東京・初台にあるメディアアートの展示施設NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催されているキッズプログラム「しくみのかたち アイデアのかたち」で行われた谷口暁彦氏のアーティストトークに参加した.谷口氏はメディアアートを代表する5作品をミニチュアとメディアアートの説明を行うマンガからなる《たにぐち部長の美術部3D -メディア・アート編- 》を出品していた.残念なことにマンガの方は「近日公開予定」であった.
アーティストトークで谷口氏は作品をつくっているときに,子供向けの学習まんがを意識したと言っていた.メディアアートというとインタラクティブの部分を強調した「魔法の美術館」のようなものが子供向けとして開催されているけれど,谷口氏はインタラクティブであるかどうかは関係なく,大人向けの作品を子供向けにつくり直すのではなくそのまま提示したかった.その際に,子供向け学習まんがはその表現は子供向けになっているが,そこで描かれている現象・事実は「子供向け」に翻訳不可能でそのまま提示されていることを参考にしたとのことであった.この問題意識は今回の出張で視察した「正しいらくがき」展の出品作家であるyang02氏にも通じるものがあった.
ミニチュアで表現されている5作品はICCの学芸員の畠中実氏と相談して選定したとのことであった.これらの作品を見ていくことで「メディアによる人間の知覚の仕組みが問い直し/インタラクティブな環境での身体性の強調/複数の感覚を組み替えていくインタラクションの複雑化/インターネットという目に見えないものの提示/ディスプレイに拡張される身体」というメディアアートにおける身体のあり方の流れを追うことができるようになっている.最後には,ミニチュアのなかに設置されたカメラを通して,自分の身体をミニチュアの世界に入れ込むことができる仕掛けもしてある.この仕掛けには現実にはないもうひとつの空間からつくってしまい,そこに入り込むという谷口氏自身の作品のテイストが強く出ていた.
茅ヶ崎市美術館で開催されている「正しいらくがき」展も子供を強く意識した展示であった.yang02氏と菅野創氏による《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES》は気温や騒音など周囲の環境に反応しながら絵を描くドローイングマシンである.今回の展示では,札幌国際芸術祭2014でドローイングマシンが描いた絵を高校生や小学生が模写をして,さらに,その模写の動きをデータ化して,今度はドローイングが人間が描いた絵を模写をするということが行われている.作品を見ていて興味深かったのは,ドローイングマシンは「ハート」や「星」といったモチーフを描いてにもかかわらず,模写をしている人間の絵には「ハート」や「星」が描かれるということである.そして,これらもともと存在していなかった「ハート」や「星」をドローイングマシンが模写をするとそこに明確なかたちがあらわれず,どこか「亡霊」みたいな感じで「ハート」や「星」のようなものが描かれるのである.yang02氏によると,これはモーションキャプチャーの解像度が低いことで起こるとのことだった.ハードウェアの限界と捉えるよりも,モチーフが描かれていないものに,勝手にモチーフを描く人間に対して,またそのモチーフを無意味化するようにかたちを溶解させるドローイングマシンという流れのなかで,人間とドローイングマシンとのあいだの創造性の相違を考察すると興味深い.
その他に,《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES》の新作が展示されている21_21 DESIGN SIGHTの「動きのカガク」展,積み重ねた写真を彫るNerholの個展,写真と技術との関係を扱った「「Another Room」テクノロジーとアート写真が融合する場所 」を視察した.