研究室紹介
どんな研究分野ですか? 比較行動学は、さまざまな環境で生きている動物の行動を詳細に観察することで、その行動が動物の生存にどのような影響を与えるのか、その行動がどのように進化してきたのかなどを考える研究分野です。ヒトとヒト以外の動物の行動や生き様には、共通する部分と異なる部分がみられます。観察を通して行動を記録し、集めたデータから客観的に分析することで、ヒトと動物の心と暮らしの至近要因と究極要因を明らかにすることを目指しています。
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研究室紹介
どんな研究分野ですか? 比較行動学は、さまざまな環境で生きている動物の行動を詳細に観察することで、その行動が動物の生存にどのような影響を与えるのか、その行動がどのように進化してきたのかなどを考える研究分野です。ヒトとヒト以外の動物の行動や生き様には、共通する部分と異なる部分がみられます。観察を通して行動を記録し、集めたデータから客観的に分析することで、ヒトと動物の心と暮らしの至近要因と究極要因を明らかにすることを目指しています。
学術変革領域(B)「ハイブリッド霊長類言語学:異言語融合におけるコミュニケーション変容を紐解く」キックオフシンポジウム
このたび、今年度より発足した学術変革領域(B)のキックオフシンポジウムを下記の日程で開催することとなりました。この領域には本研究室から勝が参加しています。 仙台での開催となりますが、オンライン配信も行う予定ですので、ご興味があればぜひ気軽にご参加ください!
●企画名:学術変革領域(B)「ハイブリッド霊長類言語学:異言語融合におけるコミュニケーション変容を紐解く」キックオフシンポジウム ●日時: 6月25日(木) 12:30~17:00 ●場所: 東北大学・片平キャンパス 知の館 3階講義室 ●開催方式:ハイブリッド (現地参加+Zoom配信) ●参加登録フォーム:https://forms.gle/ASQX4VKCzPJUTSDm9 ●概要:領域概要と今後の研究の展望について領域メンバーからご説明するとともに、当該分野の第一線でご活躍されている岡ノ谷 一夫 先生(帝京大学)、小泉 政利 先生(東北大学)にご講演いただく予定です。 ●領域HP:https://www.primaling2026.com
研究成果報告会2026~淡路ザル観察公苑 & 大阪大学・奈良女子大学~
私たちの研究室では、2025年度に淡路ザルを対象にした修士論文が1本提出されました。その報告会を3月に開催しました(報告が遅れました、すみません)。
ニホンザルは、交尾期になるとメスもオスも顔が赤くなります。このような顔色の変化は、サルの目を引くのでしょうか?顔色の変化は性的に活発になる交尾期に生じることを考え、以下の3点を検討しました。
①コドモよりも、オトナの方が赤い顔に目を奪われるのではないか? ②同性の赤い顔よりも、異性の赤い顔の方に目を奪われるのではないか? ③赤い顔は、非交尾期に見るよりも、交尾期に見たときの方が目を奪われるのではないか?
同じサルの同じ顔写真を、画像編集ソフトで彩度を調整して、赤色の強い写真と赤色の弱い写真に加工しました。これらの写真を対象個体となったサルに2枚同時に提示して、どちらの顔写真をより長く見ていたかを調べました。この実験方法は選好注視法と呼ばれ、2つの異なる刺激のうちどちらにより注目したかを評価する実験手法です。梅津さんは、オトナ・ワカモノ・コドモのメスとオスを対象として、計860試行の画像提示実験をおこないました。
解析の結果、オトナのオスは、交尾期に、異性の赤い顔に対して長時間反応することが明らかになりました。オトナのメスでは、同様の傾向は確認できませんでした。コドモにおいても、赤い顔に対する特別な反応は確認できませんでした。交尾期のオスは、メスの赤い顔を見ると、目を引かれることが明らかになりました。メスの赤い顔は、排卵のタイミングや健康状態を示しているともいわれています。オスは、メスの赤い顔色をみて、交尾に適した相手を探しているのかもしれません。
淡路島の場合は12月から2月くらいまで、神庭の滝では11月から1月くらいまで、交尾を頻繁に観察できます。交尾期のオスがメスの顔色を確認しているのか、観察してみると楽しいかもしれません(交尾期のサルは、顔だけでなく、お尻も赤くなります)。
2026年3月14日に実施したオンラインセミナーは、1か月間の視聴数が3453回、ユニーク視聴者数が2906となりました。今回もたくさんの方に見ていただきました。後日、モンキーセンターでも直接声をかけてもらって、「見たよ!」とか、励ましや質問をたくさんいただきました。
今回は、延長戦もおこなって、2026年2月に亡くなった第一オスのビックとの思い出を貝ヶ石さんが語ってくれました。アーカイブはこちらから。
