関東屈指のルートで27.5"/650BグラベルバイクBOMBTRACK HOOK EXTを試し堪能する
こちらで触れたBOMBTRACK国内初展開モデルのうち、最も気になる存在がグラベルバイクのHOOK EXTでした。
前後に27.5" x 2.1"というMTBタイアを標準かつゆとりを持って履くため、フルカーボンのフロントフォークもColumbusスチール製フレームのチェーンステイも、装着されたタイアの周囲にはたっぷりと空間が設けられています。
いたるところにボトルケージやバイクパッキング向けのケージを取り付けるマウントが備わり、ラックマウントもフェンダーマウントまでも装備。これすなわち、最新のバイクパッキングスタイルでもトラディショナルなツーリングスタイルでも、それらのミックスでも何でもござれということですね。
このバイクの真価を問うべく、数日分のルートを引き、その道程の殆どを未舗装路やトレイルにしたい。そんな願望を心の奥へ押し込め、今回は前々から行きたかった林道ライドを目的に、いつものように1日で完遂できうる現実的なルートを引いたのです。
実行したのは4/30(月)。天気は快晴。輪行にはじまり輪行で終える1日でした。
Wikipediaによると『群馬県藤岡市から同県甘楽郡南牧村勧能に至るスーパー林道である。延長約67.1kmであり、関東地方の林道としては最長の部類となる。』とある。
東西へ伸びるその長さだけでも魅力的ですが、未舗装路が20km弱もあり、舗装区間であっても西側は荒れている箇所が多く、それらを好むライダーからドライバーまで、乗り物も年齢も問わず多くのファンが目指す林道ということ。そんな情報をネット情報などで知ってからは気になって気になってしょうがなかったのです。
最寄り駅から始発電車に乗り込み児玉駅へ輪行。念願の初走行になる御荷鉾スーパー林道を西へ進み全行程を堪能し、南下した後に一気に東へかじを切り秩父へ向かい、再び輪行で最寄り駅へ戻るというルート。
距離にして約168kmで登りの合計が約3400mなんで、12時間超えのライドを想定。
林道の前後では水や食料が手に入らないと考えて、持ち物は多めにしました。
ボトルケージダウンチューブ上KING CAGEステンレス / 600mlボトルシートチューブKING CAGEステンレス / 750mlボトルダウンチューブ下GRUNGE ネルゲン1.0L用 / 1000mlネルゲンボトルフレームバッグおにぎり x5個、納豆巻 x1本、グミ x1袋、タブレット x1袋、タバコ x1箱、携帯電話、財布リアラックドライバッグ 6Lナイロンジャケット、スペアチューブ、携帯工具、パンク修理キット、ミッシングリンク輪行バッグ
さて、6時半前にはスタート地点の児玉駅に着いたものの、コンビニでの買い出しやらコーヒー飲んだりで実際に走り出したのは7時を回った頃でした。
御荷鉾スーパー林道へ東側からアプローチするルートはいくつかあるみたいですが、今回は比較的選択率の低そうなルートを取ってみたものの、メインへ至るまでに疲れ切ってしまうのではないかと思える程ひたすら続く急勾配に洗礼を受けたのでした。
駅をスタートしコンビニへ寄り、この急勾配を登りきって約19km。
諸々の荷物を含めて17〜8kgぐらいになるであろう車体に2.1"幅のMTBタイアであっても、思った以上によく進むものだと感心したのです。
HOOK EXTに標準で装着されているタイアはWTB社のNANOで、MTBタイアの中でも比較的転がりが軽いと言われているそうですが、それにしてもブロックパターンなわけで、スリックタイアにくらべるとその抵抗は雲泥の差。
