Nossa Chape! 『わがチーム、墜落事故からの復活』
7月6日の一般公開に先立ちまして、『わがチーム、墜落事故からの復活』を特別に拝見させていただきました。お声をかけてくださった配給会社さん、つないでくださったヨコハマ・フットボール映画祭さんにまずお礼を申し上げたいと思います。サッカーであればまだしも、映画の評論は完全に専門外の事でありおこがましい限りですが、僭越ながらご紹介させていただきたいと思います。
この映画は2016年11月28日に起きたフットボール史上最大の悲劇から復活したブラジルの中堅クラブ、シャペコエンセの姿をクラブ、選手、選手の家族、地元シャペコの人々に密着して描いたドキュメンタリーです。全てノンフィクション、作られた部分が全くないだけに現実の厳しさに胸を打たれます。この苦しみを味わった人たちが現実に存在しているのだと言う事をあらためて直視させられました。
事故直後に全てを失ったクラブが体制を整え、選手を獲得し、国内外から色々な支援を受けて復活して行った事は拙ブログでも伝えてきましたが、この映画ではその裏側にありながらあまり表面に出てくる事のなかった関係者の葛藤や怒りなども包み隠さず描かれています。事故の翌シーズン、2017シーズンにシャペコエンセは過去最高となるブラジル全国選手権8位と完全復活を果たしました。しかしながら、その裏側にはチームの一体感の欠如、資金不足、事故犠牲者の遺族との交渉の難航など、あまり描かれる事のなかった様々な問題があったことをこの映画は飾らずに描いています。
特にほとんどの選手、スタッフを失い、寄せ集めで作られたチームの一体感の欠如に対して、かつてからチームにいる選手や亡くなった選手の家族達が警鐘を鳴らすシーンには考えさせられるものがありました。シャペコエンセは以前からファミリーのような一体感を持っているのが強みのクラブだったのに、事故後の体制ではそれが失われてしまった。結局それが遠因となってヴァグネル・マンシーニ監督がシーズン途中に解任されたのだと初めて理解しました。サッカークラブに関わらず、どの組織もそうだと思いますが、自分達のアイデンティティが何なのか、それが自分達にとって納得できるものなのかと言うことは重要な事なのだと思います。シャペコエンセにとってそのアイデンティは”ファミリーのような一体感”であり、もう一度その旗のもとに全員が団結できたことが、シーズン中盤からの巻き返しによる奇跡の完全復活に繋がったのだと思います。
シャペコエンセの躍進そのものはハッピーかも知れませんが、フットボールやそこに関わる人々の人生はいつまでも続いていきます。ハッピーエンドもバッドエンドもない。ただ毎日を進んで行く、と言う事が重要なのだとこの映画を見て感じさせられました。フットボールファンの方はもちろん、そうでない方にも得るもののある映画だと思います。
一人でも多くのサッカーファンにご覧いただければ嬉しいです。