石田尚志「渦まく光」展
今月末まで横浜美術館で開催されている石田尚志氏の大規模展に、繰り返し三度鑑賞に行きました。特に芸術の教養を持つわけでもなく、しかし長いこと現代芸術作家のさまざまな表現や生き様に興味があり憧れていた自分ですが、初めて”お気に入り”と言えるような作家と作品群に出会え、人生の大事な宝物がひとつ増えたような感銘を受けました。
曲線と矩形を主なモチーフとして紙や空間に描かれていく作品は、コマ撮りで空間軸や時間軸方向に展開する映像や、制作過程の終端である抽象画として提示されます。その佇まいは実験映画やドローイングアートという枠組みを超えて作家のアイデンティティや身体性を強烈に訴えてきます。作品の殆どは具体的なテーマや比喩はなく、ただ線を描くという行為そのものを、様々な手法で突き詰めているものばかりでした。
自分は氏の描く曲線が特に気になったのですが、アニメーションで伸びたり広がっていく線には独特のリズム、メロディ、ハーモニーがあり、音楽そのものと感じられました。実際クラシック音楽に手書きのVJを充てたかのような音楽を主題とした作品もあるのですが、それ以外の無音の作品もまるで氏の頭の中では音楽を作っていて、それを絵画に変換しているのではないかと思えるほど、極めて音楽的な線の表現でした。他にも多くの芸術家が音楽の可視化に挑んでいますし、氏もインタビューなどで音を描く欲求について言及してるのですが、氏のそれは模倣や代替表現ではなく、音楽そのものに感じられます。
氏の音楽的嗜好はクラシックであり、道具も絵の具やインクを中心とした伝統的な画家の風体ではあるんですが、時間を細切れにするストップモーション撮影の技法やレイヤーを重ねて複雑に塗り潰していく技法は、それぞれグレインシンセサイズやドローン、クラスターといった現代の実験電子音楽の手法に何か通ずるようにも感じます。
今回の展覧会の構成ですが、紙上のストップモーションから始まり、そこからパフォーマンスや空間インスタレーションに発展していく展示は、構成全体が作家性を表現しているような入れ子構造に感じて、とても見応えがありました。一度見て後ほど時系列や各作品の解説やインタビューでの言及などを整理して、2回3回と見に行き、その都度2時間じっくり見入ってしまうほど楽しんできました。
これを書いた時点であと2日しか残されていませんが、時間と興味のある方はぜひ。
参考
公式による石田尚志氏へのインタビュー動画
2度目に同行したR-9君の感想記事
















