【2016年秋冬NYコレクション ハイライト5】NYFWレビュー中編/ショー形式に「革命」の兆し レトロと未来感が交錯
NYコレクションの中盤では実力派やビッグネームが新作を発表し、トレンドの方向感が徐々に見えてきた。ポジティブで楽観的なムードは受け継ぎつつ、レトロ、ロック、ユーティリティー、フューチャリスティックなどのテイストが思い思いに打ち出されている。ファッションショーの形式そのものを一新する実験もNYモード界のチャレンジ精神を証明した。
◆アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)
「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」はマンハッタンに残るクラシックな教会を舞台に、あえて言うなら“洗練バッドガール”とでも呼べそうなストリートルックを披露した。ツイードやファーを使いこなし、タキシードジャケットやスリップドレスを混ぜ込んで、単なるヒップホップとは別物のリッチ感をまとわせた。生地選びやディテールにも上質への目配りを感じさせる。黒と白のストライプも利いている。スタッズやチェーンジュエリーはパンク風味を添えた。
レザーの硬質さとつやめいたランジェリーの女っぽさを交錯させた。黒をベースにしながら、ヘアリーなピンクのニット帽がアクセントになっている。ストッキングには太ももに「strict」「tender」といったタトゥー風スローガンを掲げた。マリファナの葉っぱ柄も不敵なムード。レザーアウターにはピアシングを施し、ハードな見栄えに。ボトムスの裾をギザギザにしたりほつれさせたりして動きを出した。古くからの軌跡を知る者にとってはパリの経験を経て、本来の持ち味に磨きをかけた手つきが一段と頼もしく映った。
フランス代表のスキーチームに着想を得て、「ラコステ(LACOSTE)」はレトロフューチャー感を漂わせたスキールックを街着として提案した。ケミカルな光沢を帯びたビニール地のアウターがどこかノスタルジック。何本もジップを走らせ、機能美と実用性を両立させている。アウターの袖と手袋(ミトン)がつながっていて、使わないときはミトンが袖にしまえるギミックも用意。使い勝手を重視する「ユーティリティ−」の流れと、健康的な「アスレジャー」の気分、さらに気負わない「フレンチシック」のムードまで響き合わせた。
ゲレンデで頼りになるニットのセーターをはじめ、ビニール仕立てのポンチョドレスや、トラックパンツのセットアップなど、ぬくもり感の高い装いをそろえた。起毛生地のほっこり感が目にもやさしい。スキージャンパーのとぼけた刺繍モチーフは古いテレビゲームから持ち込んだ。プレイフルのムードを映す遊びは、グラフィックスのゆるさがかえって愛くるしい。ニットのワンピースは朗らかな風情。太ももまで覆うサイハイのパテントブーツはアクティブ感を呼び込んだ。オーバーサイズやコクーンシルエット、ペプラムなどで量感を操り、着姿にリズムをもたらしている。
◆ヴィクトリア ベッカム(Victoria Beckham)
デビューコレクションで打ち出したアイコニックなコルセットルックに原点回帰した「ヴィクトリア ベッカム(Victoria Beckham)」。フロントローでは夫と子ども達が見守った。魅惑的な砂時計カーブを描く着姿を、ソフトボーンのビスチェが生み出している。コルセットはウエストをきつく締め上げる旧式ではなく、穏やかに支えて、たおやかさを強調する進化形だ。腰から下がバルーン風にふくらんだバブルスカートも登場。ボリュームのめりはりをさらに印象づけている。リブニット仕立てのワンピースは曲線美を際立たせ、レイヤードの立役者になっていた。
チェック柄、ハウンドトゥース(千鳥格子)、ストライプ(縦縞)を用いて、英国らしさをパターンで強めた。マニッシュな仕立ての良さが目に残るコートを羽織って、落ち着きを寄り添わせている。ストラップレスのベアショルダーや、バスト下カットアウトなどで、素肌美を引き出した。タイトなウエストとボリューミーな裾ゾーンとのアシンメトリーな量感がのどかな印象を与える。無造作な裾景色の巻きスカートも気負いを遠ざける。オレンジを利かせ色に選んで、「柄on柄」ルックを若々しく仕上げた。
