直観は軽薄な手段などではない
多くの人々が直観というものに疑念をもち、それに反発する。直観能力は捕らえ所のない狐火的霊感を意味しない、というのが本論文の趣旨である。むしろそれは日常生活においてつねに作動している基本的な人間の能力なのであり、創造性の研究において広く論じられてきたものである。例えば数学について考えてみよう。証明に確実さを与えるのは究極的にはその説得性であり、我々に与えられている明証の直接性は記号的推論の論理的連鎖を超えている。これこそ直観的明証性の本性である。つまり、それは論理的思考を重ねて得られるのではなく、十分な説得力をもつ明晰さに到達することによって自ずと生じるのである。我々はこの能力を信頼するが、それを体系的に彫琢することにはあまり注意を払わない。論理的思考と推理の間に矛盾が存在することは明らかである。論理的思考なき直観は盲目であるが、直観なき概念は空虚なのである。
『神経現象学 意識のハード・プロブレムに対する方法論的救済策』(Francisco Varela著、河村次郎訳、青土社, 2001, ISBN 978-4791710799)『現代思想』2001年10月号 p.128