日時:2026年3月14日(土)19時から20時(YouTube Live配信) 発表者:梅津明香(大阪大学大学院人間科学研究科・修士論文)「淡路島集団のニホンザルにおける他個体の顔色への視覚的選好」 進行:貝ヶ石優、勝野吏子、山田一憲 主催:(一社)淡路ザル観察公苑 共催:(株)淡路島モンキーセンター、大阪大学人間科学部比較行動学研究室、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクト
第22回比較行動学研究セミナー The 22nd Seminar of Ethological Research
タイトル:Encounters in the Field: The Concordia-Osaka Research Exchange 日時:2026年6月4日(木) 14:00 - 16:30 対面参加:大阪大学 人間科学部 本館1F 12講義室 Speakers: Yuto NEJISHIMA: Function of Infant Vocalizations During Weaning Conflict in Japanese Macaques Aurélie VASSEUR: The Mutational Fingerprint: Decoding Somatic Change in Macaca fuscata Kosho KATAYAMA: Daily Aggressiveness in Dominant Individuals Predicts Inter-individual Flight Initiation Distance in Japanese Macaques (Macaca fuscata) Cristina SCIORTINO: Beyond the Blink of an Eye: Using Computer Vision to Track Play, Behavioural Adaptation, and Resilience in Japanese Macaques Izumi NARASAKI: Changes in Social Interactions in Captive Shoebills after Separation of Male and Female 要旨:Our lab has been engaged in a research exchange with Sarah Turner’s Lab at Concordia University. This year, we have a grant (Mitacs Globalink Research Award), and they will be visiting to research wild Japanese macaques on Awaji Island. In the fall, our PhD student will study at Concordia University. Before visiting Awaji Island, we will hold a seminar where five students will present their research. 私たちの研究室は、コンコルディア大学のサラ・ターナー研究室と研究交流を続けてきました。今年は助成金を獲得し、同研究室のメンバーが淡路島で野生ニホンザルを調査するために来日します。秋には、比較行動の学生がコンコルディア大学に滞在して研究を行う予定です。淡路島へ赴く前に、5名の学生が各自の研究発表を行うセミナーを開催します。
OPEN to ALL どなたも自由にご参加いただけます。事前予約不要・参加無料。
担当:山田一憲([email protected]) Student Coordinator: Aoi SAITO & Ryousuke NAGAI Supported by Mitacs Globalink Research Award
淡路ザルセミナー:抱っことおんぶ(サルの暮らしのお話い ろいろ #2)
淡路ザルセミナーを今年も開催します。比較行動学研究室は共催として、配信や進行のお手伝いをします。
中道正之先生がサルの暮らしについてお話をしてくださいます。今回のテーマは「抱っことおんぶ」です。
日時:2025年12月27日(土)19:00ー20:00 タイトル:抱っことおんぶ(サルの暮らしのお話い ろいろ #2) お話:中道正之先生 YouTube接続先:https://www.youtube.com/live/qV2F1wVR4cM
YouTubeからリアルタイム配信、しばらくアーカイブも視聴できます。参加は誰でも無料です。QRコードまたは上記URLから接続してください。
中道先生のお話のあと、コメント欄を利用した質疑応答の時間を設けています。疑問に思っていたこと、研究者に聞いてみたかったこと、お気軽におたずね下さい!写真は中道先生と愛犬のピコちゃんです(かわいい!)
