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#LB_2016
Looking for the Melted Crystal 〜Why Now? City Pop 90s〜
1977年、大橋純子はこう歌った「ここはいつでも不思議な町 クリスタル・シティー / そうよ 今日もあなたを待ってる (クリスタル・シティー)」。そして同年、大貫妙子はこう歌った「値打ちもない 華やかさに包まれ / 夜明けまで 付き合うと言うの (都会)」。1975年辺りを皮切りに花開いたシティポップは1980年代に最も栄えた。アメリカ文化やリゾートへのあこがれと(当時を知らない僕たちにとって推し量る事しかできないが)「都会的でお洒落な」シティポップは時代のムードに重なり、曖昧な言葉・定義である音楽ジャンルに息吹を与えた。
80年代後半に向かうにつれてシティポップのミュージシャン達の多くはブラック・コンテンポラリーに接近した。当時最新鋭のデジタルサウンドを駆使したブギー・ファンクの数々、レコードからCDへの移行期であったこれらは現在では希少な音源となっている。閑話休題。時代の「雰囲気」であったシティポップは新しい時代の雰囲気によって衰退してしまった。バブル景気によって都会的な物事が日本中を取り巻き、あこがれは日常に、シティポップは「値打ちもない華やかさ」となりその終焉を迎えた。
21世紀初頭には一部のミュージシャン達がシティポップを志した作品を手掛けたが、ヒットには恵まれず約20年間シティポップは死に体を晒し続けた。流れが大きく変わったのは恐らく2012年。一十三十一の”CITY DIVE”のヒットがあり多くのミュージシャンがシティポップを歌い・謳い、「都会的でお洒落な」シティポップは若者達からの支持を集め、果ては「新しいシティポップ」と呼ばれるインディーズ・バンドまで現れた。
このブームにより1970年、80年代のシティポップの音盤は数年で多くが再発をされ、日の目を見る事となった。その様な時代を生き、カタログ化されたシティポップを愛聴する僕にとって当然の疑問が生まれる。「1990年代のシティポップは存在しないのか?」この興味が生まれたのは2015年の晩秋。同じくシティポップを愛する友人である台車くん(@inudogmask)から渡された森川美穂やANNAの音源にはその答えが詰まっていた。この企画はここから始まった。
インターネットを使い、BOOK OFFや町のレコード店に足を運び、時にはAmazonのマーケットプレイスに通い90年代のシティポップを探し求めた。今回のコンピレーションは各々が持ち寄った「90年代に溶け出してしまったシティポップ」であり、「何を今更?」と思う方々への問題提起であります。最後に、本企画にあたって大きな情報源となった『90年代シティポップ記録簿』と、同時期に90年代のポップミュージックを記事にした『2016年のリスナーのための1990年代J-POPディスク・ガイド――BOOKOFF Zombies and Survivors』、そして我々の価値観に多大な影響を与えた『Light Mellow 金澤寿和氏』に敬意を。 (thaithefish)
[ Disk.1 ]
1: 障子久美 - city plot (1992) 作詞:障子久美 作曲:障子久美 編曲:Tom Keane
4thAL『because it’s love』より、クリスタルな質感を携えたシティポップ。90年代前半のガールポップの中でも本格的なソウル、R&Bを趣向していた障子久美は早すぎたJ-R&Bの徒花。まさにMelted Crystal。(台車)
2: frasco - 風に乗って〜breeze〜 (1996) 作詞:政野早希子 作曲:鳴海寛 編曲:多田牧男・鳴海寛
東北新幹線の鳴海寛、シティポップの職人ギタリストな彼が中心となり結成されたトリオがfrascoだ。タイトル通りのブリージンなポップス。東北新幹線こそがシティポップと思う僕としてはこれともう1曲…それは次回に是非。(タイ)
3: More Than Paradise - 夏物語 (1991) 作詞:MITSUYO 作曲:安倍恭弘 編曲:船山基紀
