「作曲家」というものを職業の一つと考えるのであれば、曲を作ることで報酬を得ている人と定義される。しかし、インターネットで少し検索してみれば、自作の曲を演奏して、ホームページで公開している人も少なくないことがわかる。その多くは、学生や他の仕事をして生活している人達だ。彼らは報酬を得ていないだけで、作曲という活動を行っているという点では、報酬を得ている作曲家と違いはない。それでは作曲家とは、何をもって作曲家といえるのだろうか。そんな問いの答えを考えるきっかけとして、西洋音楽史の中で、作曲家というポジションの確立に重要な役割を果たした音楽家、ギヨーム・ド・マショー(Guillaume de Machaut, 1300年頃 - 1377年)を取り上げたい。
14世紀にフランスの貴族の家に生まれ、高等教育を受ける機会に恵まれたマショーは、就学後は、政治家として活躍し、後に高位の聖職者となった。音楽を生業としていたわけではない。マショーの時代から、300年の年月を経た17世紀に活躍したヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685年- 1750年)が、オルガニストとして生計を立て、家族を養いながら、数多くの曲を残し、後進の音楽家たちのロールモデルとなったのに対し、マショーは、音楽家というよりも知識人という印象を強く受ける。しかし、彼の作品は、現在も演奏され続けており、アルス・ノーヴァの代表的な作曲家と言われている。
齊藤実雪(音楽プロデューサー)
2005年NPO法人SEED OF ARTSを設立。アウトリーチ事業等のコーディネーターとして活動を始め、2010年東京舞台芸術活動支援センターのオープニングに関わり、多ジャンルのアーティストと交流し、ワークショップのプランニングを始める。2016年より横浜市神奈川区民文化センターかなっくホールプロデューサー。