コペンハーゲンの運河沿いの町ニューハウン。カラフルに並ぶ建物はレゴの家そのもの。
成田空港からフィンエアーに乗って、ヘルシンキ経由でコペンハーゲンのカストラップ空港へ。乗り換え時間を入れて13時間半のフライト。デンマークの首都コペンハーゲンに来るのは今回で2度目で、空港に着くと「世界でいちばん幸福な国へようこそ」と、ビール会社の印象的な広告が出迎えてくれます。
直接スウェーデンではなくまずデンマークに向かったのは、コペンハーゲンの空港近くにある自然学校を訪ねるため。前から知り合いだったスウェーデン人のライラさんに紹介してもらい、そこでのプログラムや施設を見せてくれることになっていました。その後、電車でスカンジナビア半島のスウェーデンに渡り、国内を少しずつ北上していきます。
港の側に建つ Blue Base。中央は案内してくれたヤコブさん
大都市コペンハーゲンの郊外、海の近くのTårnby地区にあるトーンビュー自然学校は、Amagerネイチャーセンターの中にある小さな自然学校です。地元自治体によって運営されている公共の自然学校で、2015年で10年目になるんだとか。ライラさんのお知り合いで、代表のヤコブさんに案内してもらいました。
地元の幼稚園生から高校生まで、8つの学校から年間1000人の子どもたちを受け入れていて、スタッフ3人(+パートタイマー1人)の小さい自然学校ながら、たくさんのプログラムを提供しています。
ネイチャーセンター内にある拠点の建物の他に、海のそばに「Blue Base」と呼ばれる小屋のような小さな建物があり、どちらも手作り感満載の秘密基地のよう。動物の剥製や骸骨、たくさんの装備や道具が置かれていて、Blue Base の屋根裏部屋には海の世界を描いたペイントが。そういったデザインのいくつかはヤコブさんが実際に手がけたようで、立派に作り込みすぎない素朴でカラフルなデザインからも北欧らしさを感じます。
訪ねたときはちょうど休み期間中で子どもたちはいませんでしたが、実際のプログラムの一部を体験させてもらえることに。ヤコブに言われるまま、ドライスーツを着て海に入ったり、近くの浅瀬で海の生き物を観察したり、羽根の付いた鳥を生のままナイフで捌いて調理したりと、かなりワイルドでユニークなプログラムばかり。学校の子どもたちも同じことを挑戦するんだそうです。
プログラムのほとんどをペアで行うことも特徴で、互いに協力したり、どんなことを感じたか、何を学んだかを伝え合うふりかえりの時間が大切だと言います。そういった議論や話し合い、共有のためのスペースとして、それぞれの施設がデザインされていることがわかります。
こういったプログラムの一つひとつの体験は学校の授業につながっていて、単なる環境教育や自然科学、生物化学といった科目を越えて、算数(数の認識)、運動能力(自然のイレギュラーな環境の中で身体を動かす)、物理(海のプレッシャー)、言語(感じたことを伝える)、視覚(水の中と外の見え方の違い)など、身体や感覚を通して子ども自身が横断的に学んでいきます。「野外でしか出来ない体験や学びがたくさんあり、私たちはそれを提供しています。そしてそれは学校でのテストや、教科書を使った学習に結びついています。たとえ教室に座ってテストを受けているときでも、あれは晴れた日で海に入っていろんなことをしたと、その時の体験を思い出すでしょう。それはとてもポジティブな学びの姿勢です。」
「私は、すべての教科を野外で教えられると思っていて、そのためにこの自然学校を開放しています。この場所に来るたった1回のことだけではなく、事前に何をするのか、終わった後はどんなことを学んだのかを話し合い、ここでの体験を学校生活や日々の暮らしの文脈につなげていく必要があります。」「そのためには、学校の先生たちと話し合い、時には野外での教科学習の方法をトレーニングをしながら、一緒になってプログラムを作っていく必要があります。ただし、しなければいけないということはなく、選択肢の一つとして、野外での学びのきっかけを私たちは提供しています。」
Blue Base の屋根裏部屋は海の中。ここに子どもたちが集まって、話をしたり絵本を読んだり、昼寝をしたり。
外のファイアーピットで豪快に調理するヤコブさん。北欧には自然学校以外にも、気軽に火を使える場所が公園やトレイルなど至る所にある。
他にも、詩や人形劇、アーティストをゲストに自然の素材を使ったアートの授業、サウナで身体を暖めつつ真冬の海に入る Winter Bathing など、その土地や暮らしぶりを反映させたユニークなプログラムを提供しています。自然学校とはいえ自然のことについてだけではなく、自然の中での活動を通して身の回りの様々な事柄を学びます。
そういったプログラムの根っこには、子どもたち自身の「体験」があり、何事もまずは「やってみる」ことが一番の学びだとヤコブさんは言います。以下はヤコブさんとライラの会話から。
Jacob : 子どもたちは実際に体験してやってみることで、たくさんのアイデアを自分のものにしていく。もちろん初めは上手くいかないこともあるけど、初めから大人がすべてを見せてやる必要はないんじゃないかな。
Laila : 子どもは自分たち自身で挑戦して、いろんなことを学んでいく。Leaning by doing、そのためには先生がいつも付いてやる必要はないと思います。自分で学んだことはその先もずっと覚えているし、身近な人たちと話し合ったり出来る。
ライラさんはスウェーデンで幼児教育を教える大学の先生ですが、「先生はいつも必要なわけではない」と言い切ってしまうところに、スウェーデンの教育の根本的な考え方がある気がします。
若いときには、デンマーク中の100以上の自然学校を訪ねて旅したというヤコブさん。ワイルドでユニークなプログラムは、ただ単に昔の知恵を再現して学ばせているのではなくて、デンマークならではの、日々の暮らしに根ざした体験を提供していました。学校教育にとっても、自分の感覚や生活に沿った経験は知識として根づくものだと言っていたのが印象的でした。
アクティブで活き活きとしたヤコブさんのキャラクターに包まれたトーンビュー自然学校は、小さいながらもたくさんの工夫や哲学にあふれていました。
「あなたにとっての、子どもたちに対する役割はなんですか?」という質問に対しての答え ー Direct their attention in the nature. 自然の中で、彼らの興味を導くこと。(さばいた直後の鳥を頬ばるネコを前にして)