SDFRING17 劇団GUMBOの軌跡
2017年。劇団ガンボは、再びサンディエゴの地を踏みました。 サンディエゴインターナショナルフリンジフェスティバル2017に出演するためです。昨年は、最優秀コメディとフリンジ・オブ・フリンジの二つ賞を受賞した劇団ガンボは、今年もサンディエゴの市民やアーティストに喜んでもらえるパフォーマンスを届けようと強い意気込みで渡米しました。その10日間の記録をここに残します。
6月26日(月)。
今日は会場となるLyceumシアターは開いておらず、昨年の会場だったスプレックルズシアターのバックヤードを借りて準備作業。 歴史あるスプレックルズの劇場ディレクターの Gmork Marz と再会し、「うちの劇場でやってくれると待ってたのに」「ごめん、ここで希望を出したんだけど」と、嬉しい再会で Gmork がやたら楽しそうでした。
伝統あるスプレックルズは怪人が出そうな素晴らしい劇場ですが、ガンボは去年アワードを二つ獲ったので話題が高くて、客席数が倍のところに回されたのでしょう。
オフィスに挨拶に行くと、ゴミ箱の前で代表の Kevin Charles Patterson に遭遇。ひとしきりドクターペッパー片手に盛り上がった上に、Tシャツやら何やらプレゼントされたり、ショップで売ってる被り物をめっちゃ安くしてもらったりと至れり尽くせりでした。
6月27日(火)。
「Are you lovin' it?」初日。 公演直前まで妥協を許さない稽古が続く。急遽稽古場として確保したのは、劇場内の美しいロビーで事務所前。激しい稽古が響き渡るも、通常業務を行う劇場スタッフは文句をいうどころか、こちらの邪魔にならないよう、息をひそめるようにしている。アーティストへの敬意の表れだろう。
そして19時半、いよいよ本公演。 昨年100組のアーティストの中で、二つの最優秀アワードを獲得したガンボとあって、お客様が押し寄せ満員状態。そしてショーに先立って突如フリンジ代表のKevin Charles Patterson から心のこもったスピーチがありました。遠く日本から来たガンボへの期待の高さが伺えます。
期待されれば応えるのがガンボ。 リハーサルでの課題も嘘のよう、本番の舞台で突如芝居は完成したかのようでした。客席は常に爆笑で、途中全観客を巻き込んでの大合唱もおきました。 そして嬉しいことに終演後にお客様、特に同じアーティストからは「メッセージが素晴らしかった」との感想が多く寄せられました。エンターテインメントコメディに込めた社会的問題に対するアイロニーに満ちたメッセージはしっかり届いていたようです。
作品を見た多くのアーティストから、「ガンボと一緒にやりたい。オーディションを受けさせて」といった申し出が何件もありました。来年あたり、アーティストの来日が増えそうな予感がしますね。 また、昨年演じたスプレックルズシアターの劇場ディレクターのグモークは、「来年はうちでやってくれ。席数が少ないなら後ろの客席を使ってもいいじゃないか(フリンジ期間中、巨大すぎるスプレックルズは舞台上に臨時に客席を作った小さな劇場にしている)。もう僕からkevinには伝えたから頼むよ」とまで言ってくれました。 後ろの座席を開放したら座席数がとてつもなく跳ね上がるんですが、100年の歴史あるシアタースタッフからそこまで言われるなんて、本当に名誉なこと。グモークは素晴らしい照明家でもあって、仕事に誇りを持ったアーティストでもあります。アーティストとして、ガンボに共鳴した面もあるようです。
6月28日(水)。
オフ。 劇団ガンボがサンディエゴインターナショナルフリンジフェスティバルにきて初めてのオフ日。夕方まで寝て休養となりました。
夜前、まずはオフィスに。Kevin Charles Patterson と遭遇。昨日のお礼に始まり、素晴らしいサンディエゴのフリンジの将来のことについて有意義な会話も。またフェスティバルを支えてくれるスタッフへの感謝を込めて、ホスト宅で作ったお好み焼きをプレゼント。 オフィスであったアーティスト、スタッフ、お客さんからは、口々に昨日のガンボのショーを讃えられます。 劇場ディレクターの Gmork Marz に「あなたの一番気に入ったショーは何?」と聞くと「あなたたちのだよ」「え、グモーク見てないやん!」「いや、会う人会う人みんなガンボが素晴らしいって言うんだよ」 これは街で噂になった去年以上の盛り上がりかもしれませんね。
その後、ショーの観劇に。 Joseph Dasilva Travis Ti (The CIRCUS COLLECTIVE OF SAN DIEGO)のSPECIFIC GRAVITY へ! もう、この素晴らしすぎるショーに言葉を失いました。難民問題をテーマとしたサーカスショー。そこには個人のストーリーと社会問題がダイレクトにつながり、ショーのストーリーに昇華され、超人的な肉体と技を持ったアクロバットで表現される。込められたメッセージ、美しいヴィジュアル、そしてアメリカで難民を受け入れ学費を支援しようという社会運動へとつながる。個人の思い、芸術、社会がひと連なりになったものでした。
ひとしきりの興奮の余韻を抱えたまま、衣装を着替えたガンボ一行が向かったのはフリンジフェススタッフが主催のダンスパーティー。おしゃれーなゲイクラブですが、客の少ない平日水曜日はめちゃ安いということで、フリンジ関係者はチャージも無料。 アーティストやスタッフ、居合わせたお客さんと仲良くなって皆で深夜まで騒ぎました。 いろんな人が出会う、まさにBLEND IS BEAUTIFUL
オフなのに長い1日でした。
6月29日(木)。
「Are you lovin' it?」2回目。 ちょっとしたビッグニュース。TV番組「America's got talent」(スーザン・ボイルを輩出した番組のアメリカ版)からコンタクトがありました。まだなんとも言えませんが、ガンボのアートは国境を越え、メジャーからもチェックされるクオリティを持っていることが証明されたと思います。さてガンボはアメリカのスターへの道を歩み始めるのか!?