走ればブォーっとノイズ音がするわけですが、若干アップライトかつこぎやすいジオメトリと踏めばしっかりと応えてくれるColumbus社のスチールチューブ製フレームのおかげなのか、巡航時も登坂時も速さを求めなければストレスなく走ることができると気が付きました。
そして、その太さが路面の凹凸をいなしてクッションになってくれていることも良く分かります。
今回は全体の12%ほど約20kmの未舗装区間、そう、グラベル区間が待っているので、抵抗になれどもHOOK EXTのポテンシャルを体感するために、このMTBタイアで来る意義があるのです。
とは言え、普段乗っているARISEでは700Cx38のスリックタイアで舗装路も未舗装路も走ってるので、追々は650Bx47や48のスリックタイアも試してみたいですね。
ところで、今回のライドの目的である御荷鉾スーパー林道は東西に伸びる尾根伝いに作られています。そのため、その南北、西へ向かえばその左右どちらかの眺望が良いのだろうと期待していたものの、季節柄か後半へと差し掛かる八倉峠(ようくらとうげ)までは新緑の木や枝葉にはばまれ、それほど楽しむことができなかったが少し残念でした。
その八倉峠、数年前の台風により道がストンっと崩落している区間があるとのこと。もちろん迂回路が設けられていたので、通行には何ら支障がなかったわけですが、現場を目の当たりにした時の驚きは言葉では言い表せないものでした。その様子は後ほど。
コンビニを出発してから3時間。ひたすら登りに登り、遂に未舗装路区間が始まりました。遂にです。
先のとおり、あまり景色に恵まれなかったココまでの道のりでしたが、ここにきてスッキリと見通せる箇所がありました。結構山深いです。少し残念とは言いましたが、眺望に恵まれなくても緑に囲まれ自転車を走らせる事自体に楽しさを感じますし、楽しみにしていた未舗装路を目の当たりにすれば舗装路ばかりの登りの苦痛もやわらぎます。
その楽しみな未舗装路の途中、何気なく見上げた先にあった展望台に据え付けられていた双眼鏡。前橋の方面が見渡せる向きにあり、フレームバッグから取り出したおにぎりを頬張りながらグリグリ観察してしまいました。
しばらく前に標高が1000mを超え、未舗装路に入ってからもしばらく登りが続き、下界では夏日な気温であっても肌寒い空気になってきました。この気温も含めた生活圏では感じられない空気を感じると、出かけてきたかいがあると登ってきたかいがあると思うのです。
まぁ、車やバイクでパァッと来てしまっても良いんですがね...
たしか、このあたりが御荷鉾スーパー林道の、そして今回のピークだったと思います。国土地理院の地図によれば1470mほどの標高。ピーク感のない質素な風景ですが、僕にとってはようやくこの林道のピークを超えた感慨深き場所。
そんなことを言っても、この日の全体の1/3くらいにまでしかたどり着けてないんですけど...
未舗装路区間に入ってからというもの、その路面状況だったり風景だったりを写真に収めるべきとは思いつつも、楽しさが上回ってしまいあまり撮らないのは悪い癖ですね。肝心なところなはずなんですけれども。
そんなわけで、未舗装路の様子を収めた数少ない写真がこの2枚。
撮った箇所は荒れが少なく、今回のMTBタイアでは快適そのものだし、仮にスリックタイアであっても太さがあれば不安なく通れる状況でした。小気味よい小石の凹凸が気持ちよかったです。
ただし、気を抜くことなかれ。雨水の通り跡、落石、プチ土砂崩れなどなど、コーナーの先には何が起きているか分からないので、気持ちが良いからといって気を抜くことなく自制心を持っていつでも止まれる態勢で臨みます。これはどこを走ったとしても同じ気持ちなのですが、交通の往来が少ないところでは、整備が行き届いていなかったり行き届きにくかったりするようだし、安全第一で進みます。
とかいって、たまにひとりでヘッドスライディングを決めたりするんですけどね...
