In Conversation: Daito Manabe Interviews Machinedrum Ahead Of Ableton Loop Summit In Berlin
訳出元: https://www.huffingtonpost.com/entry/in-conversation-daito-manabe-interviews-machinedrum_us_5a047e71e4b0c7511e1b3a78
今週末、Abeltonループサミットが、ベルリン、かつての東ドイツのレコーディングスタジオFunkhausにて開催される。これはワークショップ、パフォーマンス、ディスカッションを組み合わせた3日間のイベントで、コラボレーションとクリエイティブなアイディアの交換を重視しているものだ。イベントに先立ち、アメリカ出身でベルリンを拠点とするミュージシャン、マシーンドラムとして知られるトラヴィス・スチュワートを、日本人であり、コラボレーション環境での継続的な活動で著名なビジュアルの語り部・真鍋大度がインタビューした。リミックスや、オーディオ・ビジュアルの持つ力について、両者のディープな対話は以下の通り。
僕がはじめに強調したいのは、あなたの大ファンっていうことなんです。たった今チェックしただけで、僕個人のMacBookにあなたの曲が300近く入っていました。熱心なリスナーになったのはシンドローン名義の頃からです。むかしメアク・レコーズ(訳注:トラヴィス・スチュワートが設立に貢献したレーベル。2007年ごろまで存在した)と関わったとき、イベント向けにメアクのアーティストに映像を提供したり、僕自身DJとして出演もしたんですよ。
オウテカやボーズ・オブ・カナダなどに代表されるIDM(intelligent dance music)の黎明期からハマっていたんですが、それらがサンプリング重視で切り刻まれたヒップホップビートにスタイルが変化していくと、副次的にあなたの”Bidnezz”や”Mergerz & Acquisitionz”からのトラックも良くプレイするようになりました。なかでも”Hollis”は好きでしたね。2000年半ばごろだったと思います。今現在だと、ポスト・ジュークやダブステップなスタイルのトラックや、Planet Muレーベルでの仕事も素晴らしくて外せませんね。最近はヴェイパーウェイヴやフューチャーベースのトラックも探していて、ふだんから回すことが多いんです。ニンジャ・チューンへ移籍してからのトラックも同じように好きですね。あなたの素晴らしいメロディーセンスは際立っていて、そういったトラックもかなりプレイしてます。あなたがリリースした”Sacred Frequency”のAbeltonライブセットからはかなり学ばせていただきました。僕は多くのトラックメイカーがこのファイル群から大きな影響を受けていると考えています。
つまるところ、僕はマシーンドラムの熱狂的なファンクラブ会員なんです。最初期のIDMから変遷してサンプル主体のカットアップされたスタイル、ダブステップ、ジューク、フューチャーベース、ヴェイパーウェイヴにいたるまで、常に最良のグルーヴが組み込まれていて、それはある程度はNosaj Thingが僕に言ったことなんですが、「トラヴィスを追いかけていれば、どんなビートがトレンドなのか分かるよ」と。グルーヴを進化させるものはなんだと思いますか?あなたにとってその刺激となるようなものは何でしょう?
マシーンドラム:
本当にありがとう!特にあなたのような、革新的で成功しているアーティストからの賞賛は身に余るというか。僕の仕事へ本当に信じられないほどの自信を与えてくれますね。
進化に限って言えば、それは自然な成り行きかな。僕は常に新しい形の音楽に興味があるんです。
僕がマシーンドラムを始めた当初は、hip-hopの脱構築やサウンドデザインで何か新しい事をやっている ーポリ-リズムや興味深いメロディといったー 多くの偉大なプロデューサーたちを半ば知り始めた頃だったんです。それらは必ずしも僕が作りたいと思うジャンルとは限らなかったんですが、自分の好きなアーティストやプロデューサーたちの、異なった興味ぶかいやり方をひとつにまとめたかったんです。
当時僕が愛したのは、ボーズ・オブ・カナダのノスタルジックなメロディや、DJ PremierやJ Dillaのくぐもったドラムサウンド、Push Button Objects、それとPrefuse 73の脱構築されたhip-hopの美しさ、ポリリズミックな西アフリカ音楽、ハービー・ハンコックのジャズの繊細な感性、Aphex Twinやオウテカといった、サウンドデザインと実験の天才たちでした。僕は自身のファースト・アルバムにできうる範囲でそういった要素を注ぎ込んだんですよ。それ以前からも偉大な音楽とアートのスーパーファンですけどね!
