https://web.archive.org/web/19991114092118/http://www.zdnet.co.jp/pcweek/inks/940708/940708p1001.html
TrueTypeのリーディングカンパニー,リコーの次なる戦略
94.07.08--
TrueTypeフォントの普及に力を入れているリコー。同社が販売しているHGシリーズはこの6月で36書体となった。デザインや出版の業界ではType1がまだ強いが,ネットワークコンピューティングという視点から見れば,TrueTypeフォントには大きな可能性が秘められているという。同社フォント開発センター課長代理の松田道夫氏に話を聞いた
PC WEEK リコーは,TureTypeフォントに対してかなり活発に製品を投入してますね。プリンタにしてもTureTypeだったらリコーが一番速いという評判です。Windowsに搭載されているマイクロソフトのMS明朝とMSゴシックの字母は,リコーが開発したものだと聞いてますが。
松田 はい。われわれが開発したものです。当社の昼間健治副社長が,マイクロソフトのビル・ゲイツ会長と20年近い親交がありまして,「何かいっしょにビジネスをやろう」ということから始まったプロジェクトです。当社が単独で発売するフォントには必ずHGという表記があります。これは対外的にはハイグレードの略ということになっておりますが,実は昼間のHとゲイツ氏のGというイニシャルから付けたものなのです。
PC WEEK 現在,何種類のフォントを出しているのですか。
松田 36書体になりました。
PC WEEK すごい数ですね。どこまで増やしていくつもりですか。
松田 そうですね。日本の印刷業界の業務をカバーすることを考えると,100書体を超えると考えています。
PC WEEK つまり,リコーはTrueTypeで,印刷業界もターゲットにしていると考えていいのでしょうか。
松田 はい。Type 1フォントのように完全にハイレゾリューションとOAの世界を分けるといったことは考えておりません。当社のTureTypeには解像度制限というものがありません。また,年内にMac版のTureTypeフォントを発売する予定です。そうなれば,Mac環境での高密度の出力にも対応できます。
安価な供給ができるTrueType
PC WEEK あえて聞きますが,実際フォントというものは売れているのでしょうか。
松田 それも見方によると思います。ある人々は売れているといいますが,私どもは,必ずしも順調ではないと考えます。去年の11月1 日にTrueTypeWorldを発売して以来,WIFEが急激に落ちてTrueTypeが伸びているといえますが,その上昇カーブは必ずしも当初の期待通りのペースとはいえません。さらに,もっと上昇スピードを加速させなければならないと思います。
PC WEEK メーカーとしてどのような活動を行えば加速が付くと思いますか。
松田 1つの商品分野の市場が定着するには,1社だけの力では無理です。そこで当社では,いろいろなメーカーがTrueTypeフォントを作れるような環境作りに協力していきたいと考えています。1つの例がTrueType協議会です。TrueType協議会は今年の1月30日に発足したのですが,現在54社が加盟しています。フォントの国内の団体としては,最大の規模です。リコーは協議会の事務局として,少しでもお役に立ちたいと考えていますが,これもフォント市場を拡大させるための活動です。
PC WEEK 今現在,TrueTypeの場合,解像度の点で応用範囲が限られています。一般ユーザーは,どうしてもプロユースがいいという目で見ると思います。いくらTrueTypeフォントがきれいだといってもデザイナーはType1を使う。そこで,TrueTypeが優れている点を読者にアピールしていただきたいのですが。
松田 まず第1点目ですが,TrueTypeはMacintoshとWindowsの共通仕様であるということです。従来アウトラインフォントは,それぞれのフォントメーカーが別々のフォーマットをもとに作ってきました。これではコストがかかる。必然的に販売価格も高くなってしまい,特殊な世界になってしまう。TrueTypeのように規格がオープン化し,共通化されていることで,1つのフォントを開発すればMacでもWindowsでも使え,売れるわけです。例えばフォントを作るときは必ずエディタが必要ですが,TrueTypeでは各社のコンパイラやツールが共通に使えます。製作コストが安ければ,販売価格も安くできます。TrueTypeは,経済的メリットが大きいのです。