いきもにあ2025
2025年10月18日、19日に京都市勧業館みやこめっせで開催された「いきもにあ2025」に大阪大学 比較行動学研究室としてブース出展を行いました。いきもにあは「生きもの」を多角的に楽しむ祭典で、物販・展示ブース、研究者による講演会を通して、お気に入りの生きものとの出会いや生きものの魅力を発見するイベントです。私たちのブースでは、動物の行動観察のしおりの配布やサル文字、研究ポスターの掲示を行いました。
イベントの全体の来場者数が昨年は約6400人だったことに対し、今年は約8000人と増加したこともあってか、しおりの配布枚数が昨年よりも増加し、2日で450枚を配布しました。ニホンザルのファンの方がたくさんブースに来てくださり、実際に勝山や淡路島の野猿公苑に行った時の話をしてくださいました。ニホンザルに興味を持っている人は年々増加しているように感じ、野猿公苑や研究者の様々な取り組みがファンを増やすきっかけになっているのではないかと考えています。私たちのブースも今年でいきもにあへの出展は4回目となり、昨年のブースの内容を覚えてくれているお客さんもいて、徐々に行動観察のブースとして、浸透しつつあります。今年は行動観察、分析の方法をより細かく知ることができるキットの作成するなど、新たな取り組みを始めました。このように新たな取り組みを行うことで新規だけでなく、毎年ブースに来ても楽しむことができる取り組みを考えていければよいと思います。
きょうと☆いきものフェス!2025
2025年9月27日、28日に京都市植物園で開催された「きょうと☆いきものフェス!2025」に大阪大学 比較行動学研究室としてブース出展とワークショップを行いました。ブースでは、動物の行動観察のしおりの配布やサル文字、研究ポスターの掲示を行いました。
サル文字はどうやって文字を書いているのか尋ねてくれたり、エサを撒いているのだろうなどと話したりしているお客さんもおり、コミュニケーションが生まれやすい場となっています。また、このサル文字が淡路島のサルなど限られた場所でしか作ることができないという説明を行うと、みなさん驚かれ、ニホンザルに興味を持つきっかけになっているのではないかと感じています。
ワークショップは28日15:15~16:00に京都市動物園の多目的室で行いました。参加申し込み人数は33人でしたが、実際の参加者は18人でした。今回のワークショップでは、観察前に名前のルールや順位関係などのニホンザルクイズ、観察法の説明、0か月齢と3か月齢のニホンザルの観察、データの比較、ニホンザルについての研究紹介を行いました。参加者に方々は説明を頷きながら聞いてくださったり、終わってから質問をしてくださったりしたため、ワークショップを楽しんでいただけたのではないかと思いました。
令和7年度自然史学会連合講演会に参加しました!
自然史学会連合は39の学協会が集まって作られた組織で,毎年講演会を実施しています。講演会ではさまざまな学会が講演や展示ブースなどを通じて,自然史の魅力を伝える活動をしています。今年は島根大学にて開催されました。
日本霊長類学会を代表して大阪大学比較行動学研究室が本講演会に展示ブースの出展を行いました。「行動観察法を体験しよう」というタイトルでニホンザルの暮らしの紹介と行動観察法の体験ができる展示を行いました。日本霊長類学会からはニホンザルが描かれたシールの配布を、研究室からは行動観察が体験できるしおりの配付を行ないました。行動観察を行う際にニホンザルを一頭一頭見分けていることを来場者に説明すると非常に驚かれていました。行動を記録する際につかうデータシートの形はどうなっているか,といったマニアックな質問を来場者からいただくこともありました。
本研究室以外にも6つの学会や水族館などの団体がブースを出展していました。知的好奇心を擽る楽しい展示がいっぱいでした。
配布したしおりやシール
展示ブースで配布した霊長類学会のオリジナルシールを印刷会社さんから予備分としていただきました!せっかくなので車に貼ってみました。他のブースの参加者からも「かわいい」との声をたくさんいただきました!
開催:2025年11月1日
タイトル:行動観察法を体験しよう
場所:島根大学 生物資源科学部3号館201講義室 (講演会は1階島根大学総合博物館)
内容:ニホンザルの暮らしの紹介と行動観察法の体験
スタッフ:山田一憲(PSJ会員)・奈良崎 泉・根地嶋勇人(PSJ会員)・梅津明香(PSJ会員)・栫 優花(PSJ会員)・齊藤 葵
参加者数:15名
【開催報告】研究体験イベント「生きものの行動観察博士になろう!」
ニフレルさんとのコラボイベントは今回も大成功でした!
まず、ニフレルの会議室に集まって、今日1日一緒に活動をする参加者さんにチューターさんがご挨拶。人間科学、心理学、動物行動学、獣医学を専門にする学生が、参加者1組に1名つきました。
観察のやり方を大学院生がレクチャーしました。動物の行動を定量的に記録することができる「行動観察法」を説明し、その個体の行動や暮らしを比較しながら理解することができることを紹介しました。今回は、10分間の個体追跡観察をして、1分ごとの点観察法で記録をしました。事前に撮影した動画で練習をしたら、いよいよ実物のワオキツネザルを観察するために「うごきにふれるエリア」に出かけます!
