House, architecture by John Matthias, 1959.

shark vs the universe

oozey mess

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Keni
🩵 avery cochrane 🩵
Three Goblin Art
PUT YOUR BEARD IN MY MOUTH
tumblr dot com
Sade Olutola
he wasn't even looking at me and he found me
we're not kids anymore.
Cosmic Funnies
Monterey Bay Aquarium

Kaledo Art
wallacepolsom

blake kathryn
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cherry valley forever
Mike Driver

⁂
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@o-rose
House, architecture by John Matthias, 1959.
ambarvalia 表紙 昭和8年9月20日 椎の木社 初刷300部発行
JNの薔薇苑 III
失楽園
世界開闢説
科学教室の背後に
一個のタリポットの樹が音響を発することなく成長してゐる
白墨及び玉葱黍の髪が振動する
夜中の様に もろヽヽの泉が沸騰してゐる
人は皆我が魂もあんなでないことを願ふ
人は材木の橋を通過する
ゴールデンバットをすひつゝ
まだ一本の古い鉛筆が残つてゐる
鮭で充満する一個の大流の縁で
おれ達 即ちフッケと僕は二つの蛇のやうに横はつた
一つのポプラの樹が女の人の如くやかましい
桑の木の森で柔弱となつた山が我等の眼球の中へ流れ込む
一つの吹管をもつて我等が心臓の中にある愛情を吹きつゝ
おれ達はフランスの話をした
それから再び我等の洋燈の方向へ戻つた
オー なんと美しい古い刷毛よ ルビ:刷毛→ブラツシ
忍冬におほわれたエスキロス嬢の家より遠く
しかしおれの家に近く一人の正直者が
修繕すべき煙管を探求するために彼の水蒸気を鳴らす
おれの友人はみんな踏切の向方に移転してしまつた
そこにはトマス カルデイの写真がある
一つの非常に大きいマズリンの座ブトンがある
石油ストーブがある
さうして机の上に万年青と
実際的にペッチアンコな懐中時計がある
けれどもおれは
諸々なる機械職工と幼稚園でひつぱられてゐる
一個の小丘の斜面に
おれは地上権を購買してさうして
おれは自分に一個の危険なる籐椅子を建造せり
未だ暗黒である
足の指がおれのトランクにぶつかる
空気の寒冷が樹木をたゝく
七面鳥が太陽の到来を報告する
家禽家が毛糸のシャツを着て薪を割る
極めて倹約である
旧式なオロラがバラの指を拡げる
貧弱な窓を開けば
おれの廊下の如く細い一個の庭が見える
養鶏場からたれるシアボンの水が
おれの想像したサボテンの花を暗殺する
そこに噴水もなし
ミソサザイも弁護士も葉巻もなし ルビ:葉巻→シガー
ルカデラロビアの若き唱歌隊のウキボリもなく
天空には何人もゐない
百合の咲く都市も薄く
たゞ鏡の前で眼をとづ
風のバラ
帽子を浅くかむって
拉典人類の道路を歩く
樹木の葉の下と樹木の葉の上を
混沌として気が小さくなつてしまふ瞳孔の中に
激烈に繁殖するフユウシアの花を見よ
あの巴里の青年は
縞の帽子の中で指を変に屈折させる
郵便局と樹があるのみ
ラムネのビンは青い おれの面前で
クレベルの本屋の主人がステキに悲しんでゐる
それから中央欧羅巴にアルコールランプを置き
牧場の中で乞食の手風琴に傾聴しつゝ
牛乳の入ったコーヒをわかす
遠くのミカン色の屋根と青い樹木は
おれの心を鞭撻する
