投入堂というスコープ
-自然を増幅すること-
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投入堂はまさに山の中の岩壁に建っていた。二日前に通り過ぎた台風が降らした雨が上部の岩盤を滴り、投入堂の前面を落ちていたのを見て投入堂が岩壁に埋まっていることが分かった。雨滴を凌ぐために一時的に岩壁にとどまっている生きものようにも見えた。その姿は自然に対して圧倒するわけでもなく、また決して遠慮しているわけでもない。 登山を始める前、先生は投入堂という建築は「自然を増幅している」と言った。その時はよくわからなかったが、長く険しい道のりの果てに突然として姿を現した投入堂はすべてを物語っていた。自然はただそこに在る。だだそこに在るものが建築を通して人に魅せられることで、自然が、そして世界がより近くに迫ってくる。そして自然の雄大さに気づかされると同時に、建築のもつ力強さにも感動するのである。
この旅で出会った建築はどれも美しかった。何故か。そもそも美しいとはどうゆうことか。人が建築を自然と対峙させるとき「建築は美しくなければならない」と思ったに違いない。細部にまで高い密度をもってつくられる建築のひとつひとつからつくり手の意思を想像する。美しいものをつくるということが自然の中に生きる人間に許された行為であり、まさにそれが建築なのだと感じた。 また、人々が自然に対して畏敬を抱きながら、一定の間合いを置きながらも建築をつくり、その時の緊張感が何百年とその場に漂い続け、長い時間を超えて訪れた現在の我々に突き刺さる。この瞬間こそが我々が建築に美を発見し感動する瞬間なのである。そう思うようになった。
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そしてこの感動を多くの人と共有できたことを幸せに思います。またこの旅行に関わっていただいた全ての人に感謝申し上げます。
齋藤湧一郎