10頭のワオキツネザルがいる中で、参加者さんは1頭のワオキツネザルを追跡します。右に左に、上に下に、展示場を自由に動きまわるサルを見失わないように追いかけて観察します。朝のエサの時間に特別に観察できたことは、今回のイベントの醍醐味の一つでした。
「ブルー」という名前のサルを追跡観察している場面です。チューターさんが、行動を記録するタイミングを教えてくれたり、サルを見失わないようにサポートしてくれています。ブルーさんは、10頭の中で一番若く、黄色い目をしているという特徴があります。
こちらの参加者さんは「フィルム」の追跡観察をしています。フィルムさんはおでこに三角形の白い模様があって、尻尾が少し細くなっています。
観察が終わったら、それぞれの観察結果を集計しました。集計方法を説明する勝先生。
それぞれの集計結果を見比べて、活動時間配分や
近接個体数の違いについて、個体の特徴を検討しました。
お年寄りのフクゾウさんやラグさんは、休息していることが多かったです。
フィルムやレフさんは、休息だけでなく、移動したり、マーキングしていることが多かったそうです。
観察した感想も発表してもらいました。その姿を、一緒に観察したチューターが見守っています。
このような行動観察の積み重ねが、動物の飼育や健康管理に役立つことを村上獣医師・キュレーターに解説していただきました。
観察の成果と一緒に記念撮影。参加者の皆さんからは、以下の感想を頂きました。楽しんでいただけたようです!
いつもさらっと見るだけで終わってしまうのが、どういった行動しているのか、誰といるのかを見ると、また違った視点で楽しめた
(サルにも)反抗期やイヤイヤ期はありますか?
こうどうをすうちかしてなんでこんなことをしているかかんがえるのがたのしそうだから(興味を持った理由)
もっとせいかくが知りたい
集中して観察するといろいろな情報があった
それぞれの個性を感じることができてとても楽しかったです
見分けるのは難しかったけれど楽しかったです
データシートとかの説明がわかりやすかった
1ぴきをさがすのが楽しかった
世かいにワオキツネザルは何ひきいるか(知りたい)
私達にとっても満足感の高い、楽しいイベントでした。チューターの皆さんが、お子さんと上手にコミュニケーションをとってくれていたので、感心しました。毎年の恒例になるように、続けて行きたいなと思っています。今回のお子さんたちが大きくなって、大学で再会できるといいなと思ってます!
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[開催] 2025年8月21日(木)、22日(金) 各回9:00-10:30 [参加者] 21日:参加者18名、チューター18名(ニフレル、大阪大学人間科学部、大阪公立大学獣医学部、梅花大学心理こども学部)、22日:参加者20名、チューター17名(ニフレル、大阪大学人間科学部、大阪公立大学獣医学部、梅花大学心理こども学部) [主催] ニフレル、大阪大学大学院人間科学研究科 [後援] 人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクト [概要] 大阪大学大学院人間科学研究科比較行動学研究室では、野生動物や飼育動物の行動と社会を研究しています。このたび、株式会社海遊館が運営する、生きているミュージアム「NIFREL(ニフレル)」と協働して、2025年8月21日(木)、22日(金)の2日間、大阪府吹田市「EXPOCITY」で生きものの行動観察をテーマにした研究体験イベント「生きものの行動観察博士になろう!」を開催しました。 本イベントは、生きものの行動観察を通して生きものへの理解を深める、「動物行動観察研究」を一般の方々に体験していただくイベントです。ニフレルに暮らすワオキツネザルの行動を観察・記録・分析し、その生態や個性の魅力を発見していただきます。記録用紙と鉛筆とストップウォッチだけで本格的な観察研究を体験できる、夏休みの自由研究にもぴったりな内容です。本イベントを通じて、生きものをじっくり「観る」ことの楽しさに気づき、生きものへの興味関心がより深まることを目指しています。 大阪大学大学院人間科学研究科とニフレル(株式会社海遊館)は、2024年に学術交流協定を締結しました。観察を通して動物の行動を科学的に解明する人間科学研究科と多種多様な生きものを間近で観察することができるニフレル、双方の特徴を活かし、共同研究や合同ゼミを実施しています。ニフレルではこれまでに、ワオキツネザルのほか、イリエワニやミニカバ、フグの仲間などにも行動観察の手法を用い、エサのよりよい与え方や成育比較などの研究を行ってきました。展示生物の生態や心情を彼らの行動から科学的に理解することは、生きものたちによりよい環境で暮らしてもらうための日々の工夫に繋がっています。 [公式 NIFREL Instagram] https://www.instagram.com/p/DNnIjlhyiYE/?utm_source=ig_web_copy_link [大阪大学プレスリリース] https://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/public-relations/press_release/6e1h2u/vqep1c/20250731_01
