子どもはいないが旅行で泊まるなら温泉旅館やラグジュアリーホテルではなくファミリー向けの大箱がいい。特に年季が入ったところは空間つかいが贅沢でせせこましくないのが良い。そして何より、そんな大箱ホテルをまんべんなく歩き回るのが楽しい。タバコを吸うわけではないが喫煙室をのぞきに行ったり、需要に応えるために増築した別館への長い廊下を、スリッパをしゅたしゅたと引きずりながら歩き回るのだ。こんなに大きなホテルだからもう手が回っていない箇所も珍しくない。よく見ると蜘蛛の巣が張っていたり電球が切れかかっていたり絨毯が剥げかけていたりするが、嫌悪感よりもホテルの大きさを感じることになりやはり上機嫌になるのだ。さんざん歩き回ったあとに誰がいつ使うのかさっぱり分からな場所にポンとベンチが置いてありそこに腰をかける。ぼおぅっとしていると、こんな大きなホテルの中で誰も通らずに自分一人きりの時間が生まれ心地よい感覚になる。大勢の客がいるはずの空間のなかで自分一人だけがここにいる、自分は他とは違うといったなんともしようもないヒロイックな酔いを味わうことができる。












