TRAKTOR 2.5 新エフェクトユニットの全て
TRAKTOR 2.5ではController Managerのコマンド名が刷新された。既存のマッピングについては初めて2.5にインポートするときに新しいコマンド名に変更されるので特に問題は起きない…はずだった! しかし、実際はコマンド名の整理・整頓に伴い、特殊なマッピングを施すDJはもとより、デフォルトで使用している人にとっても操作感に違いが生じてしまった。デフォルトで使用し、新しいエフェクトユニットに慣れるしかない人にとっても、マッピングを駆使して旧来の操作感を取り戻したい人にとっても、新しいエフェクトユニットが今までとどう変わったのかは詳しく知りたいところだろう。というわけで、今回はTRAKTOR 2.5の新エフェクトユニットに迫る!
Expand
2.1.3まではSingleのノブとGroupのノブは別々だったので、図の上段のようにREVERBを50%まで上げた状態でモードをSingleに変更し、後ほどGroupに戻ってくれば、REVERBはそのまま50%の状態で待っていてくれた。2.5になってからはこれが変わり、SingleからGroupに戻る際にはそのときのHPノブの状態が引き継がれるようになったので、下段の状態からGroupに戻すとREVERBは0からのスタートになる。
この変更の狙いは明らかだ。S2/S4をはじめ、コントローラーのエフェクトユニットはそもそもSingle/Group共用が一般的だ。つまり、今回の変更を通し、ソフト側がハード側に忠実になったに過ぎない。しかし、これが不便になったと感じる向きもあるだろう。例えばSingleではDry/Wetノブを使用するがGroupではWet100%固定で良いという場合、今まではこれが簡単に実現できたが、今後は少々の工夫が必要になった。
一方で、マッピング派にとっては大きな前進といえる面もある。今まではSingleエフェクトのパラメーターはSingleモードのときに、GroupエフェクトのパラメーターはGroupモードのときにしか操作できなかったので、ワンプッシュでモードを切り替えつつパラメーターを変更するボタンというのはマッピングできなかったのだが、今回の変更でこれが可能になった。
もうひとつ真っ先に気付くのは、Single EffectがGroup Effect 1と共用になったことだろう。
より厳密にいうと、Single Effectというのはもう過去のもので、今はEffect 1〜3という3つのエフェクトがあり、Singleモードに切り替えるとEffect 2〜3が使えない代わりにEffect 1の詳細なパラメーターを設定できるようになった、といったところだ。
この変更も先ほど同様、不便になったと感じるユーザーもいれば、前進だと捉えるユーザーもいるだろう。例えばそれぞれのモードにお気に入りのエフェクトを装備しておき、SingleとGroupの切り換えだけで4つのエフェクトを常用していた場合は一気に操作が面倒になっただろう。一方で、共用のノブ同様、ワンプッシュでSingle→Groupに変更しながらGroupエフェクトの内容を変更するマッピングが可能になったのは一部のマッピング派にとっては朗報だ。
ただしマッピング派にとって良いことずくめかというとそうでもなく、例えば今まではエフェクトが共用じゃないのを良いことに、Singleの場合はAということをするが、Groupの場合はBということをする…といったマッピングを深く考えずにボタンに共存させられたが、今後はModifier ConditionsでEffece Modeの条件設定を追加するなど、区別するための工夫が必要になった。
続いて、マッピングをしないユーザーにとってはちょっと気付きにくい変更が、ボタンも共用になったことだ。
共用といっても、例えば図の状態でFlangerがOnのときにSingleに変更してもFreezeがOnの状態で起動するわけではない。ということはボタンだけは個別なのか…と感じるかもしれないが、実はそうではなく、ボタンは、モードを変更する再に強制的にデフォルト状態にリセットされるのだ。この点についてはまた別な変更点の結果なので後述するとして、その前に補足すると、実際にボタンが個別だったころはGroupのReverbをOnにしたままSingleに変更し再びGroupに戻ってきた場合はReverbがOnのまま待っていてくれたのだが、今後はいちいちデフォルト状態(設定可能)にリセットされる。また、繰り返しになるが、「Group Effect 1をOnにする」といったマッピングをする際に、モードがSingleの場合の競合を考えなければいけなくなった。
さて、一番細かい変更でありながら、実は一番影響が大きいのでは無いかと危惧しているのが次の変更点だ。
