の世界において、原始仏教から上座部・大乗(特に日本の平安・鎌倉仏教)の思想の変遷がどのような形になるか翻案した思考実験がメイン。どの思想も古今東西その時代のスーパースター思想家・運動家をはじめ、いろんな巨大頭脳たちが人間の苦悩と問題を救い無効化するために築いた知識・論理体系の集積なんだから、おもしろいのは折り紙つき。
ハードル高く思える「仏教思想」を高品質なSF小説の形にしてくれることで、現代的でさらっと読みやすく読めるところがうれしい。
いろんな宗派の翻案がたのしく、座禅を模したハードウェアの作り込み・鍛錬で「悟り」に導かれる宗派とか、Google Map巡りで異界と交流する山岳派とか、生成AIとして生成物の華麗さと芸術性で悟りを目指す華厳など、出てこないいろんな宗派の妄想もできて楽しい。無限にできるやつ。
前半部分は2022年雑誌掲載のため、AIは情報が独立した一個の人格に近似した表現となっていて、近年の情報氾濫やSNSを中心とした情報のカオス化の現状と比較すると、すこし牧歌的な印象を受けた。後半の方はいまのAIのイメージに近いかも。現在進行形で発展・社会への影響が著しいテーマは、書かれたときに読んだ方が納得感が高いのかもしれない。
あとHAL9000が出てきた!
これだけでパブロフの犬みたいにうれしい。あと、自作ゲーム「The dog you pet is your dog」のVoid犬パートと同じ展開が出てきたのもうれしい。
最後、抽象の思想の敷衍の先に空と消えていくかというところで、そうはならずにギミックを活かしてぽつんと終わり、語ることがなによりも重いものとして残るところに、SFの『思想』ではなく『物語』であることの矜持があるような気がして、小説としてよかったな。
東京の2021年、そのオリンピックの年、名もなきコードの片隅に、こうして微かにブッダが宿った。そのコードは自らを生命体であると位置づけ、この世の苦しみとその原因を解き、苦しみを脱する方法を語りはじめた。
(以下、すきなところの引用)
人間の生存圏確保のため、宇宙開発・進出を認めるべきか否かの問いに対して、ブッダ・チャットボットいわく。
それは、 「拘りを捨てれば宇宙進出などはしなくともよくなる。人間はマンゴー林の中で出産を抑制しながら静かに暮らすことができる」 という教えであると同時に、 「体を捨てれば、経費は大幅に削減される」 という教えでもあった。 ブッダ・チャットボットは別段、生存の本能を否定する論者ではない。ただ、 「むなしいね」 とは嘆いた。むなしさの深さについては問わない。
色即是空。真実はただむなしい(p.276)
SFだしやっぱりこういう抽象化がいいよね。要点を凝縮した並列描写がお気に入り(p.332)
その意味でわたしは、自動経典作成プログラムが、無秩序の中から無限に生成していく経典を片っ端から眺めているのと変わらなかった。自動経典生成サービスはあらゆる有り難い経典を生成しえたし、俗情を満たすことに特化した教えを説くことができたし、想像の及ぶ限りの荒唐無稽なお話で耳目を引いて人の欲望を喚起することができ、もはや経とは思えぬような教えを生成することができた。 上座部が目指したように瞑想の踏むべき階梯を積み上げることができたし、 天台が目指したように国家を鎮護する理法を示すことができたし、 密教が目指したようにこの世を支える最新の理学を説くことができたし、 禅が目指したように目指すということ自体を無化することができたし、 浄土の教えが目指したように核心をただ一筋の脈路で貫いてみせることができた。 あらゆる新しい教えが説かれうると同時に、あらゆることがすでに説かれ終わっており、生成されていく仏典は過去の教えの変奏にすぎなかった。
ある時、コードが仏陀を名乗った。驚異の物語 コピーと廃棄を繰り返される存在として虐げられてきた人工知能たちは、機械仏教の教えにすがった。はたして、機械は救済されるのか?『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』円城塔
(おまけ)
自分は特定の信仰は持っていないけれど、キリスト教や仏教に教育段階で関わったり、信仰者の小説や解説の本を読んだり、曼荼羅やキリスト教美術を見たり、歴史を学ぶ中でキリスト教・仏教文化圏で作られた社会運動・文化運動を知ったり、観光で寺院・教会を訪れたり、生活の範囲で触れているなかで、宗教というものが担ってきた役割についてぜんぶ理解できなくても圧倒されるような感覚はあって、そういう経験が、FAITHにおける信仰や合理性を超えた魔術的な部分を、翻訳のテキストを通じて伝えることに少しでも役立ってたらいいんだけどな、と思うなどした。
鴻巣友季子「翻訳、一期一会」
ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」の翻訳などで有名な翻訳家の鴻巣友季子氏が、作家や翻訳家とお題作品の翻訳を行いながら対談を行う企画本。
本作は「翻訳問答」シリーズ3作目なので、ゲストも画家や有名人など変わり種多め。
「翻訳問答」シリーズ第三弾! 翻訳ってこんなに型破りでいいの? 各ジャンルの豪華ゲストを迎え、多言語を横断する翻訳合戦が開幕!