第21回比較行動学研究セミナー
タイトル:イヌの「性格」に関する研究の展開 講演者:今野 晃嗣 氏(麻布大学・獣医学部・動物応用科学科) 日時:2025年8月28日(木) 13:30 - 15:00 対面参加:大阪大学 人間科学部 北館2Fラーニングコモンズ オンライン参加:zoom 要旨:最古の家畜であるイヌ(Canis familiaris)は「性格」の進化を理解するための興味深いモデル動物です。本セミナーでは,イヌにおける性格研究の最近の進展をご紹介します。前半ではイヌの性格の心理測定学的知見を,後半では遺伝的要因と選択圧について概観します。これまでの研究から,イヌの性格特性は信頼性と妥当性の観点から測定可能であり,イヌとヒトの相互作用の文脈において独特な経路によって形成されてきたことがわかります。
どなたも自由にご参加いただけます。事前予約不要・参加無料。
担当:山田一憲([email protected])
【論文】サルも親しかった仲間の遺体に寄り添う:死にゆく仲間に向けられた“社会的絆”と“嫌悪感”
写真(上) 28歳の老オスの遺体のそばに留まる2歳の子ザル。(下)この子ザルは生後6か月から、このオスに抱いてもらう、毛づくろいを受けるなどの特別に親しい関係になっていた。
Nakamichi, M., & Yamada, K. (2025). Responses to dying and dead adult companions in a free-ranging, provisioned group of Japanese macaques (Macaca fuscata) [Article]. Primates. https://doi.org/10.1007/s10329-025-01196-2
研究成果のポイント
ニホンザル集団において、おとなのサルの死亡時に、生前に親しかった個体の中には、仲間の遺体の近くに留まったり、毛づくろいしたりする場合があることを発見。
野生の霊長類が遺体に対して示す反応や、「生前の社会的絆」がその反応にどう影響するかについてはこれまで不明だったが、サル同士の関係性を定量的に長期調査する過程で、死亡直前及び死亡したニホンザル4頭に対して仲間のサルたちが示した行動を詳細に記録することに成功。
「近親者や親しかった仲間の死に、特別な行動を起こす」という示唆は、ニホンザルと私たち人間の死生観に類似性があることを指摘するものであり、人間以外の動物の死生観の進化を考える「比較死生学」の発展への貢献に期待。
概要
大阪大学の中道正之名誉教授と同大学院人間科学研究科の山田一憲准教授は、野生ニホンザル集団(岡山県真庭市)で、死亡直前または死亡した4頭のおとなのサルに対する他のサルたちの行動を詳細に記録することに成功しました。研究グループは、4頭が元気な時の毛づくろい相手や一緒に過ごす仲間を長期間定量的に記録し、死亡直前または死亡直後の遺体に対する群れのメンバーの行動が、生前の親和関係によって影響を受けることを明らかにしました。
ケガによって体調が悪化しても、以前から親しくしていた個体は近くに留まったり、毛づくろいしたりするなどの親しい関わりを続けていました。しかし、ウジがわき、身体状況が急激に悪化した後は、親しかった個体も関わりを避けるようになりました。また、サルが遺体を発見すると、遺体周辺への接近が抑制され、群れ全体の行動にも影響が生じることがありました。そんな中、親しかった個体の一部は、ウジが付着する仲間を毛づくろいしたり、遺体の近くに留まったり(写真1)、さらには、遺体に毛づくろいをすることもありました。
「遺体やウジが忌避される一方で、親しかった一部の個体が仲間の遺体のそばに留まった、毛づくろいをした」という事実は、ニホンザルが「近親者や親しかった仲間の死に、特別な行動を示す」ことを示唆します。本研究の成果は、ニホンザルと私たち人間の死生観に類似性があることを指摘するものであり、人間以外の動物の死生観の進化を考える「比較死生学」の発展に貢献するものとなります。
関連URL
サルが生息する神庭の滝自然公園
サルの管理を一緒に担当している一般社団法人真庭観光局
阪大ResOU(プレスリリース)
【総説】ヒト以外の霊長類におけるメタ認知
特任研究員のスビアスさんの論文がPrimatesに掲載されました!
