何が悔しいって、イェンの車がタバコ臭くもオヤジ臭くもないってことが一番悔しい。
このホットドッグ臭いのは私のせいだから、ノーカン。
なんにせよ、イェンのお迎えが助かった。大方の予想通り、ベッドから起き上がれていたのは私の左腕だけだったから。
「そうだ、カプチーノ。『アールグレイ』が待ってたぞ」
「そうか?そんな雰囲気じゃなかったがな 、あいつのことだからわからんな!」
「ご到着だぜボス、時間通りだ。いい保護者様がいるからかな?」
時山駅前の雑居ビル。その一角に私たちの事務所がある。『退魔師』は個人事業ではなく、たいてい何人かのエージェントを抱えている。
「アンリ。あんたもサボってないで働いたらどうなの?」
銀の髪を金に染めた、どこかチャラけた男が『アールグレイ』アンリだ。私と違い、より広域のパトロールや防犯系の任務についていることが多い。
よく見るとアンリ以外にもちらほらと見知った顔が見える。結構な人数に召集がかけられているようだ。
ビル壁を多少焦がした件については、ビル自体が老朽化が進んでいて今更多少の焦げは無視できること、女の子のご家族から感謝状が警察宛に届いたことから不問になったとのことだ。
減給にならなかったのはラッキーとしか言いようが無い。
私はフリーを言い渡されているため傍観。対害魔法落書きの対応とか、未認可の魔術使用者の追跡とか、割と広く多く当たっている。
「そして、昨日付で新人が入った。伊藤 美菜君だ。コードネームは発行中。大卒だが、素養は高いと聞いている。新人教育は…」
いやいや、ここは私でしょ?!フリーなんだし!いや、アンリもフリーだけど!こんな金だか銀だかわからないへんちくりんな髪色のやつに新人教育なんて…
「すでに本人に、辞令共々伝達してある。顔合わせは16時だ」
どうやらアンリ的にも不服らしい。あいつはサボりたいだけだろうけど。
ちぇっ、仕方ない。折につけてアンリを弄りつつ新人と仲良くしよう。
「以上、ミーティング終了だ。チームミーティングに移れ。それと、紅羽、少し残れるか」
ボスから呼び出しなんて珍しい。よほどのことがあった…か、ないしは私の首の繋がり具合についてだ。