TULALADD 2016 BEST / No.10
10. Mike Gibbs
『The Only Chrome-Waterfall Orchestra』
(1975)
こないだも書いたけど、10年務めた音楽業界から異業種へ移ったことで
当たり前だけど音楽を聴く、収集する、接触する時間は、
おそらく8割減くらいになったんじゃないだろうか。感覚的に。
個人チャートなのでそもそもがそういう性質のものではあるけれど、
それでも今までとは比較にならないくらいシーンの動向やトレンドを見通さ(せ)ないまま、
ただただ個人的な時間と偶然の中で出会った数少ない音楽で今年のランキングは構成されている。
ということでいきなり、10位は、ただの中古盤CD。
青森市のササキレコードに、敬愛するCa-Pのライブを(併設するライブハウス)サブライムに見に行った際に購入。
その日は帰省後3回目のサブライムだったけど、
前回訪店したときに(鳴海徹朗さんの弾き語り目当てだった)目をつけていて、
この日もまだ売れ残っていたので買うことに決めた。
もともとササキレコードとは相性が悪くないのは、
鳴海さんのライブ目的で訪れた帰省後初サブライムにて
長年探していたブルース・コバーン『雪の世界』と出会えた奇跡から始まっている。
ここに、ここにもそれは記してある。
Mike Gibbsは名前こそ知っていたけれど作品を1枚も持っていなかった。知識は皆無に近い。
正直、ジャケットデザイン、タイトルと楽器編成から想像する音楽性だけでこれは良いに違いないと当たりをつけ、
見事その闘いに勝つ、という、最も幸福なパターンで出会えた名盤だった。
それほどレアなアルバムをディグったわけではないけど、こういうのは記憶に残る。
端正かつ表情豊かなジャズロック。品位はあるが、堅物すぎない。
マリア・シュナイダー以降更新された、
ここ数年ホットなラージアンサンブルのモダン・サウンドデザインに慣れた耳にも、
仕立ての良さが魅力的に響くであろうビッグバンド編成のジャズロックが基本だ。
けれどこの作品の優れた点はここだけじゃ無い。
時代的に、当時並行していたニューエイジや(資本に発掘さ始めた)民族音楽、
また現代音楽、特にミニマルミュージックの影響を消化した楽部が大胆に差し挟まれ、
同時期のスティーブ・ライヒが作曲した楽譜をラ・モンテ・ヤング楽団が民族楽器で演奏したような
エスノ・ミニマリズムが炸裂するパートなんかは、
2016年現在先鋭を行く東欧あたりのミニマル・テクノ・クリエイターがDJセットに組み込んでいたとしても、
何ら不思議じゃない。
自宅アパートのCD再生機が不調のため、社用車のジムニーで初めて再生したら、
音質とミックスの秀逸さに驚いた1枚。
なお10位なのでランク外の作品も併記。
レディオヘッドの新譜は、トムの別離が強く作用した、ごく個人的なエモーションの発露が美しいレコードだった。
時代のゲーム、ようやくその最前列から降りることができたからこそ生まれた1枚。
ファンはそこに一抹の寂しさを感じつつ、でも彼ららしい目配せは随所に生きている。
その昔、レディオヘッドをただただ感情のデトックスの道具にしていた友人たちに腹を立てていた自分にも、
やがてこういう時代が来るよ、True Love Waitsなんだ、と伝えてあげたい。