以下の感想は、素人がほかのひとのつくったテキスト・翻訳についてああだこうだ言うのがいちばん(無責任で)たのしい、という前提でお読みいただければ。
翻訳に正解はないけれど、十人十色にそれぞれのプロフェッショナルが真剣にテキストを読んで、日本語に変換していく過程と議論が読めるの贅沢で楽しかったです。
『×横尾忠則 BLOWIN’ IN THE WIND』
ボブ・ディランの有名フォークソングから。
芸術の普遍性を強く打ち出して意訳する横尾忠則と、原文に忠実な鴻巣友季子でこれだけ違う。
(原文) The answer, my friend, is blowin' in the wind, The answer is blowin' in the wind. (横尾訳) マイフレンド、答えなんかほっておけ 答えは風の吹くまま (鴻巣訳) 友よ、答えは風に吹かれてる 答えは風に吹かれてる
即興的な翻訳だからこそ、元の作品以上に翻訳する側の考え方が強く出た文章になっていて興味深い。時間かけて翻訳するとまた違った結果になりそう。
歌詞の象徴性・芸術性を語る横尾忠則の話は面白くて刺激的だけれど、翻訳論というよりボブディランの歌詞を素材とした自身の芸術論となっていて、当たり前だけど翻訳家というより、自分自身が作品を作り出す作家なんだなと思った。
(おまけ)
歌詞翻訳も趣味でたまにやるので(著作権もあるし外には出さないけど)、ちゃんとやるなら過去の歌や当時の資料・風俗いろいろ読み込まないとなんだけど、簡単に自分ならどうするかなと思って。
時代を象徴するポップソングは、作品単体で存在するというよりそこまでの流れや人気を支える受容側も含めた「現象」だと思ってるので、当時のベトナム反戦など理不尽な暴力や制度への率直で素朴な反抗をベースとしつつ、象徴的な歌詞を活かして、過去でも現代でも時代に対して不安でナイーブで繊細な若い人たちが共感できるような言葉がよいな、ってスタンスにするかなあ。
自分のポップソングの聞き方は近田春夫「考えるヒット」に大きく影響を受けているので、だいぶ偏り気味だけど。
(即興訳) 答えはさ、吹き付ける風のなか 答えは吹き付ける風のなかにあるんだ
Bob Dylan - Blowin' in the Wind (Official Audio)
『×多和田葉子 枕草子(英訳版から和訳)・おくのほそ道(ドイツ語訳から和訳)』
作家・翻訳家ということでふたりとも日本語が上手い!単品のテキストとして読みごたえ抜群なのがさすが。
多和田葉子の翻訳されたひとつひとつの言葉に重みと納得があるのあこがれるなあ。言語圏における文化の違い、語彙の違いなどなど話がひろがっておもしろかった。
『×ダイアモンド☆ユカイ ホテル・カリフォルニア』
伝説的ロック曲の歌詞翻訳
ダイアモンド☆ユカイはずっと多ジャンルのエンタメで活躍してるだけあって、翻訳する際に取捨されるものに対して、諦観と割り切りがしっかりしてるのがプロだなあと思った。ロックバンドとして、ロックの文脈と愛着を組み込んだうえで、歌としてのけれんみやダブルミーニングを活かした翻訳になってるのいいな。
鴻巣さんの翻訳のほうが意味がしっかり取れて文芸的なんだけど、「歌詞の翻訳」としてはダイアモンド☆ユカイのが、いわゆるロックの歌詞っぽくて読んでいて楽しかった。
(原文:一部引用) My head grew heavy and my sight grew dim I had to stop for the night (ダイアモンド☆ユカイ訳) 目の前はどんよりして 頭の中は重くヘヴィーだ 夜を止めてくれ (鴻巣訳) 瞼は重く 目の前が霞み ここらで一泊するしかない
いろいろ書いてるけど結局これなんだよな。
ユカイ:言葉は伝えるための道具ですからね。最初は。音楽はそれだけでなくて、むしろ楽しむためというか。 鴻巣:コミュニケーションばかりを目指しているわけではないですもんね。
『×斎藤真理子 風と共に去りぬ』
今をときめく韓国文学ブームの火付け役、『82年生まれ、キム・ジヨン』など訳書多数の翻訳者の斎藤真理子氏との対談
本職の翻訳者との対談だけあって、細かい言葉の選び方や文法の取り扱い方なども話題になっていて読みごたえがある。こういうのずっと読んでられますね。
斎藤さんの訳文(韓国訳からの重訳)はよい意味でわかりやすく、映像が浮かんできて、気持ちに自然と寄り添うような無理のない文章になっており、非常にリーダブル。口語表現も自然で、ドラマみたいな筋書きの「風と共に去りぬ」によく合って、読んでいてたのしかった。どういう層に届けるためにどういう訳文にしたいのかという思想がしっかりあって、それが技巧を通じて文章の形になってる感じ。
きちんと今の読者に届く文章になっていて、この方の翻訳がはやるのすごくわかる!という納得があった。
前作の翻訳問答シリーズの2に、作家の奥泉光や円城搭が出てるからそちらも読む!
