沈黙のニュース —杉江義浩が見た報道の裏側
渋谷の放送センターに、まだ夜が明けきらない光が差し込んでいた。 午前四時。報道フロアは無数のモニターが青白く光り、世界中のニュースが無言で流れている。 アナウンサーが原稿を読む声、ディレクターの短い指示、編集機の唸る音。 すべてが「時間との戦い」の中で動いていた。 私はその中央で、一本のニュース原稿を見つめていた。 ——この原稿は、放送できない。 上からの指示ではない。もっと曖昧で、もっと重い「空気」のようなものが、現場全体を包んでいた。 誰も命令しない。誰も禁止しない。 ただ、誰もが「その話題はやめよう」と知っている。 それが、報道の現場の“沈黙”だった。 何年も経った今でも、あの朝の光景を忘れられない。 事実はそこにあった。映像も、証言も、すべてそろっていた。 それでも、放送されなかった。 理由は一行の説明にもならない。ただの「判断」だった。 ——ニュースとは、誰のものなのか。 ——…