そして、いよいよ前述の崩落現場、八倉峠に到着です。↑見ての通り、ストンっと道が途切れてるんです。その下はそのまま崖でゾッとする高さなんですが、↓視線にはこんな素晴らしい景色が。
なんでココでパノラマ写真や動画を撮らなかったのか悔やんでいるところですが、ココからGoogleストリートビューが見れるんで、ぜひ見てみてください。
人間にとっての得は山にとってはそうでないことがあり、自然の美にも敵わないだろうし、その光景は恐怖でもある、なんて思ったりしました。一生懸命に道を造っても、山が嫌がればイチコロですから。道を作った人、そして八百万の神様にも感謝し、日々遊ばせてもらっていると思うのです。
この崩落現場では、良き出会いもありました。
到着すると崩落した道の突端であぐらをかく男性がいて、とりあえず「こんにちは。」と声をかけると、ニコニコと返してくれる。この男性はバイク乗りの方で、この林道へは良く出かけてくるらしい。話を聞いていると、この崩落現場も好きなようだし、これから向かう先の様子なども教えてくれ、話が弾む弾む。
すると、「これウマいよ。」ってまんじゅうを分けてくれ、「実はこの先にお気に入りスポットがあってさ。」と言う。聞けば、崖から飛び出した岩が仁王様の顔に見えるのだそうだ。
男性よりも先に崩落現場を後にし先へ進んだわけなんだけど、そろそろ聞いていた岩のあたりかなと思っていた頃、後ろからバイクの音。なんと、その男性が実際にその場まで行き教えてくれるというのだ。そこそこの勾配だったこともあってこちらはゆっくりなんだけど、岩のあたりで待っていてくれ、指を指して「これこれ。」とニコニコしながら教えてくれた岩。
光の加減でできた影が岩を顔に見せてくれるそうなのだが、この日は残念なことにただの岩にしか見えず、その男性も残念そうな顔をしてしまっていた。
でも、乗り物は違えど林道ライドを楽しむ同胞としてなのか自分のお気に入りスポットを教えてくれ、しかもわざわざ追いかけてまで案内してくれたこの男性にこころから感謝した。とっても良い人だった。65歳くらいだろうか?丁寧にお礼を言い、お互いの安全を願い各自別々の方向へ向かったのだけれど、こんな出会いも外へ出かければこそだ。
八倉峠を後にし舗装路になり、続いて到着したのは御荷鉾スーパー林道展望台。
ココの見晴らし、最高です!チョー気持ちいい!展望台は南を向いていて、奥武蔵や奥秩父の方面を一望です。尾根の北側、富岡から山菜採りに来たっていう爺ちゃん婆ちゃんと、東京から来たというバイク乗りの人と4人で、この景色がどれだけ素晴らしいかをさんざん言い合ってその場を後にしたくらい。
そういえば、この展望台へは林道からスロープを上っていくんだけど、その入口に生えている桜が満開でした。下界じゃひと月前の出来事だった花見が再度できて、ちょっと嬉しくなりました。
さあ、初ライドの御荷鉾スーパー林道もクライマックスへと差し掛かります。
塩之沢の分岐にて、北へ向かえば南牧村の東側の街へ、そのまま西へ進めばこの林道の終点になる南牧村西部の集落へ向かうことになります。このライドでは終点まで行くことも目的にしているので、迷わず西へバイクを進めます。
崩落現場で出会った男性から、この先の未舗装路で転んだことがあると聞いていたので気を引き締め直しつつ、ワクワクしながら観光案内図なんかを眺めたりしたのです。
南牧村へ入ったことを喜んだり隧道・オン・ダートに盛り上がったりと、塩之沢の分岐を過ぎてから現れた未舗装路区間を登りも下りも楽しみつつ、でも舗装路の登りはなぜだか辛く、それでも何とかどうやら山超え谷超え終点の集落までたどり着いたのです。
分岐を過ぎてからの林道は、未舗装路の荒れが若干増したこと以上に舗装路のあれが目立ちました。↑この写真を取った箇所はそれが顕著で、砂利や土の未舗装路よりも気を使いながらバイクを進めるタイミングがありました。至る所にアスファルトの亀裂があったり、散乱している落石や落枝など、それに驚かずむしろ期待するくらいの気持ちで進めば心構えもできており、適宜対処できるものですね。
そうしてたどり着いた集落。古い家が多く、ちょっとタイムスリップ感があるし風情も感じます。
実は、この集落までに5個のおにぎりに1本の納豆巻きは食べ尽くしていて、お腹が減っていなくとも食事をするなり食料を買うなり何らかの補給を考えたのです。ところが、この集落では表通りを走って見る限りではそれらしい店は見当たらず、しかたなしに東へバイクを進め、その先の街を目指します。
街に差し掛かり、何か無いかとキョロキョロしながら走っていると、「山賊ラーメン→400m先」の看板が目に入ります。表通りを右折し400m。ありましたありました「山賊ラーメン」と看板の掛かった建物。そして駐車場には数台のオフロードバイク。
その建物はおよそラーメン屋には見えなく、なんとも怪しげだったけれども、ココまでに90km以上の距離に2200mほど登っており、まだまだこの先もあるため食事が必要と判断。オフ車乗りも入っているようだし、物は試しで入ってみると、中はなんだかスナックのような椅子とテーブル。店のオバちゃんに聞くと元はカラオケショップをやっていたと言う。なんとなく納得。
肝心のラーメンはというと、しっかりコクのある塩スープに太ちぢれ麺、そして炭火焼きの鶏肉とごぼうや人参のきんぴら、さらに紅しょうがのトッピング。なんだかウマいんですよ、このラーメン。きっとまた食べに行きます。
ちなみに、これが山賊ラーメンで、その他にきんぴらラーメンと餃子。その3つしかメニューはなかったと思います。しかも11:00〜15:00の営業。ここで詳しく解説してる人がいたので、気になる人はチェックしてみてください。
こうして思わぬところで良好な腹ごしらえを済ますことができ、この日のゴールである秩父駅へ向かうことになるのだが、距離にしておよそ75km。そして1250mは登ることになるらしい。やはり、ここでのラーメンは正解でした。
再スタート直後に現れた峠。これを越えることで先ほどの塩之沢の分岐へ戻ることができ、さらに秩父方面へと繋がる国道299号線へと至ります。
しかぁし、この峠が強敵でした。長いし斜度もあるし、食事の直後に走るところじゃないなと黙々と進んだせいもあって写真なんか何も取る余裕がありませんでした...10kmくらいずっと登りで、平坦も下りもなし。きつかったっす...