しかし海は死んだ葡萄酒である
人は岡に上り大なる緑の影をもつた
アカシアの樹のそばでジット
残りたいと思ふ
太陽
ゴムの樹
軽便鉄道
虎
金銭
が音楽的共和国を建てる
疑ひなくロンドンのデメテルの前で
おれの帽子をあげる
美しきタコよ
あなたの柔らかい魂は
不活潑な流れぬ午後の中で
鱈の光りを漁る
しかしあなたは職業としては神様であつた
コクリコの女神
麦の女神
梨の美爪師
けれども今は地方の女学生の脂肪と
埃を吸入する
遊園地の向方の
船舶の森に花が開く
株主がみんなよろこぶ
世界的午後
ホテルの方へ商売人が歩き出す
太陽の中で一人の男が
アツボッたいチョッキと杏子色の腹巻をきて
酢につけた葉巻煙草を食ふ
さうして非常に熱烈に
バラモンの神様と勲章と蛇のことを
考へて笑ふ
それから彼は彼の頭蓋骨ほどそれだけ大きい
椰子の果実に吸口をつけて一個の
クラリネットを製作して
それをシヤガンで吹く時
カゴの中からコブラの頭が踊り出る
なんと美麗なサボテン
一つの節時計のやうに振動する ルビ:節時計→メトロノーム
けれども人々は日陰の方を歩く
彼の友人の一人は支店長になつて
ステキにいゝ帽子をかむつて
半嶋をズンヽヽ歩いてゐる
ラヴナラスの樹の下でヴアイオリンをひき
雨が愛情より降つて来るのを待つてゐる
マホメット教の礼拝堂の窓から人は
微笑する顎をつき出してゐる
その下の方に静粛な湖水が
ドンブリの様な遠方の山々を写す
(このドンブリは実は諸君の背中であつた
要するにフンドシが実によく乾くのである
アカシアの花が非常に美しい
いやになつてしまふ)と旅人がいふ
スエズの運河の中で
クラゲが実によく走つてゐる
地平線が非常に砂だらけである
犬が遊んでゐるテントがある
ムーア人が夕日とビタ銭を追求する
それから星の夜がある
しかし工手学校なにかは無い
追放された人々は岸の上にシヤガンで
涼しい沈黙の中で焦げついた指を監視する
保証人なんぞゐない
気の強い労働者は密閉された夜の中で
しやべつてゐる
ここに一つの軟柔で無口な都会がある
店先で千鳥と宝石が会話することが出来る
警察署の庭にヒビスカスの花が諸君の充血した心臓の
やうに咲いてゐる
土地の人達は猫のやうにハダシで歩く
不明な葉つぱと石灰を嚙みながら心配さうに話してゐた
二人の男は何処かへ行つてしまつた
船舶が到着すると海の下で金銭を魚のやうにつかむ
その金銭を耳にはさんだり口に入れたりして
再び電車線路をつたはつて何処かへ行つてしまつた
クネンボの中に路が失はるゝまで運命を
みずに極端に崇高なることを思索する
おれは駱駝の様に砂の中にもぐつて
熱心をもつて代数をやつてみたい
それから四十歳になつたら
その辺の市場をさがし出し
ホコリだらけの葡萄をたべる
それからいま一ッぺん
おれの魂の方へ
駆け出したらね
カイロの市で知合になつた
一名のドクトル・メヂチネと共に
シカモーの並木をウロヽヽとして
昨夜噴水のあまりにやかましきため睡眠不足を
来たせしを悲しみ合つた
ピラミッドによりかゝり我等は
世界中で最も美しき黎明の中にねむり込む
その間ラクダ使ひは銀貨の音響に興奮する
なんと柔軟にして滑らかな現実であるよ
薔薇物語
ヂオンと別れたのは十年前の昼であつた
十月僕は大学に行くことになつて
ヂオンは地獄へ行つた
霧のかゝつてゐる倫敦の中を二人が走つた
ブリテン博物館の屋根へのぼつてしかられた
ヂオンの写真はその後文学雑誌に出た
鉛筆の中で偉らさうに頬骨を出した
公園にクローカスの花が石から破裂する時
黄色い曲つた梨がなる時
毎日酒場とカフエと伊太利人の中で話した
ヂオンが寝る所はテムズ河の南の不潔な
町の屋根裏であつて、電気がないから
ビール瓶の五六本にローソクを花のやうに
つきさして、二人の顔を幾分あかるくした
ビール箱にダンの詩とルイスの絵を入れた
僕はその時分は南ケンジントンのブラムプトン
にある薔薇のついたカーペトのあるホテル
に住んでいた。我々はこのホテルを
