ある新興SNSの終わり
Pebble(旧T2)が11月1日を以てサービスを終了すると発表した。
Pebbleの生い立ちは英語版Wikipediaに譲るとして、上手くいかなかった原因を考えてみる。
招待制の時代に𝕏のアカウントによる審査を要求した
まだ招待制だった頃、待機リストに登録するには有効な𝕏(旧Twitter)のアカウントを指定する必要があった。
これはT2時代から運営が言論統制をしいていて、問題のある単語が入力内容に含まれると投稿出来ないシステムになっていた。待機リスト登録時点で𝕏のアカウントを見る事でその人がどのような投稿を行うかを審査し、問題ないと判断されれば10日程で招待コード(実際は招待リンク)がメールで送られてくる。一方問題があると判断された場合はいつまで経っても送られてこなかった。Blueskyで中々招待コードが送られてこない事を既に知っていたため私は普段から使っている3つの𝕏アカウントそれぞれで待機リストに登録していたが、3つの内2つは上記の通り10日程で送られてきたものの、柵を廃した転生アカウントで現在唯一使用している3つ目のアカウントだけは投稿数が少なく判断に迷ったのか、2か月半経って漸く招待コードが送られてきた。
9月中旬にT2がPebbleに名称変更するのに合わせて招待制は終了し、誰でもアカウントを作れるようになった。
しかし蓋を開けてみれば、やっている事は招待制の時代と同じだった。最初に𝕏のアカウントの入力を求められる。単純な煩わしさは勿論、誰もが𝕏の代替を求めている訳ではない事をPebbleは失念していた。既に新興SNSはいくつもあり、とうの昔に𝕏のアカウントを削除してしまった人も大勢いたはずである。Pebbleはそんなユーザー候補を審査によって締め出してしまった。
プロフィールの登録が完了する前にアカウントが公開された
他のSNSではプロフィールが初期状態のままでもすぐに投稿する事が出来るが、Pebbleではプロフィール文と画像を登録しないとHomeページに遷移出来ない仕様になっていた。
これは私が2つ目のアカウントを登録しようとした時に起きた事だが、マルチバイト文字の処理に不具合があり、特定の文字列の組み合わせでプロフィール文を保存出来ない事態が発生した。既に画像の方は登録していたが、この不完全なプロフィールの状態で戸惑っている間に通知バッジの数値が上がり始めたのである。T2の時代は招待リンクを使ってアカウント名とメールアドレスを登録及び認証した時点で自動的に創業者3人がフォローしてくる仕様になっていたが、数値は4以上に上がっていた。つまり既存のユーザーは私のアカウント画像と、もしかしたら保存されていたのかも知れないユーザー名と所在のみでフォローしてきた事になる。これには恐怖しか感じなかった。
不具合について運営にメールを送っても1回目は相手にされず、1週間後に2回目のメールを出して漸く対処方法を記した返信が来た。と言っても「ラテン文字のみで入力して下さい」という、修正する気があるのか全く判らないものだった。実際、この不具合は最後まで解消されなかった。結局プロフィールは全て英文で書いた。
誰もが国際交流を望んでいる訳ではなかった
私がT2時代に使っていた当初から言語を気にせず誰もが気軽にリプライを飛ばしていた。機械翻訳すれば何とかなるため、私も特に気にせず機械翻訳を通してリプライをしていた。
しかし翻訳ボタンが設置されて、Google翻訳で翻訳出来る言語なら何でも翻訳出来るようになった事で状況は一変する。
従来の何倍もの頻度で英語やフランス語、イタリア語でリプライが来るようになった。しかもGoogle翻訳はお世辞にも精度が良いとは言えない。機械翻訳による誤訳に基づいた勘違いリプライが多発するようになった。それに対して「それは誤訳だよ」と言った所でその日本語を機械翻訳が誤訳すれば元も子もない。日本語でリプライするのは諦めてDeepL等を駆使して可能な限り正しいと思われる英文に翻訳してからリプライするよりほかなかった。
本来は楽しいはずの国際交流が機械翻訳の誤訳によって余計な負担を強いられるようになり、投稿頻度は減っていった。そして遂に我慢の限界に達した私は1か月半程前にPebbleのアカウントを放置した。誤訳を考慮しても気軽に出来る国際交流を楽しんでいる日本人はある程度いたが、私には無理だった。
終了の予兆
Pebbleがサービスを終了する予兆は1か月程前から既にあった。
