チベット・フェスティバル
長野の会場となる西方寺は、善光寺の門前にある。善光寺様はことし七年に1回の前立本尊のご開帳の年なので、関東近辺の方は長野でご覧になるのも良いかと思う。
ここで前回のご開帳の年の思い出を語りたい。 2008年は北京のオリンピックの年であった。 2001年に北京でのオリンピック開催が決まった時、国際社会は中国政府に、報道の自由度をますこと、人権状況の改善、チベットについては亡命政府との対話などを申し入れた。しかし、それらがまったく改善をみないまま、時間だけが過ぎていった。そこで、2007年に、ドイツ、カナダ、オーストリアの首相がダライラマと公式に会見し、とくにアメリカはダライラマにゴールドメダルを贈呈するなどして、中国政府に亡命チベット政府と実質的な話し合いをするように圧力をかけた。
しかし、これらを中国政府はスルーし、さらに少数民族、カトリック教徒、ジャーナリストたちをより厳しく取り締まった。そして、聖火リレーを世界中の主要都市で行い、さらにはヒマラヤの頂上にまで聖火をあげる計画をぶちあげたのである。ようは、中国にとってこのオリンピックは、国威発揚の場でしかなく、人権改善とかの普遍的な価値を実現する契機にはならなかったのである。
このような状況の中で、3月のチベット蜂起記念日がきた。この日行われた僧侶たちの平和的な抗議デモが、中国政府によって暴力的に弾圧され、それに怒ったラサの市民が暴徒化し(3/17)、それが東チベットの各都市に飛び火し、いわゆる2008年チベット蜂起が起きた。
中国政府はチベットの成人男性を予備拘束し、検問をはりめぐらすなどして、情け容赦なく取り締まったため、世界中から非難の声があがった。結果、ロンドン、パリ、サンフランシスコで行われた聖火リレーは中国政府へ抗議を行う人々で騒然となった。このリレーは中国国内に中継されていたので、中国政府の面子は丸つぶれになった。日本においては当初善光寺様が聖火リレーの出発場所になっていたが、辞退したため、リレーの出発地点はただの空き地となった。リレーのスポンサーも次々と降りてナシとなった。
危機感を感じた中国人たちは、聖火リレーの当日バスをしたてて長野に集結し、リレー当日、普段は静かな市内は大量の中国人と五星紅旗で真っ赤に染まったのであった。この際、留学生組織が長野へ集結するようによびかけを行い、華僑のお金持ちがかなりの寄付をしてバス代を支援し、さらに、中国大使館は旗などを寄付した。
『朝日新聞』2008年05月12日 「中国人留学生大量動員は華僑の寄付 本誌記者が見た実録・長野聖火リレー」
(前略) 動員目標は2千人だったが、当日は5千人近くが集まったという。国内に登録された中国人留学生は7万人強。単純計算で14人に1人の割合だが、入国後、所在不明になる留学生もいるから、実際の動員の割合はもっと高くなるだろう。 なぜ、ここまで大量動員できたのか。関東地区の留学生なら参加費が2千円で済んだのが大きい。東京-長野間の夜行バスは通常、片道でも3千円前後。李会長によると、差額分は華僑系企業による寄付金で賄われたといい、中には今回の聖火応援ツアーのために100万円を寄付した企業もあった。中国当局が資金援助したという報道もあったが、大使館側はこれを強く否定。代わりに「応援の意味を込めて」(中国大使館)と、中国国旗や五輪旗を提供したという。(後略)
中国大使館は資金援助については強く否定したというが、大使館は留学生組織を掌握しているため、ここから勧誘がきた時点で、政府の支持ありとみて留学生は動いているわけだから、政府の関与がまったくないわけではない。また、留学生以外でも手弁当でかけつけた愛国者もいたであろう。愛国は自分と自分の国家しか見えなくなる麻薬なのだ。
ついでに言えば、組織もなにもなく自然意志で自腹でやってきた数少ないチベット支援者たちは、季節外れの寒さにふるえつつ小さな公園に集められてそこから出るなと日本の警察にいわれたのであった(笑)。
あれから七年。時のたつのは早い。
チベットの状況は微塵も改善しないどころか、悪化の一途である。国境の取り締まりがきつくなって亡命者は激減しており、行き場をなくしたチベット人の抗議の意は焼身抗議という形になって現在まで続いている。
話をチベット・フェスティバルに戻そう。
今回チベフェスの長野会場となる西方寺は、チベット研究者の金子英一先生がご住職をしていらっしゃる。そのため寺内にはチベット式の金銅仏が祀られ、その背後にはチベット様式の極楽が描かれている。善光寺様もこの西方寺さまももちろんダライラマ法王が巡錫している。
また、西方寺様の境内には、今回のフェスティバルにあわせて、チベット廻向柱がたてられているのもみどころ。オリジナル記念品としてミニチュアの「幸せの仏塔」、「経輪ストラップ」などが販売されているのでマニアの方どうぞ。
http://saihouji.blogspot.jp/
七年に一度の善光寺様のご開帳は5月31日まで。善光寺の裏山の麓にはチベットがこの世から消えた直後の1960年代に日本にやってきた三人の有名なチベット人たちの記念の仏塔もたっております。あわせてご覧ください。
白雪姫と七人の小坊主達 あれから七年(チベフェス余聞: 2015/05/04(月)











