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SHE'S『プルーストと花束』
2017.1.25 Release.
1st Full Album『プルーストと花束』
1.Morning Glow 2.海岸の煌めき 3.Stars 4.Say No 5.Tonight 6.グッド・ウェディング 7.パレードが終わる頃 8.Freedom 9.Running Out 10.Ghost 11.プルースト
http://she-s.info/
現在地という名の過去を踏みしめて
SHE’Sのメジャー1stアルバム『プルーストと花束』が遂に産声を上げた。メジャーデビュー後もコンスタントにシングルをリリースしていたことを考えれば、「待ち侘びた」という表現はそぐわないかも知れない。しかし、2ndシングル“Tonight”で見せた彼らの新たな表情に、次の一手への期待は膨らむばかりだった。そして今作はその期待以上のアンサー。普遍的なポップネスを楽曲に込める才気はそのままに、音楽的ルーツを彼ら「らしさ」として昇華した楽曲の数々。そして井上竜馬(Vo&Key)が綴った過去への旅の軌跡と歌声の変化。――そのどれもが、SHE’Sというロックバンドを紹介するには最も素晴らしい作品を生んだ。
まず器となるサウンドの面から言うと、フルアルバムにふさわしい非常に幅の広いものとなった。彼らの最も強い音楽性の柱となっているMaeなどのピアノエモからの影響は、必殺技として“Morning Glow”などに発露。その他にも様々なルーツが今作には滲み出ている。“グッド・ウェディング”はイントロの鍵盤が鳴った瞬間から、「Daniel Powterかい!」と叫びたくなるようなポップソングとして成立。木村雅人(Dr)のビートと広瀬臣吾(Ba)の歪んだベースがいつになくどっしりと構えた“Say No”は、The 1975が持つ音像の美意識とColdplayのシンガロング要素にハードロック的手法のリフとギターソロをぶち込んだ、実は変態的な仕上がりに。そして“Running Out”に見え隠れする細美武士(the HIATUS)やWeezerと言ったポップパンクへの傾倒――挙げればキリがないが、様々な音楽的ルーツを飲み込んで、今までで最も広い音楽性を提示している。
その中で見えてきた彼ら「らしさ」とは何か。それは原曲が持っているのであろうイメージのど真ん中から、「ズレ」が生じる部分なのだろう。先ほど楽曲に滲み出る様々なルーツを挙げたが、そのルーツをトレースするだけで彼らの楽曲は終わらない。最もわかりやすい例を挙げれば、服部栞太(Gt)のギター。例えば今作リード曲となっている“Freedom”は、ポップパンクやピアノエモのニュアンスが香り立つ楽曲だが、明らかにハードロックの影響下にある(はっきり書いてしまえばVan Halen感満載の)ギターがAメロから鳴らされる。各々のメンバーが持つバックグラウンドが、井上の生んだ原曲にある程度の自由度を持って対峙するからこそ生まれる「ズレ」――それこそが彼らのサウンドの「らしさ」と言える。これはフルアルバムというヴォリューム感があるからこそより鮮明となったことであるし、そもそも様々なロックバンドのルーツが見える音楽というのは決してネガティヴなことではない。そのようなルーツを経て、彼ら自身も「ロックバンド」として存在していこうとする、意志の強さを改めて証明することに繋がるからだ。
そして冒頭で挙げた、“Tonight”以降に起きた変化に触れていきたい。服部の音作りに新たな空間系のニュアンスが加わったことにより、過去最高レベルに柔和なサウンドスケープを纏ったこの楽曲。しかしサウンド以上に最も注目すべきは、井上の歌声だ。彼は、サビのメロディラインにおいてハイトーンを張って歌い上げる方法論を多くとってきた。しかし、個人的には井上の歌声の「美味しい」ところは、少し低い音域かつ力感の抜けたヴォーカリゼーションにあるとずっと感じていた。彼の歌声において最も特徴的な部分は「柔らかさ」。低いキーにおいて情感を持って歌うことを不得意とするヴォーカリストは実は多いが、井上は低い音域で倍音を含んだ柔らかな歌声を放つことができる。全体的にキーは抑え目に進行し、サビにおいても肩の力が抜けた彼の「美味しい」歌声と柔和なサウンドスケープが手を繋いだ“Tonight”――この方法論を彼が掴んだという事実は、今作全体に大きな作用を生んだ。
事実として今作は全体的にキーが下がり、井上の歌声が柔らかに響き渡るものとなった。その歌声は、今作のテーマであるプルースト効果(あるきっかけによって自然と奥底に眠っていた記憶が呼び起こされること)と非常に相性がいい。唐突だが、普段目にする映像よりも少ないコマ数であるが故に、脳内で自然と足りないコマを補完しながら観る「映画」は、通常の映像よりも想像力を喚起すると言われている。つまり、人が創作物に想像力を働かせるには程よい余白が必要なのだ。元々井上は英語のリズムで日本語を歌うため、メロディに独特の余白がある。それに加え、彼が今作で披露した柔らかな歌声は耳にスッと入ってくるため、聴き手も自らの記憶により自然とアクセスしやすい。つまり、井上が自らの記憶を呼び起こしながら原体験を描いた作品でありながらも、聴き手にとっても今作の楽曲がプルースト効果を生むものとして成立しているのだ。
Goodbye to you,good love for me
And I breath again
愛した花束を抱いて君も生きて行く
柔らかな気配 消えることはない
(“プルースト”)
新たな方法論を得たことも含め、まさに<愛した花束>と言う名の過去を携えて、サウンドスケープと歌詞の世界観を描き切った彼ら。過去からの現在地を描き切った彼らは、これからワンマンツアーという旅に出る。過去を噛み締め、自らのものとした彼らはどのような姿を見せるのか。きっと聴き手のあなたと共に、各々が辿ってきた道程を垣間見るようなライヴとなるに違いない。とはいえ、今作はあくまで彼ら自身の大きな変革の過程で創り上げられたものだった。だからこそ、既に次作への期待で胸が高鳴ってしまう。しかし、今はこの名作の誕生に惜しみない拍手を贈りたい。
(written by 黒澤圭介)
https://twitter.com/yojinoda1/status/822180046051753984
Twitter 野田洋次郎
https://twitter.com/kazekissa/status/817199797140529152 https://twitter.com/kazekissa/status/817201354733023232
椎木さんのツイートはいつもメンヘラ、嘘か誠か。喉のポリープはほんと。心配だけど、安心させてくれるなにか。お大事に。
ようぺのこういう考え方がすき。 アルバム楽しみ。