Reframe 2019 FTP(ふんわりテックレポ)
ここでは主に LINE CUBE SHIBUYAで上演された Perfume Reframe 2019 10月23日の鑑賞を元に書き起こしています。あくまで個人の感想から連想される幾つかの事例を述べており、ここで挙げられている技術的な要素やその正確性を保証するものではありません。
https://www.perfume-web.jp/cam/reframe2019/
Reframe 2019はオリジナルReframeと同じくSCENE:Recollectを介した「DISPLAY」から幕を開ける。しかしその進行は異なる解法で表現を再構築しており、Reframeそれ自体を自己言及している。
2018年版は開始時点でステージ全てが舞台装置で平面のフレーム状に覆われ、その平面をスクリーンとして用いながら一部が開口部となり三人が登場するというものだったが、今回は透過スクリーンで覆われたステージ前面のパターン投影が切れると、列をなす自走式ディスプレイと舞台装置、ステージ上方から吊り下げられたディスプレイなどが一体となった空間の中心にPerfumeが姿を現す。つまり前半における舞台上の要素が全て揃っている幕開けとなっている。
自走式ディスプレイは、FP北米公演で投入された自走式アミッドスクリーンに透過LEDを採用して小型化したもので(根拠としては23日の上演中に「DISPLAY」のグラフィックパターンを表示する右側2列目のスクリーンが本来の入力が生きた状態でグリッチを起こし始め、最終的にカラーノイズを長時間表示していたことから)トレードオフとして演者が踊るステージとしては使用できなくなっているが、表示装置としての汎用性や機動性が高まり、第四の出演者として演出上の要となっている。舞台上で可動する表示装置は、今日(こんにち)決して珍しいものではないが、演者をサポートする存在として、ここまで完成度が高いものを目にする機会はあまりないだろう。
自立し、精密な可動を実現する技術や機構はライゾマティクスにとっては枯れたもので(実際に上演に投入されたのは”Border”あたりからか)ミラノデザインウィークで公開されたLEADING WITH LIGHTでの、ダンサーと協調するミラーロボットの精密かつ滑らかな動きは記憶に新しい。
border(2015) - another perspective - short ver. (Rhizomatiks Research + ELEVENPLAY + EVALA + Kinsei)
https://youtu.be/gpE20khn8R0
LEADING WITH LIGHT
https://youtu.be/THxI4vygN_Y
続くRECパート(SCENE:Record)は、オリジナルReframeでは「舞台上演としてのメディアパフォーマンス」感がひときわ強いものだったが、NHKホールより規模の小さいLINE CUBEの空間に合わせ、舞台装置を含めたRECブース相互の距離も再調整された結果、より親密な心理的効果を与えている。ここでは空間に合わせて観客に与える印象も再構築され、Perfumeが今後志向するライブパフォーマンスがある規模の会場で適切に調整され、巧妙に成立することも同時に証明している。
SCENE:Recordで収録されたものはPerfumeの「声」だったが、オリジナルReframeでの「Butterfly」から置換されたアカペラによる「VOICE」の一節が歌われ、Reframeの分岐が始まる。Perfumeによる「VOICE」のパフォーマンス終盤から、事前に会場内で実施されていたPose Analyticsによって収録した来場者の画像データが「VOICE」の振付を再構築する。お手本となる振付通りに踊った動きもあれば、自由な動き、たまたま振付通りに重なった動き、そうした意図したもの、意図せざるものを機械学習によるフィルターでふるい分け、おそらくは奥行き情報を持たない動画からGAN(敵対的生成ネットワーク)によって姿勢推定を行い、ソースとなる「VOICE」のダンスを「乗り移らせて」踊らせていると思われる。存在しない動きを予測して生成するという点では、2018年紅白「エレクトロ・ワールド」コーチェラ 第二週配信「だいじょばない」で使われた自由視点映像の補完手法と本質的には同じ技術なのかも知れない。これらをマイブリッジの連続写真のように再構成し「Everythingを合わせ」た映像が次のSCENEへの導入として投影されている。
Everybody Dance Now
https://youtu.be/PCBTZh41Ris
Animal Locomotion: Plates #11-20 REMASTERED (1884-1887) by Eadweard Muybridge
https://youtu.be/wlDF1uNE6mA
ライゾマティクスによるGAN-nam style - StyleGAN dance test 01 (failed)
https://youtu.be/wnhN8_qKAd4
続く新たなSCENEでは曲タイトルの読み上げとともに、過去の楽曲の象徴的なポージングを決めていくPerfume。バックスクリーン上には瞬時にキャプチャーされたかのような演出で精細なポリゴン風映像が映し出されるが、至近の開発事例を見ても細部に手が入りすぎている印象もあり、SXSWの「STORY」のような、一部の地と図の逆転を利用した手法の可能性もある(演者であるPerfumeが完全に正確なポージングを再現できるために自由視点映像の接続において事前に作り込まれた映像をアテることが可能だった)。追記:一部情報が正しければポージング自体を解析し、ナレーションとあらかじめ作成されたポリゴン像がローディングされているのかも知れない(姿勢推定)つまりリアルタイムで順番を入れ替えることも可能?