書き下ろしたアルバムそれぞれが、新たに学んだこと、新しい取り組みや実験的要素、哲学、新たに開発した方法を反映しています。僕は常に新旧の音楽を探求していますが、そういった音楽から、ある種のことが自分に残るんです。誰かが新しい方法で楽器を演奏したり、僕が決して思いつかないようなコード進行を聴いたり、それと同じように、ビート以外の要素全てが好きじゃない曲をラジオで聴いたりもするんですけど。そういった要素が僕の音楽のあれこれを作り上げるんです。
僕自身は常にひらめきを受け止められるようにはしています。そのひらめきを拒否するのではなく受け入れ、核となる部分に正直でいられるようにね。それがアイディアを正確に捉えるための秘訣です。たとえば誰かに「ある事に影響を受けすぎてるんじゃないか」って言われるのは気にしていませんね。大抵はインスパイアされたものを再現しようとしても、そのままではなく、僕の世界観に合った新しい形になるんです。
僕が音楽を作る上での目標は、それがひらめきだったり、教育であったり、訓練であったり、精神的なことの一部となるようなもの、です。自分を解き放って、自分自身、毎日でも聴きたいと思うようなものを書こうとしますね。そうでなければ創造することに意味がありません。僕自身にひらめきを与えるほど魅了するものを創りたいと願っていますよ。
多くのリミックス作品にも参加していますよね。どういった曲がリミックスしやすいですか?そもそもリミックスしたいと思わせる要素はなんでしょう。「これは難しすぎて、うまくいきっこないよ」と最初からお手上げになるようなことはないんですか?
ほとんどのインスト曲の場合、トラックのメロディ部分に魅力的だったり、アンセム的要素がないと、リミックスはかなり難しいことを発見しました。
最近だと多くの理由からリミックスはパスしていますね。主に時間がなくて、リミックスの大半が平板になってしまって満足できないか、それらがアーティストやレーベルから拒否されるからなんです。
さもなければ、全てを取り去った時に何らかの強い要素が残らないような曲もパスします。確かにいくつかの楽曲は全ての要素が揃っていれば素晴らしく聴こえもするのですが、パーツごとに聴いたとき、そこに強いものを見つけられなければ、試しても全くの無意味ですから。
思うに、一部の人たちは機材やソフトウェアを手に入れるとその手法を変えますよね。しかしあなたはより限定されたやりかた、Abeltonの組込済プラグイン(訳注:同名企業とその音楽制作ソフトAbleton Liveに最初から含まれるプラグイン)とNative Instrumentsプラグイン(訳注:同名企業による一連の音楽制作用プラグイン)を使用するだけだと聞いたんですが。機材やソフトウェア、音楽を取り巻く全てのテクノロジーに関するあなたの考えは何でしょう?