百戦錬磨のガンボは一回目の舞台を修正し、第二回もバッチリ盛り上げました。今回は、やや年齢層が高いお客様層でしたが、最後にはまたもスタンディングオベーション! 今回のテーマの一つに盛り込まれた「育児ノイローゼ」の事は年配のご婦人方から「わかるわー」と共感の渦。育児のしんどさは万国共通のようです。
また、他のアーティストのショーの観劇もしているのですが、サンディエゴインターナショナルフリンジフェスティバルでは、アーティストは席が開いていれば観劇はオールフリー。ボランティアは仕事時間に応じてフリー、ホストファミリーはVIPでフリーになります。 町の人がアートに関与することでアートを気軽に楽しむことができるし、アーティスト同士も刺激を受けることができる。そしてフェスティバルを町を盛り上げていく。本当に素晴らしいシステムだと思います。
それと余談ですが、お世話になっているホスト2家とも、キッカ(Carissa Z McMasters )は ジョン( Jon Ray )と登山に、ルーシーも用事があって週末は泊りがけでいなくなってしまうとか。「好きにしててね」って感じで、どんだけ信頼されているのか、もともとそういう気質の人たちなのか、結構びっくりしました。
6月30日(金)。
「Are you lovin' it?」 3公演目 。 「from Como to Homo」のアーティストLynne Jassem から、「知り合いのハリウッド関係者に、ガンボの舞台を薦めて、今日見に来るから、頑張って!」と嬉しい応援。こうやってアーティスト同士が応援しあうのもフリンジのいい所ですね。昨日はTVショー、今日はハリウッド。まだ何にもなってませんが、話が振られるだけでも、認められた感があります。
嬉しいといえば、ボックスオフィスのグッズ販売コーナー担当のアーティスト Sabrina Ingalls さんが、なんとガンボの缶バッヂを作ってくださいました!
舞台も三日目となって、研ぎ澄まされてきました。無駄が省かれたり、客いじりが進化したりと舞台は生き物ですね。
そして、この日は Gmork Marz が技術スタッフをするスペックルズ劇場で、ミッドナイトキャバレーなるイベント。アーティストが1人2分の持ち時間でショー(というか一芸披露)。MCは大道芸の名コンビ A Little Bit Off の2人。ガンボはスモーレスラーダンスで、ニンジャVSゲイシャVSスモーレスラーを披露。
そして我らがMr SKAは、なんだかよくわからないギター芸で客席を巻き込み舞台を席巻。そしてフリンジ代表の Kevin Charles Patterson も女装で登場! 芸達者ぶりを見せつけます。他にもマジックあり、スタンダップコメディあり、歌ありで、楽しい時間が過ぎました。
このイベント自体は、フリンジへのドネーションを求めたもので、 レインボーの傘には支援者からの寄付が集まりました。サンディエゴフリンジの大スポンサーで場所もスタッフも提供してくれているスペックルズ劇場への恩返しの意味もあるようにも思いました。ガンボも微力ながら貢献できたことでしょう。
7月1日(土)。 劇団ガンボの公演も4日目。 目まぐるしい日々、多くの人に会いましたが、ある種衝撃的なお話を教えてもらいました。それは行政の芸術支援に詳しいかたで、 「知ってましたか、日本の芸術支援の予算は、パレスチナの芸術支援の予算より少ないんですよ」
まじか!? あの戦乱の国、少ない領土を今も絶えずイスラエルから侵略され続けている国よりも、経済大国(若干過去形ですが)の日本の方が低いの!?
