夜が見える
ただ泣きたくなるような、その元気もない、湿気の多い雨の日。一時的に帰ってきた彼は、また遠い地へ出かけていった。駅までの十数分の距離も、慣れてしまったさよならの挨拶も、またやってくるであろう無気力との戦いにも、少しだけ疲れている。空っぽな自分で、どうやって一日を生きていこうか。楽しみにしていたドラマの最終回も終わってしまい、分厚い小説を空き時間に読むことが今の過ごし方だ。雨の音を聞きながら、ページをめくる。
ようやく出せた小物金属、置いたまま手付かずの教材本、賞味期限を守れない冷蔵庫の食材。ちゃんとすることが今のわたしには、とてつもなく大きな努力目標で、想像しただけで終わってしまう。目の前に仕事があることで、なんとか自分に意味を与えられる。
彼を生きがいにしているわけじゃないと思いたいけれど、同じ部屋で暮らす自分とは別の生き物、という感覚は、なぜか私を安定させる。寝息を聞いているとゆっくり眠れるし、面倒な食事の時間も義務でなくなる。寝室の電気を消すじゃんけんで、子供みたいにはしゃげる。深く自分を見つめなくても生きられるからだろうか。沼に落ちてしまうと一人で脱出するのが難しい。転んでも泣いても手を貸してくれる人がそばにいてくれるのは、幸せなことなのだと改めて思う。












