『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』 (日・1970)
監督:本多猪四郎 (本編)/有川貞昌 (特撮) 脚本:小川英/製作:田中友幸/田中文雄 出演:久保明/高橋厚子/小林夕岐子/佐原健二
1970年公開の東宝特撮 『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』 は、同時期のゴジラシリーズとはやや異なる「南海アドベンチャー × 怪獣」という趣を持った作品である。監督は本多猪四郎、特技監督に有川貞昌を迎え、円熟期の東宝特撮スタッフが堅実な仕事を見せている。 ゲゾラはヌメる触手で人間や物資を絡め取る異様な存在感、ガニメは鋭利なハサミによる重量級の破壊力、カメーバは鈍重ながら不気味な持久戦タイプと、それぞれ個性がはっきりしている。中でもゲゾラの造形と動きは群を抜いて印象的であり、海辺というロケーションと相まって生々しさが際立つ。海外版 「Space Amoeba」 のポスターデザインも実に素晴らしい。その一方でドラマパートは、宝石密輸団や島の住民たちの思惑が交錯する群像劇仕立て。ここはやや雑然としていて、物語の軸がブレがちな印象も否めない。ただ、その雑多さが逆に南海のカオスを醸し出しているとも言える。 特撮面では、有川特技監督による水際演出が光る。ミニチュアと実景を組み合わせた浜辺のシーンは臨場感があり、巨大生物が自然の中に紛れ込むリアリティを丁寧に作り上げている。派手さよりも実在感を重視した演出が本作の持ち味だ。 総じて、本作はゴジラシリーズのような都市破壊のカタルシスとは異なり、閉ざされた空間でじわじわ侵食される恐怖を描いた作品。ストーリーの粗さはあるが、南国ロケーションと異形の怪獣たちが生む独特のムードは唯一無二であり、東宝特撮の懐の深さを感じさせる。