思い当たる節としては、ガンボの芝居への反応があります。ガンボのお芝居は非常に重いテーマを扱い、テーマが重ければ重いほどコメディ色を強くして笑いに包んで伝えます。 サンディエゴのお客様は、その笑いの面白さを讃えた上で、さらにメッセージが素晴らしいとそれ以上に讃え、共感できると興奮するのです。「一体どうやって、作っているの?」と尋ねられることが、アーティストからだけでなく一般のお客様からもあります。これは残念ながら、日本ではまずないことです。 それには理由があって、やはり日頃から芸術に親しんでいる環境がなければ、そんな審美眼は育たず、実のある質問も出てこないのです。市民が日常的に芸術に親しむ環境を作るのはアーティストの仕事ではなく行政の仕事でしょう。そして行政も予算がわずかなものでは、如何ともし難いはずです。これは日本全体の問題です。
そんなこんなで4回目の公演。この日は夜遅い公演なので、先立って昨年知り合った若きジェイコブがスクリプトを書いて評判が高い「The BANZA」と、なんとアーティスト4名のうち2名がイミグレーションで入国を許可されずに大変なことになってしまった南アフリカから来た「LUNCH」を見ました。「The BANZA」の若々しさと「LUNCH」のとてつもない重さ。
この日は、一度見たお客様が、お友達を引っ張ってまた見に来てくれた姿も目立ちました。フリンジはどのお芝居も1000円で見ることができるのでこんなこともできます。 ノリのわかったお客様に、一回目以上の興奮を与えるべくガンボは奮闘。ガンボのお芝居は生き物で毎回違う魅力が生まれるので、満足していただけたのではないかと思います。
終演後、ボックスオフィスで Kevin Charles Patterson と語らい、その後フリンジクラブへ。クラブでは、スタッフの女性のリードで突然ダンスパーティーが始まりました。最初は、皆遠慮がちでしたが、ならばとガンボが参戦。のの(Nono)との日米セクシークイーン対決に、ニッシー、Ryuto Adamson も加わると、クラブはダンスフロアになりました。
長い夜でしたが締めくくりは、いつものようにスプレックルズの技術ディレクターグ Gmork Marz と1日の終わりの語らい。これはガンボにとっても、そして彼にとっても大切な時間。この時間も明日で終わりです。
ガンボと、サンディエゴフリンジも残すところあと1日。果たしてガンボに今年のアワードは輝くのでしょうか?
7月2日(日)。
劇団ガンボもサンディエゴフリンジも最終日。
この日は、お昼からの公演。親しくなったアーティストの公演を見られるだけなんとか見ようということもあって、忙しい合間を縫い手分けして見に行きました。特に今回のサンディエゴの旅で僕らに一番笑いをくれたかもしれないドラァグクィーンalfe、本人も可愛らしい人だけど、そのショーは想像をはるかに超えて素敵なものでした。彼は骨と美学のあるアーティストですね。
そしてガンボの公演。最終公演はいつも疲労がピークで、どこか苦しみを抱えてしまいます。皆切れそうになるところを、最後まで集中力を持って演じ切りました。ライブ感覚で、舞台が咄嗟に変化するところがさすがです。
さて、アワード。 今年は豊作でどうなるか、少なくとも一つはアワード取れても、昨年二冠で今年も二冠は図々しいかと内心思っていました。 まずは「最優秀コメディ賞」を受賞。来るとは思ってましたが、強敵ぞろいだったし、さすがに嬉しい。また、周囲の反応がすごかった。ガンボを讃えるアーティスト、スタッフ、関係者が、一斉に舞台の劇中歌を歌い出したのです。これにはまいりました。もうこれだけでお腹いっぱいです。
そのまま夢見心地で、他の部門のアワード受賞で、次々と旧知のアーティストが受賞される様を見て、喜び続けました。いよいよ最後に、全アーティスト100組のウィナーは誰か。 「are you lovin' it?」 再びその名前が告げられた時の感動、そして再び劇中歌の大合唱。どれほどガンボ、そしてガンボのアートが愛されたのかがわかります。受賞したのは「アーティストピック賞」つまり、アーティストが選んだ最優秀作品です。彼らはアーティスト。どれだけガンボが好きでもアートがダメだと選ばないはず。そんな中で選ばれた賞です。
受賞後ガンボメンバーにはおめでとうの言葉やハグの嵐に加えて、いろんなオファーもあった模様ですが、また忙しくなるかもしれませんね。
実は、スケジュール的に来年来ることは難しいのではないか、そんな話もずっとしていたのですが、どうにか来年も来たいとガンボの面々も思ったようでした。 ありがとうサンディエゴ!











