かなしき女王
19世紀スコットランドの文芸家、フィオナ・マクラウド(ウイリアム・シャープ)を知ったのは、10代後半のころ、尾崎翠『こほろぎ嬢』を介してだった。 当時は筑摩文庫から復刊される前でまず手に入らなかったものだから、図書館で何度も借りて、神秘的で仄暗い世界に震撼し、よく知らない世界の果ての地に思いを馳せ、その情景を目の裏に浮かべてみたものだった。 借りる人が少ないのか最近では図書館の書庫に移動されてしまい、装画の美しい女王の姿を眺めることも少なくなってしまっていた。 数日前、アイルランド文学が充実した古本屋さんを見つけた。 ここならお目にかかれるかと期待したものの、残念ながら少し前に売れてしまった後だった。 取り立てて手元に置きたいと願っていたわけではなく、古びた本をその都度図書館から借りればいいと思っていたものの、手の中をすり抜けていったものは追いかけたくなるもので、帰宅後amazonで検索してみたらあっさりと在庫が見つかった。しかもバーゲンブックで。 復刊されている文庫版では現代仮名遣いになってしまっているようだけど、旧字・旧仮名遣いは、間違いなくこの本の魅力の一つ。 大正時代の歌人・松村みね子氏の美しい名訳は、旧仮名遣いにより流麗さが増す。 同作者のケルト民話集を訳した荒俣宏氏をして、その救いのない昏さに押し潰されそうになり何度もペンを置いた、というほどの重いアイルランド民話をベースにした短編が13話収録されている。 どんよりとした暗さが漂う夜の海辺で、一筋の月光が雲間から射し込むのを見上げるような幽玄さ。 狂おしいほど哀しいのに、酷く美しい。 ずっと手元に置いておきたい一冊。