Subias, L., Katsu, N., & Yamada, K. (2025). Metacognition in nonhuman primates: a review of current knowledge [Review]. Primates, 66(1), 9-25, Article 104766. https://doi.org/10.1007/s10329-024-01169-x
ヒト以外の霊長類におけるメタ認知:最新の知見の総説
ヒト以外の霊長類におけるメタ認知研究をレビューした。メタ認知とは「認知についての認知」、すなわち自身の記憶や判断の状態をモニターし、必要に応じて制御する能力を意味する。かつてはヒト特有の能力と考えられてきたが、近年の研究によりヒト以外の霊長類にもこれに類似した能力があるという説得力のある証拠が示されてきた。本論文では、これまでに利用されてきた主要な実験パラダイム(Escape反応パラダイム、情報希求パラダイム、課題遂行後の自信の認知パラダイム)を取り上げ、その結果を霊長類の分類群ごとに整理した。多くの研究で、動物が「記憶が曖昧なときにテストを回避する」「知らないときに調べる」「自身の回答の確信度に応じて報酬を賭けられる」といった行動を示すことが確認された。これらはメタ認知的行動と解釈できるが、単なる連合学習や不確実性の回避、好奇心や不安による反応ではないかという批判もあった。私たちは、これらの代替仮説を排除するために注意深く統制した実験を実施することで、一部の種においては、メタ認知処理の存在が支持されることを主張した。レビューを通して、寛容性や抑制機能の高い種・個体は、優れたメタ認知の能力を示すことが示唆された。霊長類学における今後の研究課題として、メタ認知の進化をもたらした要因を探ることが挙げられる。より幅広い種を対象とした野外実験を行うこと、種の特性や個体差がメタ認知のパフォーマンスに与える影響を検討すること、神経生理学の知見と融合させること、ヒト以外の霊長類ではほとんど検証されていない「正しい記憶があるにもかかわらず『覚えていない』と誤って思い込む能力(メタ認知エラー)」の検討などが必要であろう。これらの取り組みにより、霊長類におけるメタ認知の進化に関する統合的な議論が可能になることを指摘した。 (文責:山田一憲)
私たちの研究室には、論文が受理された時、特製の大漁旗を振り回す習慣があります!
研究成果報告会2025~淡路ザル観察公苑 & 大阪大学~
日時:2025年3月8日(土)19時00分から20時25分(YouTube配信)
中岡至「飼育下及び淡路島餌付けニホンザルにおける水溶液に対する選好性」
中井颯人「嵐山集団のニホンザルにおける毛づくろいの質に相手の属性が与える影響」
進行:梅津明香、栫優花、根地嶋勇人、貝ヶ石優、勝野吏子、山田一憲 主催:(一社)淡路ザル観察公苑 共催:(株)淡路島モンキーセンター、大阪大学人間科学部比較行動学研究室
淡路ザルを愛する皆さんに見守られながら、今年は淡路ザルに関する修士論文を中岡さんが提出しました!テーマは「淡路ザルは塩水を好んで飲むのか?」というものでした。中岡さんは、以前、長野県の地獄谷で「温泉を飲むサル」の研究をしていました。ミネラルを比較的多く含む温泉を飲む行動がなぜ生じるのかを、淡路ザルで検証しました。
中井さんは、毛づくろいに関する卒業論文の成果を発表しました。中井さんの研究対象は嵐山のニホンザルですが、ニホンザルにとって重要な社会行動である毛づくろいの「質」について、毛づくろい中のまばたき、つまみ上げ、見まわし行動に着目して、信じられないくらい細かな解析を行いました。
報告会のアーカイブはこちらから見て頂くことができます。今回も淡路ザル観察公苑の皆さんにInstagramから告知をしていただきました。1カ月ほどたちましたが、視聴回数は903回、ユニーク視聴者数は479名で、今回も多くの方にご覧いただきました。コメントもたくさんいただき、一所懸命研究した学生たちの大きな励みとなりました。来年また成果をご報告できるように、研究を頑張りたいと思います。
今回も千葉泉先生の「Monitos de Awaji」でお別れしました。
本イベントは大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクトの支援を受けて実施しています。
サルサミット2024~神庭の滝でサルを観察しよう~
今年度もサルサミットを開催しました。阪大の大学院生から動物行動学を学んだ勝山高校の生徒が、勝山小学校の児童といっしょに神庭の滝に来て、次は児童にサルの行動を教える、というイベントです。