お話ししたいとすれば、ソフトウェアを含む機材を見つけるのは重要だということですね。今のところ我々は指先一つで、膨大な楽器の中から新しく興味ぶかい音を選ぶ無限の可能性を持っていますが、その世界で迷子になるのは容易いでしょう。新しい機材、プラグイン、シンセサイザーを絶え間なく試しながら、スタジオ環境や作曲法の一貫性を保っているプロデューサーも知っていますが、それは稀なことです。
制限付きで電子音楽を作曲し始めたのは、自分で課したことではないんです。僕の家族は、手にしていたキーボードやギター、お下がりのPC以上のものを与える余裕はなかったので。90年代、フリーソフトやサンプルを探し始めた時には、今ほど簡単にはクラックされたソフトウェアやプラグインは手に入りませんでしたし、何であれ自分で手に入れたフリーなものや、目の前にあったものに依存するしかなかったんです。
僕はとてもラッキーな事に、Tracker(訳注:PC上で動作するフリー・シーケンサーソフトとその再生ファイル)やDemo(訳注:ここでは(後半部分の説明から)解凍することでグラフィック、サウンドを含んだアニメーション・デモ動画を再生するDemo sceneのうち、パッケージング容量の小ささを競う”Intro”のこと?)のオンラインコミュニティの一部に居場所を見つけられました。それは新しい楽曲のサンプルを僕に与えるだけでなく、みんながどんな風に楽曲を作り、新しいやり方を覚えるのか学べたんです。
Trackerコミュニティの美しいところは、人々がいつでもセッションを共有していた事ですね。それがダイヤルアップ接続時代の唯一の方法でしたから。セッションのファイルサイズは、使用するサンプル次第で非常に小さくなりました。一般的にTrackerファイルはmp3よりも小さいので、どちらにせよ元々のセッションを共有する方が便利だったんです。
そこでは常にコンペが行われていて、Trackerファイルやmods、ITs、XMs(訳注:いずれも改造ソフト、拡張メモリ規格など)そのほか何でも、いかに可能な限り小さく保ちながら、何ができるかを競っていました。チップチューンはその完璧な例ですね。手に入る一番クールなプロセッサ集約型プラグインに頼ることなく、みんな1KB未満のサンプルからヤバいブツを作り上げていましたよ!
オーケー、ちょっと横道にそれましたが、僕が言いたいことは、長いこと制限のある電子音楽の制作環境で育った身としては、制限の重要性を理解しているということです。いつも言っていることなんですが、もしSK-1(訳注:1985年に発売されたCASIOの低価格帯サンプリング・キーボード)でイカした曲を作れなければ、百万ドルのスタジオでも無理だよ、って。
パフォーマンス、レコーディング、サンプリング、ウォークマン、インターネット、iPhoneやストリーミング...新しい技術の誕生が音楽の生態を変えたように、我々の視聴方法もまた変化しています。音楽は今後どのような進化を遂げることを望みますか?
言い換えれば、音楽がどこに向かうかについての、あなたの予測に興味があるんです。
個人的には、音楽の新しい形にはより制限がなく、ある種の不確実性のダイナミズムを持っているのではと思うんです。たぶん全く新しいジャンルが出現して、音楽自身の環境や場所に応じて変化するような。それを正確には「音楽」と呼ぶか「アルゴリズム」と呼ぶかはわかりませんが、いずれにせよ新しいオーディオ体験を楽しみにしています。
音楽や技術にせよ、物事がどこに向かうのか予測する事にはいつもトラブルがつきまといますよ。ほとんどの場合、僕の興味は現在利用可能だったり体験できる技術と関わる事にあり、何か新しく発明したり、それを推し進めたりするつもりはないんです。その全ては自然に起こるはずです。音楽や芸術がどのように全体として進化するか、全く心配はしていませんよ。時には人々が、その分野を修めるのではなく、真新しいもの、100パーセント独創的かつ革新的な事に捉われているように感じることはありますが。
そんなわけで、これまで見たことのないようなものを見て、僕は楽しんでいるんです。物事を前進させ、すでに作られたものを作り直さない人々がいることが重要なんです。常に革新の余地はあります。どちらにしても、そういった革新的なものは決して広いレベルでアクセス可能にはなりません。真鍋さんがおっしゃるような環境ベースで変化する音楽ジャンルの例のように、それはクールなコンセプトのように聞こえますが、より大きなレベルでは、人々がそれを深く考え、真剣に聴くとは思えないんです。人々は聴きたいのであって、理解するのは二の次で、それほど驚きたくはないんです。残念な事に、世界の大部分は音楽における大きな飛躍や進歩にうまく対応していません、僕達みたいな音楽オタクとは違ってね。
僕はNosaj Thing、FaltyDL、Squarepusherなどのミュージックビデオを監督したことがあるんですが、この観点から伺いたいのは、あなたのオーディオビジュアル的な取り組みはどうでしょう?この媒体と向き合ったあなたの仕事(そのほかの場面でも)にどんな可能性を見出しますか?
