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表象主義に対するイナクティヴな認知論を裏付ける例として「色」がある。色は、所与の世界にではなく、構造的カップリングの歴史(共進化)から産出される知覚という経験世界の中に位置付けられる。色は、知覚・認識能力から独立して「外のそこ」にあるのでもなく、生物学的、文化的世界から独立して「内のここ」にあるのでもない。(物理的客観主義に反して経験的。主観主義に反して、共有された生物学的・文化的世界に属する。)所与の外的世界の回復としての認知(実在論)と、所与の内的世界の投射としての認知(観念論)に挟まれた中道、つまり相互特定化(カップリング)こそ、イナクティヴな認知観の基底である。認知は回復でも投射でもなく、身体としてある行為である。「構造的カップリングの歴史」は例えば、花の紫外線反射と蜜蜂の紫外線視覚の共進化に見られる。どちらが先に有ったかが問題なのではない。この事実は、環境の規則性が所与のものではなく、むしろカップリングの歴史を介して行為から産出(創出)されたものであることを示しているのである。
『仏教と科学――認知科学者の仏教理解を手がかりに――』(司馬春英著、佛教文化学会紀要、2003年2003巻12号 p.l1-l21, 2003)pp.9-10 第3節 イナクティヴな立場の独自性――表象主義に対する批判 第1項「表象」から「行為的産出」へ――表象主義の矛盾とその克服 第2項 ケーススタディとしての色――色はどこにあるのか?