プリセットの仕組みが微妙に変わったのだ。といっても、プリセット機能が保存する内容が変わったのではない。念のため補足しておくと、プリセット機能は、図のフロッピーディスクマークをクリックすると、Groupに関してはオン・オフとパラメーターを、Singleに関してはDry/Wet、オン・オフ、3つのパラメーター、そしてリセット以外の2つのボタンのオン・オフを、エフェクトの種類ごとにデフォルト状態として記憶する。例えば上段の状態でプリセットを記録すれば、その後GroupモードのいずれかのスロットにReverbを装備すると自動的に50%でOnの状態となる。と、ここまでは今までと変わらない。
何が変わったのかというと、まず、今まではこの自動プリセットをオフにすることが出来た。
これにはRestore parameters when switching FXというオプションからチェックを外せば良く、この設定は2.5にも残っているが、ボタンに関しては設定に関係なく必ずリセットされるようになってしまった。
これは想像に過ぎないが、おそらくボタンの共用化に伴う妥協だったのだろう。例えばSingleエフェクトには必ずResetボタンがあるが、これは押すと単発でリセットする仕組みなので、Onのママ放置、ということが不可能だ。ところが、ボタンはGroup/Single共用となった。ここで「リセットしない」という選択肢を与えてしまうと、Effect 1 Onの状態でGroup→Single→Groupと変更した場合にどうしても矛盾が生じてしまうのだ。
そしてもうひとつ、実は、この発見が今回の記事を作成しようと思ったきっかけなのだが、自動プリセットが適用されるタイミングが変わった。
TRAKTORは同時に指示されたことを特定の順番でこなす仕組みになっているのだが、例えばEffect 1の変更とEffect 1のOnを同じボタンにマッピングした場合、今までは「Effect 1の変更→プリセットの適用→Effect 1のOn」という順序で実施していた。つまり、例え前述のRestore parameters...オプションがオンになっていても、個別のマッピングが最終的な権限を握っていたのだ。
しかし、今回の変更でこれが「Effect 1の変更→Effect 1のOn→プリセットの適用」という風に、同時に指示された各コマンドの最後にプリセットを適用するようになってしまった。つまり、どんなに創意工夫をこらしたマッピングをしても、Effectの変更(あるいはModeの変更)を含んでいれば、創意工夫を全て吹き飛ばし、プリセットの状態に帰着してしまうのだ。
その上、これではタマランとRestore parameters...をオフにしたとてボタンに関しては関係ないので、エフェクトの変更と同時にオン・オフやパラメーターを変更するスーパー・ボタン系のマッピングが普通に考えると不可能になってしまったのだ。
ノブの共用からエフェクトの共用、ボタンの共用と強制リセットまでは、賛否両論あれど成し遂げたかったことは理解出来るし、そのために必要な妥協もあったのだろう。ただ、最後のプリセット適用のタイミングに関してはどうしても意図を理解できない。これに関して現在、どういう意図があったのかをリサーチ中なので、何か判れば続報として掲載する。
最後に、先ほど「普通に考えると」と太字にしたスーパー・ボタン系のマッピングだが、解決方法を見つけたので記載しておく。
最初に思いついたのは「一番使いそうなパターンでプリセットする」というものだった。例えばReverbに変更しつつOnでHoldするボタンを良く使うとしたら、Reverbのデフォルト状態をOnにプリセットするのだ。そうすればボタンを押してReverbに変更した場合はプリセットのおかげでOnになり、離すとHoldモードのおかげでオフになる。このボタンに関しては望み通りの動きだが、難点としては、他の仕組みで動作するボタンを作りたい場合も、Reverbを装備すると(一旦)必ずOnになる、という条件と付き合っていかなければならないことだ。
かなり制限されるけど、我慢するしかないか…と落胆しながらこのアイディアを共有していた際に、ひとりのユーザーが勘違いをして、マッピングしたボタンの全てにFX Store Preset(フロッピーアイコン)コマンドを追加し「あなたは俺の悩みの全てを解決してくれた」と感謝してきた。どういうことかと思っていろいろ実験してみたところ、プリセットが適用されるタイミングが今度は功を奏したようだ。
Effect変更→もろもろの操作→プリセットの適用
という順番で実施され、中間のもろもろの操作が全ておじゃんになるのだが、FX Store Presetを追加すると:
Effect変更→もろもろの操作→プリセットの保存→プリセットの適用
と実施されるため、事実上、最後のプリセットの適用が関係なくなり、もろもろの操作が反映された状態で停止するのだ。
かなり泥臭い解決策だが、以前のバージョンでのRestore parameters...をオフにしたのと同じ状態を2.5で実現したければ、今まで通りのマッピングに「FX Store Preset」を追加すれば良い。例えるなら、自由奔放をゲットするために、自由にした直後の状態を「規則」として設定し、その「規則」でがんじがらめにしてくれ!とお願いしているような、なんとも摩訶不思議な話である。