2022.02.16 / ロープウェー
・御茶ノ水。降りたのは友達がギターを買うのに付き合ったとき以来かもしれない。正月の楽器街。買ったのはカナダの木でできた白いアコースティックギター。ピックアップはあえて付けない。 ・今日は就活で使うテストを受ける。2時間前からスタバで問題を解く。 理系に進んだ癖に、計算はまるで得意じゃない。推論や集合の問題を解く度に、自分はあくまでただの「理屈っぽい人間」であって理系じゃなかったのだ、と後悔する。この調子のままもし落とされたら、というゾワゾワに襲われる。 ・などと思いながらも、勉強を進めるにつれてギアが上がるのが手に取るように分かる。ハンドルから伝わる振動でエンジンの出力を感じるかのような快感。 ・自分がスロースターターであることに最近やっと気づくことができた。 こいつのせいで今まで散々痛い目にあった。頭の立ち上がりが遅くて面接で全然喋れなかったり。翻って今日は上々。ようやく自分というツールが手に馴染んだ。 ・最後の最後で2問間違えた。時間がなく会場へ。やはりダメかもしれない……
・いざ解いてみれば意外と出来が良かった。大事なのはやり切る前に不安がりすぎないこと。一旦頭を休めたくなって、駅近くのカフェを調べた。神田明神の近く。行ってみたら店は鳥居の内側で、神田明神がすぐ見える場所だった。参道の奥が明るい。異世界への入り口みたいな、そんな赤い光。
・手水で清め、門で一礼。入ると、参拝客は皆、端を歩いている。見上げると高層ビルが遠く、神社の空は周囲から切り取られたかのように広い。境内は都会から隔絶された紛れもない異世界だ。 ・賽銭箱まで進む。一円玉以外で、最も安い小銭を二枚投げ入れた。 五十五円、なんともいえない数字。二礼、二拍手、そして目を閉じる。
・昔から願い事をするのが苦手で、明治神宮で書く願い事を白紙で出したことがある。小銭を放る寸前まで願い事を探していたが、思い付いては消え、とうとう何も浮かばなかった。 ・それこそ「就活が上手く行きますように?」......それくらいが無難なのかもしれないが、どうしても神頼みする気になれなかった。
・この世の全てはビリヤードで、最初のボールが打たれた瞬間に結末が決まっている。いつからかそう考えるようになった。哲学科に進んだ高校の同期にこれを話した時は「観測できない事象を仮定する必要はない」だの「その考えは映画の中の人物が自分で映画を見ているようなものだ、矛盾している」だの言われたが……今更真偽とか是非に興味はない。ただ、「全ては決まっていて、受け入れることしかできない」という、「覚悟」と呼ぶには軽薄で「諦念」というほどネガティブではない、消極的で浮遊感を伴う感覚の中で生きている。
・未だに思い出したくないような出来事もある。口にすべきでなかった言葉を口にしたこともある。伸ばすべき手を伸ばさなかったこともある。しかし「言葉を飲んだ自分」も「手を伸ばした自分」も絶対にあり得なかったことだ。私は弾き出された球に過ぎず、自らの行方を知らぬまま転がり続ける。
・ceroの「ロープウェー」という曲が、ふとそんなことを歌っているように聴こえたことがある。地を這わない乗り物に揺られる浮遊感。行き先は決まっていて、しかしそれは霧に覆われ見ることができないし逃げることはできない。けれど、何が起きようと、全ては等しく通り過ぎて、霧の中に消えていく。
"Everything is gone to the foggy outside やがて人生は次のコーナーに 人生は次のコーナーに"