「デレク ラム(DEREK LAM)」は上品なコートルックをたくさんのバリエーションで紡ぎ上げた。ピーコートを思わせるビッグシルエットのファーコートは朗らかなたたずまい。角トグルボタンのダッフルコートは変形させ、ノーブルに整えている。トレンチは細身でシャープな着姿に仕上げた。タートルネックやヴィクトリアン調立ち襟で首周りを華やがせた。肩口から二の腕にかけてふくらみを持たせ、愛らしさを加えている。全体に1960年代頃の懐古的なムードが漂う。
ワンピースやスカートは膝丈でそろえ、節度のある大人ムードを生んでいる。パンツはフレア裾でレッグラインを優美に包んだ。足元の主役を演じたのは、白系のニーハイ・ブーツ。足首周りに細いストラップとバックルを添えて、見慣れたブーツとは別格の気品を帯びさせている。ダイナミックな抽象柄もコートルックにエナジーを注ぎ込む。ニット、レザー、ファー、ベルベットなどの異なる風合い、質感を重ね合わせて、レディー感を濃くしている。
◆オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)
「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」はSF的なフューチャー感の濃いコレクションを発表した。トリビュートを捧げた相手は、映画『ブレードランナー』や『スタートレック』でサイバーな未来空間を作り上げた、伝説的な工業デザイナーのシド・ミード氏。メタリック素材やビニールでフューチャリスティック気分をまとわせるレベルをはるかに超えて、会場全体もスペースファンタジーに誘うような空間に仕上げた。宇宙服シルエットをリッチにアレンジしたかのようなアウターやセットアップもつやめきを帯びた。
ケミカル素材やベルベットなどのシャイニーな光沢がサイバー感を立ちこめさせた。ジップが長く走るボディースーツもテクノロジーとワークウエアを融け合わせるかのよう。先端技術をちりばめることによって、かえってヒューマンな雰囲気を引き出すという入り組んだ仕掛けだ。肩が張り出したフォルムは、宇宙船乗組員の制服を連想させる。流体金属を服に仕立ててまとったかのような、スーパーワイドパンツのセットアップは透明感とまばゆさを兼ね備える。ゴーグル風のビッグサングラスや、シルバーにきらめくアクセサリーも、装いにハイテク気分とワクワク感を呼び込んでいた。
◆ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE von FURSTENBERG)
ファッションショーのありようが様変わりする転換期に差し掛かり始めた。試行錯誤が続く「ランウェイ革命」を象徴するようなプレゼンテーションを、「ダイアン フォン ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)」が見せた。ミートパッキング地区にある本店・本社を使って開催したのは、バレンタインデーらしいディスコパーティー風のショー。指折りの人気モデル達がダンスミュージックに合わせて踊り、フレンドリーな表情を見せる。取り澄ました顔つきで細いランウェイを早足で歩くという一般的なショーとは違って、服の魅力をリアルに感じ取りやすいうえ、距離感も近い。しかも気持ちが浮き立ち、自然と写真や動画を撮りたくなる。
ディスコライクな舞台演出にふさわしく、70年代気分を帯びたジャンプスーツやゴールディーなロング丈ラップドレスが登場。レディーの風情を漂わせるボウタイ・ブラウス、メンズライクなニットジレ(ベスト)などもどこか懐かしげ。ダンスフロアに似つかわしい華やぎやファニー感がチャーミングな着映えに導く。ガーリートーンとコスチュームっぽさを絶妙にバランス。お得意のプリント柄もたくさんの種類を用意して、装いを弾ませている。ワイドパンツやキュロットも軽やかな足運びに誘う。全米ファッションデザイナー協議会のトップが披露した「ランウェイのないショー」はNYモードの未来までもプレゼンテーションしているようだった。