ロマン・ド・ラ・ローズと呼んでゐた
時々、月影にやき栗をかつて、一緒に
ロマン・ド・ラ・ローズの中へはひつて
電気をつけて悲しんだ
その頃時々遊びに行つたところは
プロレタリアトの雑誌に小説をかいて
ゐた盲目の青年のところであつた。彼は
休戦条約の祝賀会に烟火をあげてヒゲと
眼をやいた勇敢な人であつた。その妻君は
非常に親切で我々を歓待してくれた
その夫婦のゐる室の下が路次の酒場
になつてゐた。十時すぎになると笛吹きが
現はれて流行唄をピユコヽヽヽ吹いてゐた
或る晩、その男を部屋へ呼んで話を
した(笛をふくつもりで遂話ばかりになり)
ビールとソーセヂをなめながら
戦後は時勢がヽはり商売にならないとこぼした
西脇順三郎 Ambarvalia LE MONDE MODERNE より
典拠:定本西脇順三郎全詩集(1981年 筑摩書房)
病める薔薇 或は「田園の憂鬱」 佐藤春夫
定本となつた田園の憂鬱を若かりしころ一度読んだぎりなので、このさい古書を漁つてみました。といつても、大正7(1918)年に天佑社から刊行されたオリジナルは、もつかの古書市場で10万円を超へます。たつたの8円という価格でAmazonに並べられてゐた復刻版のはうを、いさヽか罪悪感にとらわれながらも買つたのでした。
たぶん通読されることなく死蔵されてゐたヾらうこの復刻版を読んでみると、詩人の薔薇へむけた尋常ならざる愛を、いま目前に告白されるやうです。とても激しい愛です。 たれにも書けなかつた、薔薇へあてた恋文です。彼の女たちがこれを読んだなら、いよいよ深い紅色に花弁をそめるでせう。その吐く息は、ますます甘い香りを濃くするでせう。盛期の薔薇そのものに艶麗なる一段落を、下へ抜粋しておきます。
・・・・・
薔薇は、彼の深くも愛したものの一つであつた。さうして時には「自分の花」とまで呼んだ。何故かといふに、この花に就いては一つの忘難い、慰めに滿ちた詩句を、ゲエテが彼に遺して置いてくれたではないか──「薔薇(ルビ:さうび)ならば花開かん」と。又、ただそんな理窟ばつた因縁ばかりではなく、彼は心からこの花を愛するやうに思つた。その豐饒な、杯から溢れ出すほどの過剩的な美は、殊にその紅色の花にあつて彼の心をひきつけた。その眩暈(ルビ:めくるめく)ばかりの重い香りは、彼には最初の接吻の甘美を思ひ起させるものであつた。さうして彼がそれを然う感ずる爲めにとて、古來幾多の詩人が幾多の美しい詩をこの花に寄せて居るのであつた。西歐の文字は古來この花の爲めに王冠を編んで贈つた。支那の詩人も亦あの繪模様のやうな文字を以てその花の光輝を歌ふことを見逃さなかつた。彼等も亦、大食國の「薔薇露」を珍重し、この「換骨香」を得るために「海外薔薇水中州未得方」と嘆じさせた。 それ等の詩句の言葉は、この花の爲めに、詩の領國内に、貴金屬の鑛脈のやう一脈の傳統を──今ではすでに因襲になつたほどまでに、強固に形造つて居るのである。一度詩の國に足を踏み入れるものは、誰しも到るところで薔薇の噂を聞くほど。さうして、薔薇の色と香と、さては葉も刺も、それらの優秀な無數の詩句の一つ一つを肥料として己のなかに汲み上げ吸ひ込んで──それらの美しい文字の幻を己の背後に輝かせて、その爲めに枝もたわわ(傍点:たわわ)になるやうに思へるほどである。それがその花から一しほの美を彼に感得させるのであつた。幸であるか、いや寧ろ甚だしい不幸であらう、彼の性格のなかにはかうした一般の藝術的因襲が非常に根深く心に根を張つて居るのであつた。彼が自分の事業として藝術を擇ぶやうになつたのもこの心からであらう。彼の藝術的な才分はこんな因襲から生れて、非常に早く目覺めて居た。・・・・それ等の事が、やがて無意識のうちに、彼をしてかくまで薔薇を愛させるやうにしたのであらう。自然そのものから、眞に清新な美と喜びとを直接に摘み取ることを知り得なかつた頃から、彼はこの花にのみはかうして深い愛を捧げて來て居た。
・・・・・