Perfume Live at SXSW | STORY (SXSW-MIX)
https://youtu.be/zZiPIgCtIxg
「FUSION」では、オリジナルである三元中継でのパフォーマンスから、NHKホール>FPツアー>FPワールドツアーと徐々にブラッシュアップしていったヴァーチャルな影絵が、自走式ディスプレイという共演者を得て、更に深化した表現を見せる。Reframeから始まった影絵を媒介する「FUSION」は、オリジナル版であるNHKホールでの上演において、天井高を十分に生かした巨大さで同演出の中でも随一の存在感を誇ったが、続くFPツアーの機構によるものや、ワールドツアーで投入された自走式アミッドスクリーンによる上演が、ある意味コンパクト化し、またある程度はオリジナルの焼き直しであったのに対して、Reframe 2019においては同装置が見えざるダンサーと影絵を映し出すスクリーンとしての二つの役割をこなすことで、結果としてPerfume自身の影を分身として従える形となり、影絵本来の幻惑感に新しい驚きを加えることに成功している(2019年サマーソニックの屋外ステージにおいては固定スクリーンのみでパフォーマンスされていることも念のため追記しておく)。
ここでも目を惹くのはPerfumeと完全に協調したディスプレイの動きだが、ドローンの振り付け軌道などをダンサー(ライゾマティクスの制作においてはイレブンプレイメンバー)が手に持った状態で直接入力する、ロボットティーチング的な手法を同じく採用している可能性もあるだろう。付け加えれば、入力済みの動き(ダンスと言い切っても)を再生する一方で、それを逸脱しない範囲で演者との接触やアクシデントを避ける何らかのセーフ機構が存在するかもしれない。
真鍋大度氏とMIKIKO先生によるドローンカメラの振り付け
NT "Cold Stares" behind the scenes 2
https://youtu.be/tWf9tzr9UmM
Reframe 2019における「edege」はコーチェラでのパフォーマンスでLEDボックスから解き放たれ、水平移動主体かつ、Perfumeのシルエットをさらに強調したステージングへと構成が変わったものがベースとなっているが、よく知られるように曲内で完結したストーリー性を持ち、8分超というPerfumeの楽曲としては最長に属し、Reframe以前にコンセプトの一部を内包していた楽曲ともいえる。ダイナミックVRと同じ手法を用いたシーンが存在するため、観客の視線によっては奥行き感に制限が生まれている。
Dynamic VR Display (Rhizomatiks Research)
https://youtu.be/G7ZQ4KiX1JE
あ~ちゃんとかしゆかの手持ちカメラによって入力された「正式なポーズのっち」の映像が虚像と実像の間を行き交う「のっちを素体としたPerfumeによるPerfume解析」といった趣であるSCENEの正しい意味づけはコンセプトを表すタイトルを待つほかないが(技術的要素はDiscrete Figuresで確立しているもの)今作の特徴でもあるReframeの進行中にReframeそのものを自己言及し再構築するような試みが通底音として徐々に存在感を増し、そこにはPerfumeの再現能力の高さがそのまま異質なテクノロジーのような手触りを残す、ライブツアーに紐づけられた代表曲を様々なカウントで踊るシークエンスも含まれる。
'discrete figures' by RHIZOMATIKS x ELEVENPLAY at GRAY AREA
https://youtu.be/s_S3fomiXO0
「シークレット・シークレット(Remix)」からグリッチ的に接続する「無限未来」でのインタラクティブレーザーで純化され、「Dream Land」を橋渡しにエンドロール後に訪れる「Challenger」の配置は、真に感情由来の力強さを備え、テクノロジー主体に見えたここまでの全道程を俯瞰した地点で観客の感動を呼び起こしている。レーザーについてはほぼ演出面での細かな調整が熟成した結果が大きいかもしれないが、トラッキングデータを元にPerfumeのパフォーマンスに合わせて照射される精密さが要の技術でもあり(オリジナルReframeの時点では)実は「リアルタイムに追尾しているわけではない」点にも注目するべきだろう。ここでも地と図の反転が利用されている。
https://sports.nhk.or.jp/dream/change/tech/perfume/technology/mugenmirai.html
回転を主体とした即興ダンスのようなパートで、Perfumeの手に向かってレーザーが収束する演出は(当日はマーカーが視認できなかったが)Phosphereで採用された手法が用いられているとも考えられるが、使い分けがどのように決定されているか、見かけ上の出力結果が同じでも背後の手法が異なるケースもあり、推測の域をでない。
phosphere at Sonar Planta
https://youtu.be/q2ZWjUkVaaE
Reframeという発想が可能にした、あらゆるPerfumeの表現が文脈によって再構成され、再構成されたものに文脈が宿るこの上演形態は、コンテンツ(content-s)とコンテキスト(context)の入れ子構造を体感させるようでもあり、またPerfumeのアーティストとしての進化のみちすじを自由に遡り、観客とPerfumeとの精神的インタラクションをテクノロジーによって促進するものでもある。

