事前学習①:行動観察法を学ぼう 日時:2024年12月24日 13:30-14:30 場所:岡山県立勝山高校(岡山県真庭市) 参加者:高校生26名+仁木先生 講師:奈良崎 泉、栫 優花、山田一憲(大阪大学・人間科学部)
金髪で高校に入ってよいものか、校門で少し悩みました。
奈良崎さん、栫さんの「おはこ」となりつつある、定量的な行動観察法の紹介と練習をしました。美しいしおりは、目を引きます。
高校生は、個体追跡法、瞬間サンプリング法と全生起法、生起率の算出方法を学びました。
事前学習②:行動観察実習 日時:2025年1月7日 9:30-11:00 場所:神庭の滝自然公園(岡山県真庭市) 参加者:高校生26名+仁木先生 講師:山田
前回学んだ行動観察法を頭に入れ、手には記録用紙と鉛筆とストップウォッチをもって、神庭の滝へサルの観察に出かけました。
雪がちらつく寒い日でしたが、10分間の個体追跡観察を「エサまき前」と「エサまき後」の2回行いました。全生起法で攻撃行動やサプラント(優位な個体が近づいてきたときに、劣位な個体がその場から離れる行動)を記録し、1分間隔の瞬間サンプリング法でヴィジランス(周りを見回す警戒行動)やアクティビティ(採食、毛づくろい、休息、移動)を記録しました。
事前学習③:行動の解析をしよう 日時:2025年1月7日 12:30-14:00 場所:岡山県立勝山高校(岡山県真庭市) 参加者:高校生26名+仁木先生 講師:山田
午後からは勝山高校に戻って、午前中に記録した行動データを集計して、グラフを描き、高順位個体と低順位個体の行動の違いを考察しました。
個体追跡の時間は短かったですが、なかなか興味深いデータを集めることができました。
=>エサがまかれると、攻撃交渉が増える。高順位個体はサプラントをすることが多かったが、低順位個体はサプラントされることが多かった。
=>エサをまくと、高順位の個体はエサを拾うことが増えたが、低順位はそれほど増えなかった。
グラフの意味をグループごとに考えて、発表してもらいました。おもしろかった!定量的に観察することの意味を体験してもらえたと思います。
最後に、ニホンザルの優劣関係について、講義を行いました。
事前学習④:サイエンスカフェ:神庭の滝を盛り上げる方法を考えよう 日時:2025年1月7日 14:00-15:30 場所:岡山県立勝山高校(岡山県真庭市) 参加者:高校生26名+仁木先生、山田 講師:一般社団法人 真庭観光局(須田事務局長、中村次長)
神庭の滝自然公園の指定管理者となっている一般社団法人 真庭観光局の須田事務局長と中村次長にお越し頂いて、神庭の滝を観光地として盛り上げるためのアイディアを高校生といっしょに考えました。真庭観光局では「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを目指しておられます。中村次長から、神庭の滝の来園者を増やすための取り組みについて解説をしていただきました。コロナ禍を経て、お客さんは増加傾向にあるとのことでした。高校生からは、フォトコンテストやイラストコンテストの提案や、神庭の滝オリジナルキャラクターの制作といった提案が出ました。私は、高校生が神庭の滝のお猿のガイドができるようになったらないいなと考えました。アイディアをどれか実現に向けて進めたいですね。
合同観察会⑤ 日時:2025年1月23日 9:00-11:00 場所:神庭の滝自然公園(岡山県真庭市) 参加者:高校生19名+仁木先生、真庭市立勝山小学校4年生24名+教員3名 講師:山田一憲
事前学習をした高校生が、神庭の滝とサルの魅力を小学生に伝える合同観察会です。1-2名の小学生と1名の高校生がペアを組んで、活動しました。
神庭の滝の職員さんが朝早くから山に入ってサルを呼んでくれたのですが、今日は集団の餌場への入場が遅れました。しかし幸運なことに、ハナレザル(愛称:ボクチン)が、餌場に来てくれたので、まずはボクチンを観察しました。人差し指と親指を使って器用に小麦の粒を拾う場面を観察したり、お尻を見るとオスかメスか判断できることを伝えました。私が近づきすぎるとボクチンが威嚇してくること、でもボクチンから離れれば威嚇が止まることを観察して、サルに近づきすぎなければ威嚇されることはほとんどないことを解説しました。高校生はサルの威嚇の表情と、サルのおびえの表情を事前に学んでいたので、その表情の違いを子ども達に教えてくれました。
10時過ぎにようやく、集団が入場しました。ここからは、サルの解説は高校生にお任せです。子ザルを背中でおんぶしたりおなかで抱っこしたりしながら母ザルが山から下りてくる様子を高校生が指さして、それが霊長類の特徴であって、人間のおんぶや抱っこと繋がることを解説してくれました。やってて良かった事前学習!
