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助けて
私にはもう肉体しか残っていない。あとは殺すだけなのだろう。
逃げようと誘う手をとる行く先は奈落の底か無限地獄か
「逃げよう」「何処に」「俺は何処でもいいよ」「地獄でも?」
こんなモノどうでもいいと言うくせに捨てない彼の生の執着
「こういうの、いるの」「なに」「前の男にもらったんだろ」「そうかも」「捨てるよ」「あなたは何を捨てるの」
あの頃のシネマライズを覚えてる? 生も死もシンプルだった頃
いつもの横顔。いつもの指。昨日、あれだけの思いで決心したはずなのに、そんなことなんてどうでもいいと思いながら、いつもの助手席に乗っている。昨日のことを思い出そうとするが、どの場面も昔観た映画のようで現実感がない。決心はもうどこかに消えた。こうしていろんなものを失くして自由になるのだろうか。
もう誰も殺さぬようにこのへんで失礼します跡を濁さず
雑踏。ラジオのニュース。SNS。氾濫する悪意の中で私たちの拠り所になるのは皆いつかは死ぬという事実だ。死に向かっているから死なずにすんでいる。何とか生きていられる。死だけが生きる理由。
行列ができる店より断罪の列に並ぶわ死の行列に
向こう側へ続く行列。うつむいて並ぶ人々。私も罰を受けるために並ぶ。早く断罪されたい。行列は遅々として進まない。早く断罪されたい。死ぬことすらできない無能の私はひたすら待つことしかできない。
この街はよく知ってるの路地裏の猫と通った世界の裂け目
「どうする?」「なに」「これから」「どこか行きたい」「珍しいな。どこに行きたいの」「ここじゃなければどこでも」「じゃあ、知らないところに行こう」「私はここしか知らないの」
靴擦れの痛みはどこか優しくて初めての日を思い出してる
「足、痛いの?」「少し」「抱っこしてあげよっか」「やめて。恥ずかしい」「俺は恥ずかしくないよ」
この先に幸せはある? 暑いねと言い合いながら進む葬列