この夏、ビワコオオナマズの呪縛から解き放たれた僕は南に向かいます。
その前に、マングローブジャックは釣ってみたい魚の筆頭としてずっと気になる存在ではあったものの、岩登り以外ではなかなか遠出しない自分の生活パターンから「いつか釣りたい」ポジションの魚でした。
その「いつか…」で済んでいたものが済まなくなってきたのはコロナのせいとも、おかげとも言えるけど、コロナ禍は自分の日常生活のみならず人生そのものにその意味と価値を問いかけてきたことは間違いありません。
何のために釣りをしているのか? 自分にとって本当の幸福とは何なのか? を考えた時、「いつか釣りたい」から「今釣りたい」になるのは必然の流れ。そうと決めたら即行動。行き先は家族も一緒に行ける石垣島にしました。
2022年8月下旬。石垣島は35℃を超える猛烈な暑さが連日続いていました。日中は友人クニヒコの案内でビーチ・ボルダリングするも岩が熱すぎて火傷してしまう(マジで)ってことで、シュノーケリングに変更。が、水中も30℃以上の完全なお湯で、高水温によって白化・死滅したサンゴを数多く目にしました。
少し涼しくなった午後、いよいよマングローブ帯へと入りました。ただし釣りをしない家族も一緒のカヤッキングのため、出船から帰船まで3時間の制限付きです。
釣り旅の冒頭は夢見がちなもので、それまでに散々膨らませた妄想に完全に支配されています。俺がはるばるここまで来たのは水面爆発を見るためなんだとサラサラ やタイニートーピードなんかをローテーションしながら遡上していくものの全く反応なし… まぁそうは簡単にはいきません。
30分ほど経ったころから徐々に正気を取り戻し「ジャックは根に着く」という話も思い出しながら、今度はクランクを軸に組み立て直しです。バスで散々やってきたカバークランキング。新しい竿の癖もわかってきて、次第にキャストも決まりだしました。
そして正にクランクが根を乗り越えた瞬間「バチン!」と音の出そうな明確なアタリが。アワセる間もなく竿先が水中に持っていかれたかと思うと、折れんばかりの弧を描きます。なんという速さ! そして強さ!
体験したことのない強烈なツッコミに二度三度と竿を絞られながらも、なんとか根から引き剥がすことができて無事ネットイン。初魚の初アタリに焦ってミスる絵面が一瞬脳裏をよぎっただけに、ここはホっと胸をなでおろしました。
初めて目にするジャック。まず目がいくのは、視力の良さと発達した脳神経をうかがわせる巨大な眼球。続いて広く尖ったヒレ。カッコイイ魚の要素が揃っています。
赤い縞模様の浮き出た立派な体躯をじっくりと観察しながら、例の「いつか」が「今」へと位相する瞬間に心から興奮するのでした。
ROD : WEC600ML “MERLIN” (Whiplash Factory)
LURE : MagohamaCrank 47MR