フォントが限られているため、一部は旧字体へ変換できませんでした。
平成28年6月19日
ambarvalia カバー 昭和8年9月20日 椎の木社 初刷300部発行
馥郁たる火夫
ダビデの職分と
恋歌
イヴアンよりクレールへ
イヴアン ゴルより
君は杏子の唇をもつたおれの牧場である
二つの青い千鳥が
君の眼の静かな水面をかき乱す
さうしておれはおれの疲労した魂をその中で洗ふ
金魚が君のお喋りを刺激する
君のゑくぼの忘れな草は
我等の小なる姪等である
君の朗々たる頭髪の中で風は竪琴を弾奏する ルビ:竪琴→たてごと
遠方の教会堂は君の心臓の中で
おれのアンジェリユスの鐘をたゝく おれのアンジェリユス
彼女等は旅役者の偉大な悲劇であつた
彼女等は黙考沈思する雲であつた
彼女等はメトロのガラス窓で夢みるのであつた
彼女等は可愛い馬鹿者であつた
彼女等は暑い掌中に溶解する雪であつた
彼女等は支那縮緬の薔薇の樹であつた
彼女等は雨の降る夕暮であつた
彼女等は露西亜人かブラジルの人であつた
彼女等は
然しながら君は
おれは君のことはわからない
おれは君を描写することが出来ない
おれは君を恋愛するのである
(旧約書の伝道之書による)
君の頭髪は現世紀に於ける最大な火事である
君の額は人類の秘密が通過する屏風である ルビ:屏風→スクリイン
君の眼はスフインクスの眼孔の中に据ゑられた二個の金剛石である
君の首は薔薇に塗られたエフエル塔である
君の唇は紅海に踊る双生児のボートである
君の歯はおれのピアノの鍵よりも整然としている
君がものをいふとアカシアの樹に花が咲き
十個の渓流が笑ふのである
君が歩くと
地球がみんな動揺する
ねむれ可愛さうな幼児よ
おれは地球の廻転を止めるであらう
おれは君の涙が錆びさせた
月の連釬に油をひくであらう
君をねむらすためには
おれは仏蘭西国をめざませる喘息的の暴風を
体裁よく断はるであらう
すべての電車は綿でその車輪をつヽむであらう
雨は雪になるだらう
さうしておれは君の破損し易い心にひびをつける
山雀を朝には暗殺してしまふ ルビ:山雀→やまがら
君をねむらすために
紫丁香花は雨の下で色どりを失つた
瑠璃草は彼等の眼をみんな潰した
黎明の虚偽の黄金に誘はれて
恋愛を捜索する
小鳥は絶望してまた戻つて来た
暴風雨はダイナマイトで天空をハネ飛ばした
さうして地球は永久に廻転する しからば何処で横はるか
おれは牡蛎の如くに戸をしめて
非常に森閑とした心持でゐたのに ルビ:森閑→しんかん
君がそれをあけようとしてそれを殺してしまつた
君は白樺の森から逃れ出たニンフである
君の黄金の足の下で犬はみんな自殺する
さうして足は君の眼球の中で
かつて河が流れた時代と混合する
最後の人頭獣
おれはオペラ街を乗つて通る
おれはおれの四足から下りる
自分自身を二つに切りはなして
君の失つた森林の入口に
おれのダクヾヽと流れる胴体を
君に捧ぐ
雄鶏の錆びた叫びに起きる
石屋に劣らず適確に
おれは毎朝
仏蘭西中の小鳥にとりまかれ
建築中の我等が恋の普請場の前で待つのである
我等は互に会得せんと勉励する
一つの前廊を建てんと勉励する
煉瓦に煉瓦を重ね
苦痛に苦痛をもって
セメントと涙とで
我等の老いた時の或る日に
追憶の前に坐り
我々は我々自身を黙想するために
おれはラヂユウムにより稀薄になつた君の肉体を見た
わかならい世界 おれのものと呼んだ肉体
おれの恋がずるヽヽひきずられてゐた
紫外線の昆布を見た ルビ:昆布→コンブ
君の尖つた心臓は顚覆した一つの舟の漂着物の如く
夢の底にじつとして動かないでゐた
酸化した珊瑚の中に
貫き難い一つの静寂に満ちて
何んたる秘密の上にか
その時 おれは 重苦しい潜水夫
おれはそこへ下りたかつた そこで失はれた金を捜索せんと
さうして最早人々はおれの帰つて来るのを見なかつた
時々おれの死んだ心が夜の中で
一つの古い甲冑が鳴るやうに叫ぶ
あの薔薇色の桜の樹の時代を想ひ起す
既に一つの習慣として悲歎する