そうこうしてると先の分岐に再度たどり着き、あの案内図とも再対面。そして国道299号線を目指して一気に下っていきます。グネグネとタイトなコーナーが続きますが、気が付くと道幅が拡がり、山肌のツヅジなんかを楽しんじゃいます。
MTBタイヤでも比較的快適に巡航できることや思いのほか登っていけることは上の方で書きましたが、未舗装路や荒れた路面での安定感、そして下っているときの安心感についても、今回の相棒であるHOOK EXTのポイントだと思いました。
安定感と安心感は、たとえ僕のように探検ごっこやプチ・アドベンチャーを楽しむ身としても重要なポイントです。もちろん自転車は自分で操るものですが、体を預けている部分もあるわけで、その車体がしっかりとしていることは大切であるとつくづく思ったのです。きっと、この安定感ならば、荷物を満載にした本格的なバイクパッキングであっても安心して旅を続けられるのではないかと思います。
国道299号線は、ライドイベントで反対方向から八ヶ岳方面へ向けて2度走ったことがあり、この日はそれを逆上ることになるため、なんとも不思議な感覚でした。そして、そのライドイベントで補給ポイントになっていた道の駅ならぬ川の駅では、ここからの舗装路オンリーの走行に向けてハンドポンプで空気圧をアップ。東京のライダーにも有名な志賀坂峠を目指します。
ちなみに右上の写真の時点で17:30を回ってましたので、志賀坂峠を越えてからはナイトライドになります。
あの恐竜の足跡を拝みつつ登っていき、ふと振り返ると夕焼けに照らされる御荷鉾方面が見えました。1日を存分に楽しませてくれたことに感謝しつつ、最後の峠を超えます。
そうして到着した志賀坂峠。頂上のトンネルを抜け、タバコを吹かそうと自転車を停めると、バイク乗りの人も停車。不意に「ヨシタニさんですよね?」と声をかけられる。なんと、バイクツーリングから帰るBMXライダーに声をかけられたのです。まさかの出会いにふたりとも驚いたのは当然ですが、世間は狭いものだと思ったのでした。
そのBMXライダーと別れてから秩父駅までは小さな峠があるもののおおよそ下っているため、快走そのもの。ワイドな配光のライトと前方を強い光で照らすことのできるライトの2灯だったこともあり、夜になっても不安なく走ることができました。
実は、HOOK EXTに乗るのはこの日で2度目。一度目は二時間くらいだったでしょうか。今回は一日中乗り、疲れてはいるものの、もう少し走っていたい気持ちだったのは正直なところ。それを思わせたのは、先のとおり、安心して身体を預けられる安定感を感じたからでしょう。
グラベルバイクは、読んで字のごとく未舗装路の走行を想定して設計されているわけですが、その作りの恩恵は荒れた舗装路でもまたはそれていない舗装路でも感じることができます。計画したライドに必要な荷物を積載しても、しっかりと安心して走ることができるフレーム&フォークだと思いますし、ライドするフィールドに合わせてタイアを選択していけば、オールラウンドに楽しめるバイクだと実感しました。
BOMBTRACKのHOOK EXTは最新のグラベルバイクであると同時に、超近代的ツーリングバイクでもあるといえるでしょう。