第2点ですが,アウトラインフォントのデータ形式を共通化することで,文書交換も容易にできるというメリットがあります。特にこれからのマルチメディア環境下では,データの交換が重要になってくるはずです。マルチメディアでは画像情報,文字情報とか複数のデータが混在します。混在したときに,共通のデータ形式でなければ,とんでもない混乱が起こるはずです。ネットワークサーバでフォントを豊富に持っていて,MacからもWindowsからも容易に使うことができるのはTrueTypeしかありません。Type1などではこれが難しい。アドビシステムズさんのAcrobatなどもありますが。
PC WEEK 文書変換についてお聞きします。例えば,Windows用PageMakerでMSゴシックあるいはMS明朝を選ぶと,Mac上でもTrueTypeフォントになるのですか。
松田 残念ながら今はできません。しかしこの秋に当社からMac版のHG明朝とHGゴシックが発売されますので,これで対応できるようになります。
3点目のメリットという意味では,これは具体的で細かい話になるんですが,フォントではヒンティングという作業を行います。文字が小さくなったときや大きくなったときに誤差が生じますが,それを自動的に補正する機能です。通常アウトラインフォントは,例えば「青年」の「青」という字の上の2本の線は同じ太さであるという情報が,パラメーターとして埋め込まれています。
ところがTrueTypeはサブルーチンとして,これらの情報が組み込まれています。この結果ローカルヒントがやりやすくなりました。単純にいえば,アウトラインフォントを大きくも小さくもできるのですが,ある一定のサイズの間だけしかヒントが機能しません。ところが,ローカルヒントというのはサイズ当たり,文字種当たり,グループごと,極端な例では一文字ごとに特定の字のあり方を表現できるのです。従来のアウトラインフォントでも一部できるものがありますが,やり切れません。TrueTypeで初めて可能になった機能です。
また,TrueTypeは決して完成されたものでもなく,まだまだ発展しているのです。TrueType 2.0(Windows用)という名称になるでしょうし,TrueType GX(Macintosh用)という名称でどんどん発展,拡張しております。デジタルによる文字表現の可能性が大きく開かれています。これが発展すると,フォント側でワープロの機能が持てるようにもなるかと思います。
PC WEEK フォント側でワープロの機能を持つといいますと?
松田 例えば,行ぞろえ,字詰めというようなことがワープロの設定ではなくフォント側でできるようになるでしょう。1行何文字といった書式設定がワープロ側でなくフォント側でできるようになるでしょう。そうなると,ワープロのプログラム開発がもっと単純なものになっていき,極めてインテリジェントなフォントができてくることになるでしょう。まだまだこういった開発は始まったばかりです。でも,そんなに年数を待たなくても実現できるとおもいます。
社内報に江戸文字を使うユーザー
PC WEEK 異なる書体をどう使い分けるか,といった啓蒙活動についてはどうでしょうか。
松田 TrueType協議会のマーケティング委員会でエンドユーザー向けセミナーなどを企画したりしていますが,リコー単独でやっていることといいますと,アプリケーションベンダーと一緒になったキャンペーンを実施しています。今年2月から始めました「クリエイティブパートナープログラム」です。アプリベンダーの販売するソフトのパッケージに2000円 引きのフォント購入チケットを付けてもらうわけです。アプリケーションとフォントの安定した組み合わせをユーザーにお知らせするわけです。
例を挙げれば,WordPerfect,PageMakerといったソフトにクーポンが付いています。ドロー系ではCorelDRAW!などがあります。
基本的に私どもはエンドユーザーを啓蒙しよう,などとは考えておりません。むしろ,ユーザーに学ぶケースのほうが多いと考えています。表示,印刷スピードを速くすること,コンパクトなデータサイズ,アプリなどとのマッチングの良さなどが,私どもがユーザーから学んで,TrueTypeWorldに反映させた点です。
登録ハガキなどを見ると,どんなソフトでどんなフォントが使われているかというのが分かります。今は江戸文字が人気です。こういった文字を社内報で使うといったことは,プロの人は考えないでしょう。変わったもの,珍しいものを求めるという流れがあと2,3年続くかと思ってます。しかし,4,5年後,再びゴシックや明朝といった基本に戻るかと思います。そのときは良いフォント,悪いフォントに淘汰されていくことになるでしょう。
[聞き手:磯貝一,PC WEEK/JAPAN]