君の名を一つの去り行く雲の上に書く
君が歌つてゐた柳のある一つの牧場を眺める
またおれは眼を時々開く
近視眼の錣戸のうしろで
海洋のほとりにある持主のわからない貸別荘のやうに
立つても
坐つても
三時でも
十五時でも
夕刊
朝の夢
賛成不賛成
精進と酩酊
昨日
明日
おれは君のみ思ふ
おれはもはや頭を横へる処を知らず
地上を選択せしめる方がよろしい
使ひすぎたゴムの風船玉のやうに
おれの微笑は月の壁に塗られた
古代の石灰の如くにはげる
北の風がおれの中で
すべての涙を乾かす
ひとつの曙が泣かねばならなかつた
おれの骸骨の鳥籠の中で
おれの心の駒鳥が
第七と第八の肋骨の間で首を縊つた
夜は蜜柑色の君の髪が
天国の古い楼閣を照らしてゐた
土星の塔までも
其処で風邪をひいた天使等が ルビ:風邪→カゼ
時ならぬ露にぬれた
彼等の毛糸の翼を乾かしてゐた
しかし或る黄昏に光りがうすらいだ
君の赤い電気のうなじの髪が
一つの流星のやうにうすく弱つてしまつた
君の磁器の頭の中に
或は君の青白い胸の或る部分に
鉛の玉がとびこんでしまつたのであつた
君の心
おれは君を愛する時以来
おれは君を愈々愛するのである
おれは檞の樹や瑠璃草を根こぎにする
おれは地からおれの頭髪をひつこぬく
おれは自分の爪で天空をかく
もう泣くべき眼をもつてゐない
歎ずるべき神もゐない
夜の向ふの端で叫んでゐる静寂に傾聴せよ
おれは一つの彗星の土耳古サーベルを取る
さうして自分の心臓をつき通す
日々
夜な夜な 年々
花 犬 及び雲
郊外の別荘
自転車に乗る人々は
君が去つたことをまだ知らない
彼等はかけまはる
彼等は食ふ
さうして彼等は死ぬ
さうしてこんなことは如何にも無益である
おれはもう常に独りぼつちでもなく又貧しくもないだらう
おれはおれのいたましさをもつ おれの尊厳なるいたましさ
悲しみの葉があるいたましさの樹木
真赤な手袋をはめてゐるいたましさの友人
おれは兄弟で夫である
おれはおれのいたましさの息子である
おれはいたましさをもたなければ無である
おれはいたましさを食す
おれはいたましさを笑ふ
おれはいたましさを煙草にふかす
おれはそれを怒鳴る
おれはそれを吐き出す
おれはそれが君のものであるが故にそれを愛する
今は嫉妬の季節である
おれの乾燥した眼は葉つぱの様に
おれの生涯に沿うて落ちる
寡婦の手をもつた一つの雨が
おれの頭髪を撫でる
おれのトランクの上に腰かけてゐる
おれの姉妹のいたましさよ
おれのために泣け
鉄も鉛も
恋ほどそんなに重くない
西脇順三郎 Ambarvalia LE MONDE MODERNE より
典拠:定本西脇順三郎全詩集(1981年 筑摩書房)
ambarvalia 函 昭和8年9月20日 椎の木社 初刷300部発行
哀歌
薔薇よ、汝の色は悲しみである。
髪はふるへる。
この晴朗の正午に微風が波たつ。
星の輪が風にふるへる。
我が心も見えざる星と共にふるへる。
Kalos tethnake meliktas
赤い百合、タマリスク、青い菫、エトナの煙り、
アステリアの島波は祭壇を飾らしめよ。
この晴天の首、この夏の眠り、
このトレミイは夏の草花の中に呼吸する。
彼の夢はトリトンの貝殻より反響する音に
触れて曲れる音を吹く。
夢にふるへる眼蓋
黄金の気候に息する霊
霞と熟せる果実の季節よ、再び夏にもどり、
ねむたき永遠とドルフィンのさゝやきに麻痺する
唇に、ひやゝかな星に濡れたマリゴウルドの花を投げよ。
彼の静かな思考は静かな宝石の如く
静かにドリアの海からパイプを吹く。
彼の思考は静かな宝石である
彼のパイプの音は静かな宝石である。
彼の眠りは静かな宝石である。
彼はアルビオンと喧しいヒベルニアの海を去って
このドリアの海にまだ生きてゐる。
我れこの朝、この海を歎ず。
rosa, color tuus est murex aurora doloris,
ah ! mota aura, ista tremitque coma.
