Ksenia Schnaider : 2018SS Collection from KIEV
「Ksenia Schnaider(クセニア シュナイダー)」といえば、この膝にスリットを入れたレイヤードのように見える独特のシルエットといまどきのストリート感で一躍注目を浴びた、デニムを得意とするウクライナ発のブランド。
ウクライナ人のKsenia Marchenko(クセニア・マルチェンコ)、そしてロシア人グラフィックデザイナー Anton Schnaider(アントン・シュナイダー)のデザインデュオが手がけるユニセックスなデザインは、海外セレブやインフルエンサーにも大人気で、パリコレでも彼らのアイテムを取り入れたスナップを見る機会が増えている。
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そう、それから“SAMPLE - NOT FOR SALE -”など、キッチュなメッセージを盛り込んだグラフィックも彼らの知名度アップに一役買ったアイテム。
なんてことないひと言ではあるもののその存在感はなぜか絶大で、個人的にはキリム文字はもう見飽きた感があるからこういう英語のほうがしっくりくる。(そしていまプッシュしてる新文字は、“CORRUPTION=汚職、買収、腐敗などの意”らしい。それにしても英語だと“C”は“スィー”なのに、キリムになると“エス”になるとか?意味不明)
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ここ数年の東欧ブームを牽引するウクライナ(ジョージアもおすすめ!)にあって、とはいえまだまだ国内需要をカバーするのに精一杯(要は継続投資資金が不十分なブランドも多い)、といったブランドも多いなか、「Ksenia Schnaider」はグローバルブランドとしてブレイクした希有な存在のひとつ。
ただ、“Demi Denim”と名付けたシグネチャーデニムがあまりに有名になったため、続く新作に期待感が高まる中、どこまでクリエーションの幅を広げることができるのか?はまだ未知数なところもあり。
そんな中、2018年春夏コレクションでは改めて彼らの原点である“デニム”を追求し、そして元々彼らのルーツである旧ソビエトの歴史観に立ち返ったコレクションを発表した。
美脚が叶うバナナやフレア、そしてバミューダ(&ショートも)などのシルエットにフォーカスしたデニムは、どれもハイウエストで基本はおなじみのデザインながら、エッジィさとモダンなフィット感で新しさを加えているのがポイント。
上のデニムは割と売れ線として打ち出してるのだと思うが、デザイナーとしてはこれらのシルエット、そしてデニム自体が真の意味でカルト的な人気を誇っていた幼少時代に思いを馳せて今回作ったのだとか。
ここでの“カルト的”とは、資本主義で育った私たちと、社会主義の旧ソビエトで育ったデザイナーやその親世代とでは意味合いが異なると思う。
それはデニムが労働者階級の作業服として普及したアメリカ文化の象徴であり、また1960~70年代になると若者文化、すなわち自由を意味するものだったから。
なので、旧ソビエトではデニムといえば入手困難なアイテムで、着用にも社会的にも大きな制約があったという。
立命館大学経済学部の文献によれば、ソ連邦軽工業省の文書にデニムもとい「ジーンズ」という言葉が登場したのは1972年と遅めだ。
(しかも、旧ソビエト時代の辞書にはそもそも“ジーンズ”という項目は存在しなかったらしい)
とはいえ、ダメだと言われると余計欲しくなるのが人の性。
実際には1970年以前から政府の目をかいくぐってアメリカの民族衣装という忌み嫌うイメージ、また公序良俗に反する不良の代名詞のようなデニムは現地に少しずつ浸透していたようだ。
ただ旧ソビエトでは入手困難なだけに、実際手に入れることができたのは裕福な家庭の若者だった。
デザイナーも「旧ソビエト時代、私のまわりの女性はみんなファーを着ていた。でもそれは必要であっただけで、ラグジュアリーではない。それよりも、デニムを持っている人はほんのわずかで、80〜90年代当時はまだ贅沢品だった」と語っている。
実際、モスクワの百貨店TSUMなどで売られていたのは東欧やインド製のデニムで、当時はアメリカ製のデニムが一般労働者の1ヶ月分の給料と同等の高値で闇市で売られていたそう。
闇業者の中には刑務所に送られたり死刑を宣告された人もいたというから、トレンドひとつ手に入れるだけでなんとも命がけな時代があったんだ、、と驚いてしまう。
そんな過去の記憶があるからか、デニムを解体してユニークなヘム使いのスカートやフェイクファーのコート、クラシックなトレンチコート、ダブルブレストのジャケットなどへ変容させる独創的なアプローチにも、デザイナーのデニムに対する愛と関心の深さを感じてしまう。
またデニム以外にも、リネンやビスコース、キャンブリック生地などで作られたフェミニンなドレスやブラウスなど多用なコレクションがラインナップ。
ポルカドットのプリントドレスや制服のようなドレスはどこか懐かしい雰囲気を漂わせ、夏の避暑地で着てみたいと空想が広がる。
また、よく見ると絵文字になったスマイルマークのスカーフもキャッチー。
これは、アントン・シュナイダーによって考案されたトリックの効いた手描きグラフィック。
ダブルブレストのドレスやフレアになったクロップド丈の袖なども、昔旧ソビエトの女性たちがよく着ていたウィメンズウェアを現代風に解釈したものだそう。
一見シンプルに見えつつも、その奥には日本人にはなかなか理解しがたいルーツが潜んでいる。
数年前に初めてパリのショールームで見かけた時から直感でそそる何か、を発信していた「Ksenia Schnaider」。
日本のテキスタイルの凄み、その粋な使い方にはまだ及ばないものの(そこにも色々お国事情はあるものの)、マーケティング含めグローバルマインドという意味では日本の若手デザイナーの一歩先を進んでいるので、そのままの勢いでデニムを超えたヒット商品も生み出してほしい。
Yoko Kondo / Editor in Chief & Fashion Consultant(近藤陽子/ファッションコンサルタント)