『幽かなスリル』出版記念展 IV 木下理子「粒子の運動」 “faint thrill” Book Launch Exhibition IV Riko Kinoshita “Motion of Particles”
会期: 2025年10月26日(日) - 11月17日(月) 会場: BO/OK 住所: 奈良県奈良市東城戸町28 協力: 森山安男、明津設計、加藤文明社
photo: Yuki Moriya (@moritotani)
『幽かなスリル』刊行を記念する展覧会として、木下理子の個展「粒子の運動」を奈良のBO/OKにて開催いたします。 — ある日森山さんのお家に遊びに行くと、金魚の水槽がなくなっていた。 なくなるとは、見えなくなることと同じだろうか。私には、金魚はみえなくなっただけで、微細な粒子となってまだあの空間を回遊しているように思えた。多分、私の知らない「みえなくなったもの」があの部屋にはたくさんある。生活空間のなかで作品を観せるということは、そういったものの気配を、いかに消し去らずに、共存するかという試みでもある。 (木下理子) — 美術作家の木下理子は、太陽光による鉄塩の化学反応によって印画されるサイアノタイプ、あるいは柔らかで軽い金属として卑近な素材であるアルミホイルなどを用いて、周囲をめぐる事物や環境に呼応しながらその時空間に流れるモメンタムを軽やかに捉える立体的な制作をしてきました。 本書は東京・蒲田のとある集合住宅「森山邸」と作家との交流から生まれた展覧会を記録し収めた書籍です。 光の溢れる森山邸の多幸的な時間、西沢立衛設計の分棟式住宅の家主である森山さんの美しい暮らしや営みを拠りどころとするようにみえながら、木下はその家に漂う見えない側面にも焦点を当てたかったと述べています。 「幽かなスリル」と題された本展は、その名の通り静的で動かない環境を念頭にした展示ではなく、この家に育まれる微かな震えに反応していました。人が生きて暮らす中で堆積するのは目の前の事物よりも見えない日々の時間であり、そうした中で人も空間も物質も束の間に息づいて、奇跡のように巡り合う瞬間があります。20年近く毎日のように森山さんによって配置換えされるオブジェや、蒐集されて積み上がった本やレコードも、そうした森山邸を満たす震えの一つでした。 そうした邂逅の喜びと、それを裏打ちする儚い生の哀しさに照らされながら、9日間の展示のなかで作品は家々の木の葉を揺らす風と共に密やかに揺れていました。 物質と非物質の狭間で粒子が現れては消えていく。その流れの中で制作や作品も飛距離を伸ばしていきますが、この運動の中に書籍が作られる営みも含まれるのかもしれません。インクが紙の肌理に刻まれたとき、言葉やイメージは物質化されることで、不在でありながらその確かさを強めていきます。 木下は展示があるたびに、ついえてしまう作品や展示へと繋がる断片とも言えるエフェメラを制作してきたことでも知られています。 今ここに在る運動を次に繋ぐために本は編まれ、その一冊一冊もまた粒子のように世界へと散り散りになっていくようです。 本展ではアルミニウムを用いた新作インスタレーションと、本書の印刷を担当した加藤文明社の特別協力のもと制作された木下のプリントを展示いたします。ぜひご来場ください。
https://oarpress.com/faintthrill-book/