しばらく休息場面のサルの観察をした後、職員さんに給餌を行ってもらいました。餌やりによって攻撃行動やサプラントが生じやすくなることを、実際に観察しながら、小学生に解説してくれました。
最初は少し緊張してましたが、最後は別れが名残惜しくなるくらい、仲良くなっていました。自己紹介のための名札をそれぞれ胸に貼っていたのですが、お別れの時に名札を交換していたのが印象的でした。
バスが出発するまで、高校生はバスに手を振っていました。
児童の保護者には、神庭の滝のサルの紹介資料を配布させていただきました。子ども達が家に帰って、観察会の話してくれることで、神庭の滝のサルに対する理解や共感が広がっていくことを願っています。小学生が大きくなったら勝山高校へ進学して、今度はその子が勝山小学校の子ども達にサルの解説をしてくれるといいなと思っています。
子ども達が本当に楽しそうにしていたので、手応えを感じていたのは、大人達の方だったかもしれません。来年も是非やりましょう!!
山田一憲
勝山小学校の公式HPでの紹介
勝山高校の公式HPでの紹介①
勝山高校の公式HPでの紹介②
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本イベントには、共育の視点の実践(真庭市総合教育大綱)という以下の3つの目的がありました。
【協育】教えながら学ぶ:小学生に高校生が教える。高校生に大阪の大学院生が教える。
【郷育】郷土の誇りである神庭の滝とサルを知ってもらう:滝の職員さんが一生懸命に神庭のサルの管理をされていることを学ぶ。地域に暮らすサルのことを知って、昔から続いてきたサルと人間の共生を考える。
【響育】1頭1頭異なるサルの個性を知って、サルとヒトの共通点と相違点を理解して、人間について理解を深める:「大人って何だろう?」「親ってなんだろう?」「人間はなぜ社会を作ってくらしているのだろう?」。
本イベントは大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクトの支援を受けて実施しました。
生きものの行動観察博士になろう!
参加者:山田一憲、勝野史子、片山洸彰、奈良崎泉、梅津明香、栫優花
2024年12月26日にニフレルと共同イベント「生きものの行動観察博士になろう!」を開催しました。午前は親子向け、午後は大人向けの内容で2回実施しました。
参加者1組につきワオキツネザル1頭をイベントスタッフと一緒に観察することでデータを集め、集計するという体験内容でした。
午前は仲間のサルが近くにいるか(近接個体数)を記録し、午後はサルがどんな行動をしているかと近接個体数を記録しました。記録した結果は、写真のようにシールやペンで分かりやすいようにまとめました。
午前、午後どちらも10分間の観察でしたが、観察した個体や時間帯によって結果が異なっていました。集計を行ったことで、観察した個体以外の結果も比較することが出来ました。
参加者からは、
好きな動物で(行動観察を)やったらおもしろそうだと思った 学問として動物を見るってこういうことなんだなと面白かった 1匹1匹個性があったから興味を持てた
といった声を聞くことが出来ました。
イベントを通じて、動物をじっくり観る行動観察の楽しさを体験して頂けたと思います。
今後も行動観察体験ができるイベントを開催していきたいです。
第20回比較行動学研究セミナー
タイトル:Exploring vocal communication in animal species 動物における音声コミュニケーションの探究
講演者:Benjamin Benti, PhD(日本学術振興会/大阪大学大学院人間科学研究科)
日時:2024年12月12日(木)15:00-16:30
場所:大阪大学 人間科学部 北館2F ラーニングコモンズ
今秋に来日し、淡路島で研究を始めたポスドクによるセミナーです。カラスやクジラ類などを対象としたこれまでの研究についてお話してもらいます。
(セミナーは英語で開催します。)
淡路ザルセミナーのご参加ありがとうございました
2024年10月5日開催の淡路ザルオンラインセミナーのご参加、ありがとうございました。淡路島モンキーセンターで研究をさせていただいている私たちが、研究成果を還元するという目的で開催しています。中道先生がいつものように、とても丁寧なお話を構成してくださったので、一般の参加者の方にも大大好評でした。
たくさんの質問やコメントをいただいたので、私たちの方で手分けして返信をしました。もっと質疑応答の時間を作ってほしかったとのご意見を頂くほど、熱心に聞いて頂きました。お世話になった学生による卒・修・博論の成果発表や、ベテラン研究者の話題提供、淡路島モンキーセンターの職員さんとボランティアさんと研究者のクロストークなど、今後もオンラインイベントを開催していきたいと思っています。
リアルタイムでは、240名ほどの方にご視聴いただいたようです。10日間アーカイブを公開して、ユニーク視聴者数が800名くらいなので、たくさんの方にご覧頂いています。今後もアウトリーチ活動を通して、淡路島モンキーセンターの支援や研究活動の活発化に繋げていきたいと思っています。アーカイブはしばらく公開しておきますので、ご興味のある方はご覧ください!
本セミナーの開催は、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・IMPACTオープンプロジェクトの支援を受けて実施しています。