「雑記」
これまでに何度か取り上げたハリソンズの「ファインクラッシック」。今シーズンは集中的にお奨めしていることもあり、お客さんの反応が気になっていたが、今のところ好評価を頂いている。特にイタリー生地に慣れた人には、生地感が真逆で最初の違和感は否めないが、着続けることで服地が持つ「頼もしさ」を実感していただけると思う。正直コレクションは、紺・グレイを中心に定番柄ばかりで華やかさに欠ける。しかし実際ビジネスで使うにはこれで十分。加えて、実用面で強度・耐久性がいいので非常にパフォーマンスがいい生地だと言える。興味がある方は、ぜひ選択肢のひとつに加えられてはいかがだろう。
「男は黙ってファインクラッシック」 詳しくはお近くのハリソンズ取扱店へ。
元来文学とは無縁で、幼少期に読む童話や有名作家が書いた小説などをほぼ読んだことが無い。そんな私に、お客さんでもあり友人でもある本好きの男性が、新潮の夏目漱石を読了したと言ったのは、たしか一年ほど前のこと。 お恥ずかしい話だが、私は「川端」も「谷崎」も「芥川」も本当に読んだことが無い。漱石は過去「坊ちゃん」を最後まで読むことが出来なかった。それほど文学小説に縁遠かった私が、今年に入って通勤時間を利用し漱石を読み始め、現在13冊を終えた。もとより集中して読み込みができる人間ではないので、内容を十分把握出来ているとは言い難いが、近代に向かう明治の時代、そしてそこに生きる人の物事の捉え方に興味を持ちながら少しずつ読み続けている。
また、作品中に登場する「フランネル」「フロックコート」「シルクハット」「スコッチの靴下」「縞羅紗の洋袴」「外套」「七宝の夫婦釦」「英吉利織」「キャラコの襯衣」など、今では古典のアイテムを使った服装描写は、洋服の仕事をする私にとって親しみを持って入り込むことができた部分でもある。漱石が有した洋装の見地は、辛かった英国経験の際に培われたものだろうか。そんなことを考えながら読み進めるのも楽しい。 たかが13冊、まして50代半ばまで文学小説を読むことなく過ごした私が言うのもおこがましいが、「彼ならではの視点を、今だから理解できる」との気持ちで今後もページを進めてみようと思っている。
今と違って、明治期に流通した舶来生地の大多数は「英吉利織」であっただろう。それもメリノ種のように上質なものではなく、ツィードのような英国原産の羊毛を使った紡毛素材が多かったと想像する。硬くチクチク肌を刺すような素材で作られた洋服を、我々日本人は一張羅として取り入れた。まさに漱石が描く時代の話である。そして今、私たちは繊細なオーストラリア産メリノを使い、薄く軽い生地を手にすることが出来るようになった。しかし原毛がどう変わろうと、英国生地は「タテヨコ双糸」を踏襲する。それだけは明治期と何ら変わらない。 冒頭の「ファインクラッシック」も現代風にアレンジされたとはいえ、「英吉利織」の流れを汲む伝統生地のひとつである。漱石が生きた時代への敬意として、この生地をチョイスするのも悪くないのではないだろうか。
「男は黙って、ファインクラッシック」
注文服ヤマキ 木下 達也
-「え~」と驚かれるくらいホントに文学小説を読んだことが無い私です。文中では「漱石」なんて書いていますが、「夏目様」の方が私には適切なのかもしれません。読むことを薦めてくれた友人に感謝します-