まず唐突に招待コードが大量に追加された。大量のコードに対して「一番沢山招待した人を投稿上で表彰する」と言った。人が集まらないのでもっと呼んでくれという事だったのだろう。しかし結果はユーザー数を見ればご覧の通り、5000人程度しか増加しなかった。
2つ目はプレミアムハンドルに課された義務が結局行使されなかった事だ。アカウント名が8文字未満のアカウントは30日以上ログインしないと予め入力を求められる予備のアカウント名に変更されると規約には記されていた。過去に開発担当のミスでその時に送信されると思われる警告メールが全ユーザーに届いた事があり、1か月以上放置している私のプレミアムハンドルのアカウントには当然それが届かなければおかしかった。しかし優に1か月を過ぎているのにメールが届かない。試しにログインせずに直接プロフィールページにアクセスすると、プレミアムハンドルのままになっている。既に確立しているシステムが不具合を起こすとは考えにくい。これもユーザー数が足りず、規則を厳格に行使する事によるユーザー離れを防ぐのが目的だったと思われる。
3つ目は営利企業なら当然利益に結びつく施策をするはずだが、それらしき素振りが全く見られなかった事だ。国産新興SNSであるタイッツーを見れば解るが、運営資金を得るために様々な策を実施している。いつまでも投資家におんぶに抱っこしている訳にはいかない事は運営も解っていたはずなのにビジネスモデルを確立出来なかった。心地良い空間を作る事にばかり腐心して運営を維持する事を後回しにしてしまった事で既に取り返しのつかない事態になっていたと思われる。
Pebbleの未来
サービスを終了するという事は、新たな投資家が現れなかったという事だ。
やろうと思えばクラウドファンディングで運営資金を集める事は出来たかも知れない。しかし仮にユーザー全員がそれに賛同して資金が集まったとしても数か月の延命が限界だろう。もし実施後にサービスを終了したら、お金を持ち逃げされたと勘違いした人が批判の刃を向けて最悪のサービス終了になる。そうなる位なら潔く止めた方が後腐れなく綺麗に終われるはずである。
何処か体力のある企業が買収してサービスを続けてくれればと思うが、叶わぬ願いだろう。同様にサービス終了までに新たな投資家も望めそうにない。
さようならPebble。短い間だったけどありがとう。
開発担当がMastodonでサーバーを開設
Pebble Social
https://pebble.social/
サービス終了当日になって動きがあった。Pebbleで開発を担当していたGabor氏がMastodonにサーバーを建てた事が明らかになった。
先にBluesky上でも「T2/Pebble Pub」の名前でカスタムフィードが作成されたが、万一既にハンドル名が使われていた場合にどうやって本人と証明するのか問題があった。新規のサーバーであるこちらならそのような心配はほぼない。チェイン投稿出来ない点とAI投稿補助機能がない点を除けばPebbleは勿論、𝕏にも最も近いため機能面の心配もほぼない。
何故『ほぼ』と断ったかというと、pebble.socialにはmastodon.socialのような翻訳ボタンがないからだ。
翻訳ボタンはPebbleに於る国際交流の要となる機能だ。これがないと一々翻訳サイトを介すか、翻訳機能のあるMastodonのWebアプリを頼らざるを得なくなる。現状ではかつての気軽に出来る国際交流が成り立つかは見通せない。
それでも私はアカウントを作ったが、既にMastodonには雑記用に加えて目的特化のアカウントが複数あり、書く事が思い浮かぶかは判らない。「実験的」と断っている事もあり、安定した運営が続けられるかも疑問符が付く。しかもT2/Pebble同様の審査制を始めてしまい、再び敷居が高くなってしまった。安全を重視し過ぎる余り、交流を二の次と考えているのかと思われる恐れがある。
Gabor氏がT2/Pebbleについて振り返った記事がMediumに投稿されていた。
Tl;dr We tried to build a Twitter alternative from scratch, starting a few weeks after Elon Musk took over Twitter and laid off half the…










