(via Andrea Gibson - Tincture - YouTube)
いのちの薬 /アンドリア・ギブソン
人が死ぬ そのとき 魂は何を想う からだがなつかしい 手がない 何も掴めないことが悲しい なつかしい 新入学の日 大きな声で読み上げようとして 恥ずかしくて縮こまってしまった喉 魂は何を想う なつかしい つまずいた足先 ぐらぐらする歯 ぶつけたときにびりっとするひじの出っぱり あの奇妙な感覚はなぜ? 魂は何を想う なつかしい 水涸れの花園の頬濡らす 悲しみの露 なつかしい 眠りの中で夢見の旅 からだにしかできない 笑うことも 顔にしわを寄せて微笑みにサインすることも 魂は何を想う なつかしい 落ちた睫毛1本ごとに願いごと なつかしい 叫び声を上げてナイフを拒んだ手首 舌足らずな話し方 吃音 不自由な足 聖なる青あざは怪我の証 一群の血のなごり 死後の魂は宇宙を探索する 何か顔を赤らめるもの 寒さに震えるもの 傷跡が残るもの すり切れそうな忍耐 限界であがく我慢 声をふりしぼる喉を探す なつかしい からだがもうひとりのからだを抱きしめたとき 神の慈しみはふたりにと願いつつ ふたりはひとつ なつかしい 心がからだに言った お前は神に見捨てられたのだ からだは言った 拍動のない教義など消し去れ 聖書のどの一頁でもいい 顔をしかめたりするか? 手先が不器用か? そばかすはできるか? 飢えることがあるか? 魂は何を想う なつかしい 空腹 虚しさ 怒り 握ったこぶし(教わりもせず) 食いしばった歯(教わりもせず) 墓から這い出そうとする餓鬼のように愛を交わしたからだ(教わりもせず) なつかしい 果てある老い はりを失った肌 なつかしい からだが病んでいた一日一日 病むことで強いられた〈今〉 発熱の上に形作られた〈ここ〉 熱はからだの祈り いつもどおりの新たな一日を希求して我が身を燃やす なつかしい 階段できしんだ膝 車椅子への悪態となって喉からあふれ出した不安 なつかしい からだが手放せなかったもの──どんなものもしっかりつかんで離さない それがからだ ブランコの鎖の音が聞こえると足もとが揺れて膝をつく 網戸に触れただけでレモネードの味が口に広がる 戦争から帰ってくる者帰ってこない者 それでもなお生きようとする 子守歌を歌おうとする それがからだ からだにしかできない 死後の魂は宇宙を巡る からだが道に迷えば身震いし 安心すれば弛緩すること 時間さえあれば傷も癒えることを伝えようとする 想像できるか問いかける 彗星 星雲 光線 宇宙空間にあるものはどれもみな 畏怖の茫漠 燃える恥辱 初めての白髪を抜いて捨てる指先を理解することができない 星々は言う 想像できないのです 鳥肌のこと もういちど聞かせてください 痛みについて もういちど話してください















