「友人が不忍池のほとりで もう夏は終わったよ と言った 次の日から 本当に夏は終わってしまっていた 私がひとり布団の中で短いまばたきをしているうちに」
「今年の夏は 夏がはじまる前からもう夏が終わることばかりを考えていました」
「少し強い風が吹いて かぼちゃ色のワンピースが線路に飛び込んだ 線路の向こうには入道雲が高くのびていた 割れるような警笛を鳴らしてホームに入ってくる電車を見ながら私は 小さい頃にかぼちゃサラダが苦手だったことを思い出していた 確か上京して一年目の夏のはじめのことだったように思う」
「見て見ぬ振りが得意な俺にも 思わず眼を奪われた夏の夕焼けがあるんだ」
「日傘の下に 白い花を見つけました その花は夏にだけ咲く花」
「夕立が通り過ぎます たいせつな心は見え隠れしています 夏の雲は 東京よりも私の故郷のほうが おもしろい形をしていました いつかあなたに故郷の夏雲を見せたいと思っています 図書館の裏の林で ヒグラシの声も聞きたいな あなたの故郷の夏雲はどんな形でしょう 今日はどうやらもう一度夕立がやってくるようです」
「朝のベランダにやってきた宅急便 森の土の匂いが届く」
「今年のお盆はお墓参りに行けなかったので 蝉を公園に埋めて両手を合わせてみました ふと背中が軽くなる思いがしました そちらは元気にしていますか」
「夜明けの空に 2本の飛行機雲が出逢ってひとつの交点を結びました 空は真っ赤な朝焼けになりました」
「みんな夏だ夏だ言い過ぎていると思う 私が夏だったら嫌だ」