タブレットがつなぐ、町と住民の「絆づくり」 町民向けタブレット講習会にボランティア参加してきました
こんにちは。サービスデザイナーの佐藤史です。
先日私は福島県で開催された、東日本大震災での被災地住民を対象としたタブレット講習会にボランティアスタッフとして参加しました。仕事とは関係のないプライベートでの参加だったのですが、そこで偶然にも、コンセントの「サービスデザイン」「ユーザーエクスペリエンスデザイン」にも共通する、以下の3つの学びをあらためて得ることができました。
ユーザビリティよりも体験価値。使いやすさの追求は大切だが、その前に「何ができるか」「できることで利用者は何が嬉しいのか」に素直に共感できるようになること
新しい体験価値を考えるときは、相手が興味を感じた瞬間を受け止めて、そこにフォーカスする。些細なことでもいい。
ユーザー(利用者)に接するとき、「これは、わからないだろう/難しいだろう」と勝手に判断しないこと
まずは、この講習会の概要やボランティア参加のきっかけについてご紹介し、続いて、3つの学びを再度実感することとなった実際の講習会の様子をお伝えしたいと思います。
福島県浪江町では、東日本大震災に伴う原発事故の影響で、たくさんの町民が他の市町村での避難生活を余儀なくされています。町役場は非営利団体「Code for Japan」(※1)と協力して、町民へ無償でタブレット端末を配布し、住民の課題を解決するためのアプリケーションを開発することで、地元を離れて暮らす町民同士の「きずなの再生・強化」に取り組んでいます。
※1:「Code for Japan」と浪江町との取り組みついて興味をもたれた方は、下記のサイトもぜひご覧になってください。
「Code for Japan」サイト http://code4japan.org/
昨年、知人を通して知った、町主催による「浪江町住民のタブレット活用を考えるアイデアソン」というイベントに参加して以来、私はこのプロジェクトに関心をもち続けていました。そこでのご縁がきっかけで、町の関係者の方から講習会のボランティアスタッフとしての参加のお誘いをいただき、今回、休日を利用して参加してきました。また、普段はデジタル機器をあまり使い慣れていない(と思われる)ご高齢の町民の方が、タブレット端末のどのような点に興味をおもちになり、使われているのか(逆に使われていないとしたら何が利用の障壁になっているのか)を実際に自分の目で見て知りたいと思ったことも参加動機の一つでした。
さて、参加しての感想ですが、端的に言うと、自分が(勝手に)想像していた以上に、町民のみなさんは配布されたタブレットを使っていらっしゃいました!
講習会の前後では、参加された町民の方がスタッフに個別で「動画をつい見すぎてしまい回線が遅くなってしまった(※通信量制限があるため)」「アプリを入れすぎてデスクトップがごちゃごちゃしてしまった」等の相談をされる姿がちらほら見られました。世の中のインターネット接続サービスのしくみの複雑さはともかく(電話やNHK放送も通信料はかかりますが、どんなに使っても動きが遅くなるなんてことはないですよね)、タブレットがたくさん使われていることは良いことと役場の皆さんが捉えて、参加者に懇切に説明されている姿がとても印象的でした。
講習会では、町民のみなさんがタブレット端末の利用を身近に感じられるよう、「朝起きてその日の天気を調べる」「お昼時に近所のおいしいラーメン屋を探す」「役場から新しいお知らせが届いていないか確認する」「孫や友達に写真を送る」などの生活シーンにあわせて、講師の方がいろいろな操作をゆっくりと説明されていました。
私は、会場を見渡し、講義についていくのが難しそうな参加者をサポートする役目でした。初めてのスワイプやピンチインの操作にも、つまずく人はあまりおらず、みなさん一度教えたらすぐできるようになっていたようです。強いて気づいた点を挙げるなら、文字入力時の漢字変換操作等で少し戸惑う方が散見されたことでしょうか。
当日使用したスライド資料の一部。下記リンクから全体がご覧いただけます。
監修:福島県浪江町役場
http://www.slideshare.net/codefornamie/201507042
講習会の後にはスタッフ一同で簡単な振り返りを行いましたが、町役場と運営スタッフのみなさんが、この講習会を単なる利用サポートの場ではなく、町民との「絆づくり」の場として捉えているとお話されたときは、「なるほど」と思いました。タブレット端末はあくまでも「絆」をつくるためのきっかけや手段ですね。
すでに使いこなされている方は、Googleマップで自分が住んでいた地域の様子をチェックする、大好きな歌手の動画を見るなど、自分なりの利用の楽しみを見つけているようです。
その一方で、無償配布から数か月が経過したにも関わらず、まだ使っていない方、使いこなすには至っていない方に対しては、今後一層のフォローが課題のようです。
これはあくまでも私見ですが、自分なりに利用の楽しみを発見した方とは対照的に、利用されていない方は、操作を覚える覚えない以前に、そもそもタブレット端末で何ができるのかをまだ理解しきれていないことが障壁になっているように感じました。裏を返せば、その方が「使ってみたい」と思える機会をどうつくるかが利用促進のポイントなのかもしれません。
今回の講習のなかでも、「音声補助機能もありますよ」と講師の方がふと話されたとき、すかさず「それはどうやるの?」と質問された方がいらっしゃったり、「LINEを使ってみたい方、いますか?」という質問で参加者の半数近くから手が挙がったり……と、何に興味をもつかは人それぞれですが、本当に些細なことであっても、参加された方が「!」と興味を感じた瞬間を、サポート側の人間がひとつひとつ丁寧に受け止めることが大切だと感じました。
また、講習会の場で覚えた操作を、次の講習会までの数か月間、忘れずに継続的に使っていただける工夫も必要なのかもしれません。一応、その場ではできるようになったけれど表情がまだ「?」な感じだったり、難しそうな操作にトライしてできるようになったものの、その後の自由時間ではもう試してみようとしなかったり……。
ちなみに私は普段の仕事で、メンバー同士の合意形成や、共創の場づくりを目的に、いろいろなワークショップを社内外で実施することがありますが、ワークショップをファシリテーションするうえでも、参加者の興味やモチベーションを受け止めたり、不安やモヤモヤした気持ちを和らげてあげたりすることは、とても大事なことです。次回以降もしまた参加する機会があれば、そのあたりにもう少し留意して町民のみなさんと接したいと思いました。
小さなタブレット端末を通した町と住民の絆づくり。このプロジェクトが地域課題解決の良いモデルケースとなると良いですね。
最後になりますが、今回の講習会でお世話になりました、浪江町役場と講習会関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。機会があればぜひまたご協力させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
※本講習会の当日の様子は、「Code for Japan」公式サイト内にもレポートが掲載されていますのであわせてご一読ください。
「Code for Namie」プロジェクトの紹介 http://codefornamie.org/about/
タブレット講習会の様子 http://codefornamie.org/post/110808478860/2-11-codefornamie