兄と犬
「牛すき焼き鍋膳で、卵を二つ追加してください」 「かしこまりました。卵を二つ追加ですね?」 「はい、計三つください」 「かしこまりました。…こちら大盛りになさいますか?」 「…はい。じゃあ大盛りでお願いします」 久々に行った吉野家での一幕である。実に無駄のない相手を慮ったやり取りで、ついつい二人のセリフを覚えてしまった。 『俺ちょっと変なんすけど、卵めっちゃ好きなんですよ』 『全然変じゃないですよ、卵お好きなんですね?』 『そうなんですよ』 『でも、さすがに普通盛りだと卵余っちゃいません?』 『うーん、確かにそうですね』
今月の半ば、うちの実家にいる愛犬・ミニチュアダックスのくうの体調が優れず病院にいるという連絡が午前中に入って、夕方には訃報が届いた。癌を乗り越えての15年だから本当によく生きたと思う。(ちなみに、くうという名前は、うちに来たばかりの頃に寂しくて『くぅくぅ』よく泣いていたからだ。が、僕は当時よく流れていた消費者金融のCMに出てくるチワワやジュースのキャラクターと被って嫌だから、別の名前を沢山提案したが全て難癖つけられて却下された。それほど何故かうちの両親は、くうという名前に拘った。そして、それから何故か日本中にくうという名前の犬が激増した。当時『きょうのわんこ』に出てくる犬の40%はくうだった気がする。まぁそんなことはどうでもいい)その日は仕事があったから会いに行けなかったけど、週末、同じく東京で暮らしている兄貴を車に乗せ火葬場まで向かった。後で母から聞いた話だと。どうやら兄貴は、その日に仕事場から駆け付けたらしい。僕は心底おどろいた。
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