僕は本当にあなたの仕事が大好きなんですよ!既存の枠に囚われないうえに、関係性があり、かつ理解しやすいものを創造している稀有なアーティストの一人ですね。そこには古典的な意味もあります。僕が音楽、アート、ビデオの分野で惹かれがちなのは、時間の経過に耐えうるもので、何かしらキッチュであったりトレンドを回顧したり、もしくはかわいらしいノスタルジックなものではないんです。もちろん、ある時代を反映したアートを作ることも重要ですが、ある時代に「クール」だとされたものに頼らないこともまた大切です。
よく考え抜かれたオーディオ・ビジュアルパフォーマンスはずっと好きですが、最近のパフォーマーたちの壮大なステージ演出や、音楽を身の丈以上に見せようとするやり方は、ちょっとばかり古臭く見えますね。それはフェスへ行き、何百万というライトで飾られた巨大なステージセットを見るのがクールだとされた名残りです。ここに至って、ゴテゴテした飾りや何十万ドルものステージセットを追加することが、必ずしも音楽にとって効果的ではないことが理解していただけると思うのですが。誰もが同じ楽曲や、コピーを繰り返した音楽をまばゆいステージセットで演奏している事実は隠しようもありません。
不幸な事には、そういったフェスなどで稼働する強力なオーディオ・ビジュアル機材を所有するには巨額の費用が必要で、非常に難しいということです。自分たちの”オーディオ/ビジュアル”ショーに巨費を注ぎ込んでいる人々でさえ、基本的にはステージ上の電気サーカス以上の興味深いことは何もやっていません。これらの誇大アーティストも、うまくいけばあなたのようなアーティストと組んで仕事を始め、本当に興味深く、大きなスケールでインスピレーションを与えることができるかも知れませんが。
日常的にどんな音楽をよく聴きますか?(家でのチルタイムや、眠ろうとしている時など)Tstewart名義の作品群は、ギターとアンビエントサウンドで構成されたチルアウトトラックを特徴として、本当に広大な聴覚的風景を感じます。ひとことで言えば、あなたの日常的な音楽体験に興味があるんです。
僕の日常の音楽ルーティンに決まったことは何もないんです。どんなものでも気分次第ですね。ある日はリビングルームで妻と一緒にダブやカントリーミュージックをレコードで聴きたいと思うかも知れませんし、別の日は新しい音楽を求めてSpotifyやSoundcloudを探し回るかも知れません。最近、若かった頃に聴いた音楽全てのプレイリストを作ったんですよ、自分の音楽を作るために僕をインスパイアした全ての音楽のね。時には妻が望むものだけ聴くことだってあります。そこには本当に決まりはないんです。またある時は、例えば新しいアルバムを作曲している時など、可能な限りほかの音を聴かないようにしています。
去年、とうとうSpotifyという列車に飛び乗ったんですが、そこでは新しい音楽を発見するだけではなく、僕が見逃していたかも知れない古い音楽を発見することもできます。
もし特注の機材やプラグイン、シーケンサーを注文できるとしたら、どんなリクエストがありますか?(まだ存在しないもので)もしくは自分の体をバイオエンジニアリングできるとしたら、どんな機能を追加したいですか?
ケーブルを使いたくないんです。僕をとにかく悩ませるので。完全ワイヤレスベースのスタジオで働ければと望んでいますよ。もしくは、最低限の太陽光で動作する完全ポータブルスタジオなどもいいですね。それ以外だと、全て完成しているか、作られている最中、もしくはすでに考案されているようなので。
もし眠ったり食べたりする事にあまり依存しないように、自分自身をバイオエンジニアリングできたらクールでしょうね。僕は睡眠や食事を完全に取り除きたいとは思ってません、もちろん両方大好きですからね!たくさんのことが可能だからといって、迷惑になることだってありますよ!もちろん、思考を即座に音楽に変えることができたとしたら素晴らしいでしょうが、そのどこに楽しみがあるというのでしょう?