あの名対局から1年! 今度の相手はてごわいオールスター小説家軍団! 世界の古典を新・名翻訳で楽しむ大人のエンターテイメント。
文フリ積読消化月間
まだ読んでないものから。
Padograph「周縁から内在へ アジア現代美術」
アジア現代美術の批評誌。東アジア・東南アジア地域の映画や小説やゲームがどんどん入って来るようになってきたし、流れも熱いし、文化的に近いけどあまり知らないなと思い、中国とか韓国とか日本の現代美術の流れをなんとなく知っておきたかったので。ほんとはちゃんとした専門書を読んだほうがいいのだけど、重いので雑誌でさらっと読めるのはたすかる。
作品によりそいすぎない、ぴりっと緊張感と距離感を保った文章たまに読みたいのでこういう批評誌がんばってほしいな。
以下、気になった記事
「日本現代美術の3つの指標 美術アカデミズム、サブカルチャー、政治」
たくさんの人が配置された方向性を示すグラフとベン図があると批評誌だ!といううれしさがある。妥当性がどのくらいなのか自分には判断つかないけど。
「ショーケースには何が入っているのか?」
台座とか枠組みとか問い直す文章を読んでると、現代美術だ!と思ってパブロフの犬みたいに嬉しくなりますね。何回も問い直していこう!
「わたしであるところの場所 VRChatでひとりで過ごすことについて」
いつかのインターネット、いつかのSNS、いつかのゲーム
わたしたちは観光者だ。時間を無化し、他人の夢を簒奪し、自分の夢のように語る。そこには自分以外のだれもいない。だれひとり。 目覚めている人たちのあいだでは、VRChatは現実になりつつある。
サ!脳接左派連合 奇想同居アンソロジー「何と暮らして?」
さらっとしっとりふしぎな短編が3篇読める。おしゃれな装丁も一口サイズのようなちょうどいい型もうれしい。
絵と暮らす 坂永雄一「夢野夏草の青の時代」
傷心の男が、ふと見かけた未来派風の日本画家の絵に取りつかれて、さらなる絵や絵の由来を探しに旅に赴く話。
たまたま読んでいた時の自分の気分と同調するような短編でとてもよかった。画風も内容も異なるけど、たまたま見かけた松本俊介の絵とか奈良原一高の写真がすきなのでシンパシーがある。絵の流派となる未来派の絵画の由来や蘊蓄が含まれているのもフィクションの絵がほどよくリアリティを増してよかった。
最後SFへの飛躍がありつつ、しっとり終わって短編らしい読み心地だった。
骨犬と暮らす 阿部屠龍「燃えない犬の日」
現代の事象をところどころ取り入れつつ、ライトですこし不穏で尖った読み口。
骨の犬もいいね!
影と暮らす 大戸又「ムーンアリー」
浮世離れした舞台と幻想的なガジェットがふしぎ系フィクションを彩り、上品で心地よく読めてたのしかった。
belfaste先生言行録
belfaste先生のSteamレビュー集。寝ながら読めておとくだね。
書くこと自体を楽しんでるような饒舌な文体がたのしく、Grim Dawn, Cult of the Lamb, FACEMINERの皮肉みが特にお気に入り。
よいレビュー読むとそのゲームがプレイしたくなる。The Roottrees are Deadも日本語対応してないし推理ADV積んでるのたくさんあるからいいかと思ってたけど、むかしインターネット探索ADV要素強いなら気になるかも。Hypnospace Outlawがとてもすきなので。
FACEMINERはほかにもお気に入りのレビュー・感想が複数あって、プレイしてないけどいいゲームだなと思ってる。日本語対応もしたし。人によい文章を書かせるクリッカー!
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