キャラマイクの世界へようこそ
マイクに関しては、正直良く分っていないのです。20代の頃、Neumann U87 を持っている友人がおり、それを借りて当時住んでいた4畳半の狭い部屋でアコギとエレキの録音をしたことがあるのですが(諸々大らかな時代でしたね)、レコードのような音が録れると思って意気揚々と録音をしたら、盛大にガッカリさせられましたよ。以来マイクは自分にとっては、ある種の鬼門だったりします。
とは言え、今はマイクの音は部屋の鳴り方次第であるということくらいは、なんとなく分かっています。引っ越ししたり、ギターアンプの音をリアンプしにリハスタに行ったりすると、同じ機材、同じ楽器を違う部屋で録音した際、録れる音は違います。マイクの性能が上がれば上がるほど部屋の鳴りをちゃんと録音してしまうことも分かってきます。そうなると自宅でアコギを録るでも、最初の頃よりは工夫するようになります。
部屋の中で、アコギを部屋のどっち側に向けるのか、カーテン側なのか本棚側なのか、壁と平行にするのか対角線にするのか、あるいは部屋のどこにマイクを置くと汚い鳴りを拾いにくくなるのかを探ったりすることで、「マシな」録音が段々できるようにはなります。「マシな」と書いたのも、要するに部屋の汚い跳ね返りの音は部屋を変えるしかどうすることもできませんので、その中でベターを目指すしかないという話ではあります。
リフレクション・フィルターなる物も、一時期凄く流行りましたので、自分も流されて買って使ってみましたが、あれを使うと全く開放的な音にはならない事が分かった時点で、自分は粗大ゴミに出しました。sE の、皆んなが使っていた奴です。結果だけで言えば、ウチは天井に吸音材、床にラグマット、という対策の方が思った音で録れていると思います。
AEA の KU5A を買ったのも、単純に部屋の余計な鳴りを拾わないマイクであるに越したことはないと思ったからです。使ってみたら、これはとてもとてもクオリティーの高い音で、今まで使ったマイクの中では一番好きな音で録音できました。やっぱり今のマイクの性能は 00 年代民生機の性能を遥かに凌駕しているのだ〜、やったぜとなったところまでは、まあ、良かったのです。それで3曲ほど、それぞれ全く別のアコギを使って録音をしたら、ギブソンであろうがマーチンであろうが、ドレッドノートであろうがシングル 0 であろうが、全部同じ印象の音になってしまうという壮大な罠がそこに待ち受けているのでした。
KU5A は癖が強そうだな・・というのはありましたけど、ここまでとは思っていませんでした。部屋の鳴り方などから、マイクの置き方で音のバリエーションを作ることはできないとなると、もうマイクの種類を増やすしかないのか・・と。
でも、今は良い時代ですね。YouTube にも Sound Cloud にも、膨大な量の機材のサンプル音源が上がっています。50年代〜60年代に作られたそんなに有名でないリボンマイクの音とかでも、聞きたい放題聞ける訳です。一昔前なら右往左往したであろう悩みも一発解消。素晴らしいですよ。そんな中で自分が選んだのが60年代製 Sennheiser MD403 というダイナミックマイクと、50年代英国製 Reslo RV というリボンマイク。どちらも全然有名ではありませんので、お安いのです。
この二本の古いキャラマイクは、音のサイズ感が自分のトラックにハマりやすい、丁度良いところの音像で録れます。あるいは、部屋の汚い跳ね返りの音をはっきりくっきり録音したりもしません。また、これらのマイクは皆んなが欲しがらないから安いのであって、質的な部分で劣っているという事ではなかったりします。基本性能の部分で価格以上のものがあって、それで自分の作るトラックにハマる質感があり、そういうことなら初めからキャラマイクにしとけば良かった〜、と言っても、自分は色々経験したからここに辿り着いたのです。贅沢を言ってはいけません。
もう一点付け加えますと、古いマイクには何やら現行のマイクにはない時間表現があるような気はします。変にカクカクした音像にはならないと言いますか。昔のレコードにある、昔の演奏家の独特の間合いのようなものが、古いマイクを通すことで聞こえてくる気はします。リリース部分の聞こえ方に違いがあるのかもしれませんね。もちろん、再生の回転数が違った時代の録音は抜きにして。
こうなってくると古いキャラマイクは、もう一本欲しい気もします。この方向でばっちり行けると思うので。もっとも、ウチはマイクを使うのはギター以外はもうないですから、歌を録る、とかなら全く別の話になると思います。