船山基紀プロデュースによるA-mi、鈴木雄大、景家淳からなるユニット。船山基紀が趣味でラテン系の音楽をやりたいが為に組まれたユニットでもある。それにしても鈴木雄大、松原正樹、桜井哲夫、神保彰、そして本曲では安倍恭弘が名を連ねているこれを趣味と言っても良いのですか。(タイ)
4: The Chang - 春一番が吹いた日 (1995) 作詞:石井マサユキ 作曲:石井マサユキ
いわゆる喫茶ロックというジャンルに括られるだろうか。はっぴいえんどやシュガーベイブといった70年代日本のシティポップスの礎を築いた彼らの音楽性を直接受け継いでいる最高のドライヴミュージック。新しいシティポップ好きにも是非聴いてほしい。(台車)
5: GIRLS BE - Who Are You ? (1997) 作詞:こなかりゆ・尾上文 作曲:宮田繁男 編曲:宮田繁男
豊島真千子と桑島法子の声優2人組によるユニット。漫画「BOYS BE…」のオリジナル・サウンド・トラックを謳った渋谷系サウンドはアキシブ系のパイオニア?はたまた”Blue Avenue”へと導くセンチメンタル・ジャーニー?(タイ)
6: 熊谷幸子 - サーカス サーカス(1993) 作詞:マイカプロジェクト 作曲:熊谷幸子 編曲:熊谷幸子・松任谷正隆
松任谷正隆が主宰するマイカミュージックラボラトリー出身であり、作風や歌い口から「第二のユーミン」と呼ぶ声もあったメロディメーカー。ニューミュージックの潮流を受け継いだ彼女独特のメロディが耳をとらえて離さない。(台車)
7: 黒沢律子 - Give Me Love(1990) 作詞:黒沢律子 作曲:横山敬子 編曲:三好敏彦
知る人ぞ知る90sブラコン歌謡『純哀』など、ヒットには恵まれなかったものの今だからこそ聴きたい良曲を残している彼女。今回はあえて純哀と同時期作のクールなエレクトロ・ブギーをチョイスしてみた。(台車)
8: GWINKO - 夏の終わり、近づいた空 (1990) 作詞:大山潤子 作曲:柿崎洋一郎 編曲:柿崎洋一郎
沖縄アクターズスクール出身、1987年14歳でデビュー。ブラコンとアイドル的要素をうまくまとめている好ブギー。そしてGWINKOのサウンドに今もっとも近いのはEspecia。歌い方にも脇田もなりの雰囲気を感じるのは気のせいか。(台車)
9: 坪倉唯子 - Taxi-Driver (1990) 作詞:亜蘭知子 作曲:神保彰 編曲:M-Project
B.B.クイーンズのボーカルでも知られる坪倉唯子による亜蘭知子のカバー。演奏陣も青山純(ds)、伊藤広規(b)が参加しており、サウンド面の良さは折り紙付きのライトメロウな一曲。ちなみに『おどるポンポコリン』は同年発売。(台車)
10: Trade Love - Seaside Love (1995) 作詞:島影江里香 作曲:大門一也 編曲:徳永暁人
島影江里香(ELIKA)によるソロユニットTrade Love。イントロから心をグッと掴まれる常夏のリゾートミュージック。島影江里香の真っ直ぐに突き抜けた声質に絡み付くメロウ・グルーヴ、一言で形容するなら「ZARD meets シティポップ」。(タイ)
11: 宇都美慶子 - ベイ・ブリッジも泣いている(1991) 作詞:宇都美慶子 作曲:芳野藤丸 編曲:鈴木茂
90年代に流行したガールポップ歌手の中でも、シティポップの路線を継承したアーバンポップを得意とした宇都美慶子。しかし悲しいかなこの時代にありがちなチープさも併せ持つところにこの企画の核心が垣間見える。(台車)
12: 森川美穂 - POSITIVE (1991) 作詞:佐藤純子 作曲:西司 編曲:中村哲
本企画の柱となった曲。森川美穂の前向きで伸びのあるボーカルを支えるのは、力強いブラスと軽快なコーラス。この西司によるサウンドはJ-POPのど真ん中を捉えた。『これがシティポップ?』そうだよ、これが90年代のムードに溶けたシティポップ。(タイ)
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photo: Dan Ball
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