覚えていなくていい、忘れてくれ
「先週風邪を引いてたろ」 言ってありがたくもないジンジャーティーを渡される。 酒の方が好きだ、むしろ酒しか選択しない。それでもアイツは体のためとババアみたいなものを俺に寄越すんだ。 「この前乾燥するって言ってたからよ」 言って甘ったるい匂いのするリップクリームを渡される。 なんでこんな女の付けるようなものを俺が、不惑もとうに過ぎたこの俺が使わなきゃならないんだ。 「いらねえよ、今はもう大丈夫だ。」 そう言わなければ泣きそうな顔をするこの男は、あまりにも過保護過ぎて。 気を使うことが嫌いなのにそうせざるを得なくなる、こいつも、兄貴も、あのロシアンも。 みんな敵だ。 俺に構うなよ、忘れてくれないか。 言うことが出来なくてぼんやりとした顔を見せるだけ。 誰も満足はしていなかった。











