おすしたべいこ、あるいはその顛末
卒業した名前についての、どうでもいい歴史を書き残しておく。
2017年の夏、僕はそれまで「ましまし」(高校時代のニックネーム)と名乗っていたが、なんとなくアカウントを変えたいと思い、インパクトのあるスクリーンネームをあれこれ考えていた。そして、好物である「寿司」を名前に入れようと決める。しかし、検索してみると「すし」が付くアカウント名は意外とたくさんあることに気づいた。さあどうしたものか…スマホとにらめっこしながらリアルに2時間ほど悩んだ結果、そういや誰かとご飯に行く時「◯◯食べ行こ」って誘うよな…だったらそれを名前にしちゃえば良いのでは…と謎の着地点を見つける。「おすしたべい子」爆誕の瞬間である。
…そう、「おすしたべい子」、である。当時は特に「ジェンダーバイアスのない状態で自分のツイートを見てほしい」という思いが強かったので、Twitterをパッと見ただけでは性別が分からないようにしたかったのだ。ただ、なぜか「子」を付けてしまったため、女性に間違われることが圧倒的に多く、ある時には勘違いした男性からお茶や通話のお誘いDMが届いたりもした(もちろん丁重にお断りした)。そんなこんなで懲りた僕は、翌年4月に「おすしたべいこ」へとマイナーチェンジ、それから約4年間名乗り続けた。
「おすしたべい子」になってすぐ、僕は『出前寿司Records』を立ち上げた。Twitter上で有志を募って共同運営するブログだった。それ以降、僕は形を変えながらも音楽の記事を書き続けた。2018年の秋にはシューゲイザー周辺を専門に扱うメディアとして『Sleep like a pillow』も立ち上げた。あくまで「オウンドメディア」にこだわった。それらが巡り巡って繋がって、今、幸いにも音楽メディアで仕事をしている。
2021年7月某日、僕は突発的に決断を下した。もう「おすしたべいこ」を卒業しなければならない、と。
2018年、僕はとあるツイートがきっかけで「プチ炎上」なるものを経験したのだが、実はその時点で真剣に名前を変えることを考えていた。しかし、その場では思いとどまってしまう。それからというもの、僕の中で「おすしたべいこ」は露悪的なイメージと強く結びつき、僕を苦しめるようになった。しかし、執拗に「おすしたべいこ」にこだわった。いいねが欲しい、ちょっと捻ったツイートをしよう、いいねが欲しい、このぐらい攻めた発言の方が注目されそう、いいねが欲しい、こんなこともしてみちゃおうかな、いいねが欲しい、今日はそれとなく自慢でもしてみようか、いいねが欲しい…。そうやって悪ノリしていた「ツイッタラー」時代のアイデンティティが時折顔を覗かせ、自分自身の首を絞める。それなのに、こだわり続けてきた。
だが、それに何の意味があるのだろうか。
おそらく「おすしたべいこ」という名前では、これ以上ライターや編集者としては上を目指せない。名残惜しさにかまけてダラダラと名乗って良い名前ではない。確かにインパクトのある名前かもしれないし、もしかしたら多くの人に覚えてもらっているのかもしれないが、それは死守するほどのメリットではない。バリバリ活躍している同業者と同じフィールドでやっていくためには、自己を改革しなくてはいけない。だったら「卒業」したらいい。単純な話だ。そういう結論に至った途端、視界が少しクリアになった気がしたのだ。
そして僕は、新たに実名で活動することにした。
実名。その重さは理解しているつもりだ。これは過去の自分に対しての戒めでもある。自分の発言、あるいは自分の書いた記事、もっと言えば自分が編集に関わった記事に対して、責任を持つ。そうすべきだということに、大の大人がようやく気づいたのだ。「遅いよ!」と言われても仕方がない。笑われたっていい。
ただ、「おすしたべいこ」時代に培った人脈は、今確実に活きている。これだけは断言したい。散々やってきたが、それについては感謝しなければならない。ありがとう、「おすしたべいこ」だった自分!
でも、もう君の力がなくてもやっていけるよ。













