ちょっとしたSSのような何か
注意:CoCシナリオ『雪山密室』のネタバレが若干あります。 夢を見た。 空から何かが降りて来ていた。 俺はそれを見て笑うしかなかった。笑ったまま、その何かに手を伸ばしたかったのかもしれない。 だって俺には母さんが空から手を伸ばしてくれているように見えたから。 でも、それはありえない。 母さんは俺が小さい頃、目の前で炎に包まれて焼け死んだのだから。 今はもう会えない。なのにそこにいる。…笑うしかないじゃないか。 アラームの音で目を覚ます。目元が濡れていて、古傷がじんわりと痛んだ。 雪山でのあの事件以後、事あるごとにその時の夢を見るようになった。母さんの夢を見た時と同じように、なぜか涙が溢れて止まらなくなる。 「ん、もう起きてたか」 既に起きていた師匠が部屋に入ってきた。きっと自分が泣いている事だって知ってる。 「怖い夢でも見たか? よーしよし、もう怖くないぞー」 師匠は勘のいい人だ。雪山で何があったか、自分からは何も言っていないが、きっと気づいているのだろう。子供扱いをよくしてくるが、心が弱った時には良い薬である。 日常に戻れても、またあんな事に巻き込まれるんじゃないかと考えると毎日がどことなく不安だ。 「朝ごはんは何がいいか? いつもお前が作ってるからたまには俺が作るよ」 「…あったかいものがいいです、師匠」 「じゃあ野菜スープでも作ろうか。…シレネはもう少し横になってな」 師匠が部屋から出て行くのを見送って、もう一度ベッドで横になる。涙が止まるまでここにいよう。 扉の隙間から漂ってくるコンソメの匂いが、自分が今、日常にいる事を教えてくれている気がした。