ecco, dies medius tranquillus sparsit flatum;
ventum potantes astra tremunt calices.
atque meum vertit cor cum astris aestivis,
―kalos tethnake meliktas.
fragrans ara in asteriae undis est facta;
aetna colit, tamarix et vapor et viola.
en ! dormit pulchrum caput tempestatis crudae,
en ! ptolemaeus ita spirat in auriculas.
cantitat quem calamum palpebram quae tremit ample;
gemma serena gelae est sua mundities.
mens ejus melos est umbra tritonis pictum;
acta abducta, murmurat oceanus.
(薔薇よ、汝の色は悲しみの貝殻の夜明けである
ああ、風起り、此の髪も亦ふるへる。
見よ、晴朗な正午は風を起した。
風を飲む星は杯をふるはす。
そして僕の心は夏の星の如く漂ふ。
―美しい詩人は死んだ。
アステリアの島波の中に香しい祭壇をつくる。
エトナ火山は拝む、タマリスクの花も火山の煙も、菫も。
みよ、晴天の美しい首がねむる。
みよ トレミイは斯くして耳に呼吸する。
無限に動く瞳のパイプを彼は吹くことよ。
彼のスタイルはゲラー海岸の晴朗な宝石である。
彼の思考はトリトンの影を映す音楽である。
海岸は取去られ、海はさゝやく。)
西脇順三郎 Ambarvalia 拉典哀歌 より
典拠:定本西脇順三郎全詩集(1981年 筑摩書房)
写真 : Ambarvalia ・ヨーロッパ文学が出版された頃(1933年)の詩人
ギリシア的抒情詩
手
精霊の動脈が切れ、神のフイルムが切れ、
枯れ果てた材木の中を通して夢みる精気の
手をとって、唇の暗黒をさぐるとき、
忍冬の花が延びて、岩を薫らし森を殺す。
小鳥の首と宝石のたそがれに手をのばし、
夢みるこの手にスミルナの夢がある。
燃える薔薇の藪。
眼
白い波が頭へとびかゝってくる七月に
南方の綺麗な町をすぎる。
静かな庭が旅人のために眠ってゐる。
薔薇に砂に水
薔薇に霞む心
石に刻まれた髪
石に刻まれた音
石に刻まれた眼は永遠に開く。
西脇順三郎 Ambarvalia LE MONDE MODERNE より
典拠:定本西脇順三郎全詩集(1981年 筑摩書房)
おお、薔薇、汝、病めり!
田園の憂鬱の転結をかざる、よく知られたくだりです。ただしこの散文にはかなりこみいったいきさつがあります。
・大正5(1916)年11月 田園雑記と題して“文芸雑誌”に掲載。
・大正6(1917)年5月 病める薔薇へ題を改める。12月に改作。
・大正7(1918)年2月 続篇 田園の憂鬱を含めて病める薔薇とするが、未定稿のまま。
・大正7(1918)年11月 短編集 病める薔薇と題し、谷崎潤一郎の序文を冒頭に付して天佑社より刊行されたのが上の写真。ご覧のように薔薇はバラでなく、ソウビと読まねばなりません。その一短編として病める薔薇(或は田園の憂鬱)を掲載。
・大正8(1919)年6月 おヽよそ上項への追加稿としてある晩にを“雄弁”に掲載。
・大正8(1919)年同月 改作 田園の憂鬱(或は病める薔薇)を定本として新潮社より刊行。
・大正12(1923)年 続編となる都会の憂鬱を新潮社より刊行。これにより詩人は小説家に変じたともいわれる。
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詩人が引用したWilliam Blakeの詩を下へあげておきます。 この詩は上の天佑社版に収められています。
The Sick Rose
O Rose, thou art sick ! The invisible worm That flies in the night, In the howling storm,
Has found out thy bed Ef crimson joy: And his dark secret love Does thy life destroy.