小学生の頃、ぼろぼろの蝶と仲良くなったことがあった。それまでは苦手だった蝶。ぼろぼろの蝶はわたしの目の前でヨタヨタしていた。当時園芸飼育委員会に入っていて、鶏やうさぎとの関わりには慣れていたが、蝶との関わり方はわからなかった。わからないけれど、目の前でのヨタヨタを見ないふりはできず、仕方なく教室に連れて帰った。
ぼろぼろだったので、ボロという名前をつけた。理科室で砂糖をもらって、砂糖水を含ませたティッシュを近くに置いた。筆箱の中には、ふわふわのティッシュエリアも作り、好きな場所を選べるようにしてみた。ボロは飛ばないけど歩く。
最初はあまり可愛いと思えなくて、羽の粉や胴体のふわふわ感にも抵抗があった。ヒョイと手に乗ってきたりすると、うわぁあ〜っ!と大きな声を出してしまったり。
飛ばないボロは、何日もお道具箱の中から出なかった。毎日、くるくるした口?で美味しそうに水を飲む様子や、よたよたと歩く様子を見ているうちに、だんだん可愛いなと思うようになり、ついに握手をした。
指を出すとボロは指にトンとしてくれる。勘違いかもしれないけれど、心が通じたような気がして嬉しかった。わたしは、自分のなかの最小の力で足?に触れてあそんだ。
ヨタヨタしなくなってきたボロは机の上を歩くだけでなく、高い場所まで飛べるようになった。わたしの席は窓際で、いつも窓は全開だった。ボロはいつでも好きな場所に飛べるはずだった。
好きな場所に飛んでいってほしかったけれど、さみしいから飛ばないでほしいという気持ちもあった。
ある日の授業中、窓のふちで遊んでいたボロは、ベランダの向こうへ飛んでいった。風がふいて、よろよろ飛ばされながら、どこかへ飛んでいった。
ボロのおかげで、蝶が苦手だという思いこみから自由になるキッカケをもらえた。
よく知らないことや苦手なことに警戒するような場面に出くわしたとき、ボロを思い出す。
なんとなく苦手かも。と食わず嫌いしそうになるとヨロヨロと飛んでくる。自分が知っていると思っていることを乗り越えて、知らないことたちに出会っていきたい。